●三浦泰年監督(北九州)
「今日はお忙しい中、退任会見に数多くのメディアの方に来ていただき本当に感謝しています。今日だけでなく、各試合に向けての取材であったり、または選手取材、私への囲み取材であったり、本当に2年間、メディアの方には感謝しています。
昨日朝10時に辞任届というかたちで、今シーズンをもってギラヴァンツ北九州の監督を退任させていただきますということをクラブのほうに伝えました。その内容を温かく理解していただき、クラブ関係者の方にも感謝しています。
こういう退任会見というのを、2年前に就任したときから用意したわけではないですから、何を述べればいいのかは少し難しいのかなとは思います。ただ2年間、誠実に純粋に選手と向き合って日々トレーニングをし、努力をし、1つでも多くの勝利と1人でも多くの笑顔を獲得できるようにやってきました。その成果がこの2年間の成績だったと思っております。
退任の理由につきましては、今回のライセンス制度の導入でギラヴァンツ北九州がJ2ライセンスしか獲得しかできないということで、私の監督としてのモチベーションから退任することを決意しました。数多くの人たちに出会い、そういう人たちが支えてくれたにもかかわらず、こういうタイミングで新しいトライをすることをみなさんに認めてもらわなければならなくなった状況は、就任した当時には予知していたものではありません。ただ現実的にこういうことが起きた中で、私がしっかりした判断をしなければけない。そのしっかりした判断というのが、まずはギラヴァンツ北九州を辞任するという決断でした。本当に2年間、温かく見守っていただき感謝しています」
Q:退任を決断したのはいつだったのか?
「ライセンス制度が導入されたときに、このまま進んでしまえば、我々ギラヴァンツ北九州はJ1に、または今シーズンのレギュレーションで言えばプレーオフに出場できないのは、規約としてはわかっていたものの、現実に突きつけられた日は非常に苦しい思いでした。そういう中で今後どういうふうに判断していけばいいのかしっかり考えなければいけないのは感じていました。でも残り試合があるということ、私もプロであり、選手もプロである限り、最後の試合まで全うしなければいけないということ。それも勝利を目指さなければいけないということ。そういう中で悩みがなかったというのは嘘になりますが、悩みながらしっかりした判断をするのは11月11日(最終節)以降にしようと考えてやってきました」
Q:この2年間、どのように選手を育てようとしていたのか?
「2年間、いい仕事ができたと思います。思い出を聞かれればやはり1日1日のトレーニングに手を抜かず、純粋に誠実に向き合ってやれたというのが彼らの成長に繋がったと思いますし、我々が残すことができたポイントだと思います。もちろん選手も私もこのポイントで満足しているわけではありません。ただギラヴァンツ北九州というプロとして3年しか経っていないクラブが成し遂げたというものでは非常にいい成果を挙げたと思います」
Q:監督としてのファーストキャリアを北九州市で迎えたが、北九州市の何が監督の2年を支えてきたか?
「本当に温かい方が多く、数多くの人と出会い、話をすることは私の支えになったなと思っています。やらなければいけないという気持ちは非常に強かったです。1勝しかできなかった、そしてギラヴァンツ北九州というのは1勝のクラブという周りの人たちの考え方をどうしても変えたかった。それが日に日に、みなさんが温かく我々を見守るように変わってきてくれました。最初は本当に失礼な言い方をする方も正直いましたが、今では本当に誰もが勝ったときも負けたときも、おじいちゃんおばあちゃんが拳を作って、『次頑張ってね』と言ってくれます。いい人たちがいっぱいいる、未来は楽しいです。ポテンシャルも非常に高い街であり、クラブだと思いますし、そういう人たちも多く存在していると思います。私のできたことがどのくらいのものなのかは私が決めるべきでなく、周りの人たちに評価していただき、お互いが新しいトライ、新しいチャレンジを前向きにしていく必要があるんじゃないかなと考えています」
Q:ギラヴァンツ北九州には、これからどのようなクラブであってほしいか?
「辞任をするわけですから、去る者がこのチームの向かうところを言って去ることがいいのかどうかはまずは気になる部分ではあります。そういう中で、先ほど言いましたが誠実に前に進んでいってほしいなと考えております。本気でやらなければ、1勝というのは本当に取るのが難しいものだと思います。まだまだこの街の人たちは、誰かがやってくれるという気持ちを持った人たちが多くいると思います。来場者数なども、なかなか伸びませんでした。そういうことを考えると、全ての人たちが誠実に前を向いて、本気でこのクラブを大きくしていくことを考えて、これから、まだ3歳です。3歳の子どもが大きくなることを考えると、ドキドキしてきますよね。未来、どういうふうになるんだって。みんながこの3歳のギラヴァンツ北九州を大人に成長させていってほしいなと思います」
Q:三浦監督にとってギラヴァンツ北九州はもう一度戻ってきたいクラブか? 北九州市はもう一度戻ってきたい街か?
「この街は本当に住みやすく、温かい人が多く、もちろんまたこの街に戻ってきたいと思います。辞任会見の席でいい辞め方というのはないなと思っておりますが、今後どういう監督になっていくか、またギラヴァンツ北九州にまた戻ってきてほしいと言われるような監督に成長しているか、または成長していくために、ここから新しいところに挑戦していくと。僕にファーストキャリアを与えてくれたクラブはこの北九州なわけですから、本当に感謝していますし、私のキャリアのスタートとしては本当にすばらしい2年間でした」
Q:北九州での経験を踏まえて、どういう指導者でありたいという個人の目標があるか?
「性格上、こういう席で大きなことを言うことはあまり好きではないですし、大きな風呂敷を広げるのも好きではないですが、しっかりしたビジョンとしっかりしたモチベーション、いま私が持っている考え方がしっかり通用する環境で指揮を執りたい。それは常日頃、または今後何歳になっても持ち続けているものだと思います。そういう中でみなさまにわかりやすく言えば、ACLをしっかり見据えて強化ができ、そこを目指していけるチーム、クラブというのが当面目指すべきところなんじゃないかなと思います。日本サッカー界を考えれば、日本代表監督とは言わないですが、日本を代表する監督に自分自身、成長していかなければいけない。監督人生は長くて20年、元気であれば25〜6年できたとしても、もう2年、20年の10分の1が経ちました。時間というものがそんなに多く残っているわけではありません。だからといって焦るわけではないですが、監督人生をしっかり全うするために、この決断が間違っていないとなるためにも、しっかりした努力、精進を続けていかなければならないなと思っています」
Q:クラブライセンス制度には現場のマネジメントを超えた問題、例えば競技場の問題があるが、この制度について意見を聞かせてほしい。
「たらればになりますが、もしクラブライセンス制度が1年遅れていれば、3年目を迎えた可能性があったと思います。ライセンス制度について申すのは立場が違うとは思いますが、1年目、2年目、いい速度でチームを構築することができました。考えれば3年目はチームをより大きくするための集大成、大事な3年目だったのかもしれません。ただやはりチームを作っていく上で、J1またはプレーオフに出場できないとうことが、どれだけ指揮を執る、プレーをする選手、監督にどれだけ大きな痛手か。そこに目標があっても、届きそうで届かない。そこに行き着くことが本当に難しい2年間でした。今シーズンも6位まで勝点で7ポイント離れていました。昨年も最終節を大分に引き分けたことで8位にダウン。そこで勝てば6位でした。昇格というのが目標にありながらも、そこまでしか進めませんでした。制度があることで、モチベーションを失っても戦う、戦わせることの難しさを痛感しています。制度については世界でもライセンス制度を導入した中でしっかりした経営としっかりした設備、環境を整えていくことがプロクラブだと思いますので、我々であれば努力精進していくことは大事になってくるんじゃないかなと思います。我々現場では変えられない物理的な問題だったと思います」
Q:契約途中での退任について、ペナルティーは課せられないということだが、その点については?
「社長にもクラブにも感謝しています。育てながら勝利するという難しい1つの目標、そしてクラブの基盤作り、それらを5年計画でを見据えた中での3年間だったと思います。当時はまだJFLへの降格はなかったですが、降格圏内から脱出するところから中堅へというのが目標でしたから2年間である意味、成し遂げることはできました。そういう中で導入されたライセンス制度であったわけですから、契約期間を全うできなかったことについてはお詫びしなければならないのかもしれません。理解していただいた社長、クラブには感謝しています」
Q:退任理由はライセンス制度だけだったのか?
「基本的にはこういう制度ができなければ…、ほかに何の理由があるのかと思っております」
Q:一番誇りに思えることは何か?
「ともに戦った選手です。どんなに素晴らしいフロントスタッフがいても、監督がいても、ボールは蹴れません。ボールを蹴って走ったのは選手です。私が誇りに思えるのは選手だけです」
Q:11月末までトレーニングは続けていくが、この点についてどういう思いがあるのか?
「私の仕事はシーズンを戦う試合だけでなく、しっかりしたオフを過ごせるために身体のケアをする。そういうトレーニングは、こういうプレーオフという制度になって早くシーズンが終わる可能性になったときに感じていました。そういう意味では12月からをオフと考えたときに、11月30日まで彼らのコンディションをマネジメントするのが私の仕事かなというのが1つ。それと監督兼強化責任者という中で、選手の評価、今シーズンの彼らの評価を社長をうまく引き継ぎながら去る時間というものも必要であると思っています。あくまでも今シーズンは11月30日まで。12月3日にJリーグアウォーズがありますから、ここまでが仕事かなと思っています。ただ、いち早く新体制を作らなければいけないわけですから、それは昨日、社長と確認した中で、そういうふうにしてくださいということなので30日までやろうと思っております」
●横手敏夫社長
「2012年のJ2シーズンも先日11月11日に終了しました。シーズンを通してご支援いただきまして、ありがとうございました。私のほうから今回の三浦監督の退任にあたってのいろいろな気持ちや監督へのお礼を述べさせていただきます。
三浦監督はこの2年間、ギラヴァンツ北九州のチームの強化に全身全霊、心血を注いでくれました。大変感謝しています。そういう三浦監督は、ギラヴァンツにとって大功労者だと私は思っています。三浦監督をギラヴァンツが手放すということにつきまして、ファン、サポーター、スポンサーの皆様、そのほかギラヴァンツを愛する多くの関係者の方々に大変申し訳ないという気持ちでいっぱいです。ある意味では、社長として責任も感じているところです。しかし、決まったことはどうしようもないので、三浦監督に感謝しつつ、将来を祝福しつつ、北九州から送り出したいと思っています。
私が申すまでもなく、三浦監督は2年前、J2初年度1勝しかできない最下位というどん底のチーム成績の北九州に来てくれ、翌年は8位という大飛躍を遂げる成績を挙げてくれました。チーム成績だけでなく、三浦監督の目指す、私流に言わせますと攻撃的なポゼッションサッカー、ボールを大事にパスを繋ぎ、敵陣を目指して攻撃的にアグレッシブに戦っていくプレースタイルはギラヴァンツ北九州の観客を魅了しました。そして我々が三浦監督に託した育てながら勝つ、我々は地方の弱小クラブですから潤沢な資金がございません。実績のある選手を持ってくるわけにはいきません。若手を中心に原石を磨きながら戦力化していく、育てながら勝つという我々の要請に見事に応えてくれました。ある意味では我々の期待以上の成績を挙げてくれました。本当に感謝しています。
それ以外にも商店街や市場で監督自らポスターを張って回るとか、シーズン中の精神的に悩ましいときにも、財界の講演会で講師を務めてもらうとか、本当にいろんな意味でチームの監督ということだけではなく、ギラヴァンツ北九州の広告塔、営業マン、広報マンとして頑張っていただいた。ギラヴァンツ北九州の集客、あるいはファン・サポーターの拡大、スポンサーの拡大に大きな尽力をしてもらったと思っています。
監督をこれ以上褒めると重たいでしょうからこのくらいにしておきますが、私は思います、三浦監督はギラヴァンツ北九州の器に収まる監督ではありません。これからもJリーグのもっと高いところで頑張ってもらい、Jリーグ、日本サッカー界の宝となるように頑張ってもらいたいと思います。その力があると思っています。そういうことで、ギラヴァンツ北九州もそうですが、北九州市民、ファン・サポーター、スポンサーの皆様、みんなで三浦監督に感謝しながら祝福して送り出したいと思っています」
Q:監督の意向を聞いたときの率直な気持ちは?
「残念、これはクラブとして。申し訳ない、これは先ほども言いましたが、チームの選手に、ファン・サポーターに申し訳ない。スポンサーの皆様に申し訳ない。マスコミの皆様にも申し訳ない。そのほかギラヴァンツを愛する人たち、三浦ファンに申し訳ない。今回の退任に至るまで、もちろん来季も三浦監督に続投してほしいということで、のべ4回交渉しましたし、その中で三浦監督の信念も十分にわかりました。本当に彼は誠実に悩みながら重大な決断をしたわけですから、それに対して何ら恨みもないですし、感謝と祝福でいっぱいです。
将来、『日本代表の三浦監督は、監督のファーストキャリアを今J1でも上位のギラヴァンツの監督からスタートしたんだよ』と、そういうことに向かって三浦監督も頑張っていくでしょうし、ギラヴァンツ北九州も頑張っていかなければいけません。三浦監督を逃したギラヴァンツというクラブ、北九州という都市は反省しなければならないなと思っていいます」
Q:この2年を無にしないためにも、次にどういう人材に来てほしいか?
「一言で言えば、三浦監督みたいな監督です。先ほども言いましたが、北九州という都市には三浦監督が植え付けてくれたプレースタイルが合っていると思います。アグレッシブな攻撃的なプレースタイルで、最後まで諦めない。よく九州人は諦めやすいと言いますが、北九州は諦めない。そしてきれいなサッカー。そういうサッカーをしてくれる人。もっと言いますと、チームだけじゃなくて、クラブ全体を考えてくれる人。ベテランも中堅も若手も選手をしっかりと育成してくれる人、目先の勝利に惑わされず、しっかりしたチームビジョンの下、いいサッカースタイルを築いてくれる人。そして早く北九州に同化して、我々と一緒に北九州を愛してくれる人。そうそう三浦監督というような監督は少ないと思いますが、そういう人を人選したいと思います。
もう1つ付け加えますと、選手、ファン・サポーター、スポンサー、そのほかギラヴァンツを支持している方々が、がっかりしないような監督。三浦監督の後にこんな監督が来たのかと、そういう監督は避けたいと思います。
そう言いながらも条件は付けます。三浦監督にオファーを出したときも同じ話をしましたが、ギラヴァンツ北九州の経営方針です。2つあります。1つは地域密着型のクラブ運営をしていきます。市民クラブですから、百万市民の支援がないとクラブは経営できません。地域密着型の運営をしていきます。2つ目は身の丈経営です。強くなるにはお金をかけたほうがいいですが、お金はすぐには集まりません。赤字を出すとクラブライセンス制度で除外されます。収入の範囲内でチームを作っていかなければいけません。そういう身の丈経営を理解してくれる人。三浦監督は我々の示したバジェット(予算)の中でしてくれました。それに対して理解してくれる、それをしっかり実践してくれる。まとめて言いますと、三浦監督みたいな監督です」
Q:退任理由にもなったクラブライセンス制度について、どう思っているか?
「サッカー界で事業しているクラブの社長として申せば、長い目で見てクラブライセンス制度は必要だと思っています。そしてJ2であればJ2のクラブを運営できるクラブが生き残る。J1はJ1のクラブが残る。それが世界の流れでもありますので、とやかく言うことはなく、基本的には賛成です。
当面のギラヴァンツ北九州に置き換えますと、監督退任の理由の1つになりました。これについても、Jリーグ発展のために決めたことですからとやかく言うことではなくて、ギラヴァンツ北九州が乗り越えるべきことだと思います。クラブだけでは乗り越えられませんので、市民の理解、盛り上がりが必要だと思います。そのためには来年は例えば前半で6位以内、観客も前半で1試合平均5000人を集めようじゃないかという実績を市民にお示しして、市民の賛同を得られれば、スタジアムが1年でも半年でも早くできるかもしれない。あるいはその他いろいろな手だてが出てくるかもしれない。そういうことであります」
Q:3年契約の途中での退任について、ペナルティーのようなものは発生するのか?
「ペナルティは発生しません。そういう契約書に最初からなっています。三浦監督を見込んで3年でJ2で勝ち残る、下のJFLに落ちないチーム作りを付託したわけであり、そういうことは2年前に毛頭思わなかった。三浦監督を信じて立派なチームになると思っていましたし、3年の目標を2年で達成したので何のペナルティーがありますか。我々の期待した目標は2年間で達成したわけで、十分に成果を挙げています。来年もいて、もっと強くしてほしいという希望はもちろんありますが、三浦監督に対してペナルティーというのは毛頭考えていません」
Q:監督の交代に際して選手の編成についてはどうしていくのか?
「三浦監督には今シーズン、監督兼強化部長としてチームの全権を担っていただきました。それをベースにして来季は編成していきます。昨日、退任届を受理しましたので、今日付で原チーム統括部長を強化部長兼務として、それに高橋という強化担当がいますので、この2人を中心にやっていきます。その中には次の監督の参考意見も聞かなければいけませんが、基本的には今季のチームで全権を持ってやった三浦監督の意見をベースにいきたいと思います」
以上
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