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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第24節 東京V vs 鳥取】レポート:杉本健勇の東京Vラストマッチ。最初から最後まで、やっぱり“モッてる男”だった。(12.07.16)

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「あ〜りがと、ケンユウ!!」五輪壮行セレモニー、そして挨拶が終わり、サポーターが“東京ヴェルディの杉本健勇”へ最後の最後に贈った大コールが、背番号41が東京Vにとっていかに大きなものをもたらしたかを象徴していた。18試合5ゴール、2アシストの成績。2000年シドニー大会以来の東京Vからの五輪代表選手選出。そして何よりも、契約満了決定にチームメイトやサポーターから無念の涙を流してもらえるほどの、誰からも好かれるキャラクター。3月28日の加入から約3ヶ月半で、杉本健は名実ともに東京Vにとってかけがえのない存在となっていたと言えよう。
そして、緑の戦闘服を着て戦うラストマッチ。またしても主役は、見事に輝いて魅せた。

前節の松本山雅戦、あまりにも不甲斐ない3失点敗戦を喫した東京Vは、そのオフ明けに選手ミーティングを行って結束を固め、今節を迎えていた。まして、杉本健の五輪出発前最後のゲームだっただけに「気持ち良く送り出してあげたい」(飯尾一慶)。勝利への意欲はみな、いつも以上に高かった。当然、杉本健本人も、「前節、あんな試合をしてしまって申し訳なかった。一旦五輪のことは忘れて、東京Vの選手としての役割をしっかりと果たしたい」とリーグ戦へ心を集中することを誓い、試合直前にはチームメイトたちに「自分が点を取らなくても、とにかく勝って行きたい」と、意気込みを語ったという。この言葉に、「アイツは『自分は取らなくても』って言ってたけど、みんなアイツに点取らせたかった」選手たちはさらに発奮したと森勇介は話す。前述の選手ミーティングのあと、深津康太は「こういう時だからこそ、チームワークが一番大事だということが再確認できた」と語っていた。結果論だが、この試合に限っては、その“勝利のために一番大事”と位置付けたチームワークという点で、「健勇のために」の思いで1つにまとまった東京Vが上回っていたことも、ひとつの勝因だったと言えるのではないだろうか。

とはいえ、「内容は決して良くはなかった」(杉本健)。特に前半は、「高い位置から食らいついていこうという、プラン通りの戦い方ができていた」(鶴見聡貴)という鳥取の積極的な守備に苦戦し、なかなかボールをつないで最後まで崩しきることができずにいた。ただ、ボールを取ったあと、攻撃にうつったところでの鳥取のミスにも助けられたこともあり、決定的なピンチを迎えることもあまりなかった。「前半の悪い時間帯を無失点で乗り切れたのが大きかった。(同じような状況で失点した)前節の教訓が生きた」と、前半をベンチで見守った中後雅喜は、この日、約1年2ヶ月ぶりの復帰を果たしたGK土肥洋一を中心とした守備の粘りを高く評価する。逆に、鳥取としては、「バイタルには行きますけど、全体的にシュートへの意識というのが低くて、得点の匂いがする形というのが作れなかった」(吉澤監督)、「せっかくボールを奪って相手のイヤがるところに侵入しても、その先に積極的にシュートを打っていったり、クロスを上げたり、サイドをさらにえぐってもっと深い位置まで攻め込んだり、とにかくシュートまでの回数を増やしていくことをしないと点はなかなか入らない」(美尾敦)、という部分が、今後の大きな課題、そして、浮上の鍵を握る部分となりそうだ。

「健勇にゴールを!」そんな東京V全員の思いが結実したのは、後半21分。後半はじめから中後が入り、ゲームは明らかに東京Vペースで進んでいた中、センターバックの深津がドリブルで突破し、右サイドを駆け上がっていた森へ見事なスルーパスを通す。これがマイナスのグラウンダーで折り返されてきたところを、“主役”が右足で流し込み、試合を決めた。
胸の東京ヴェルディのエンブレムを引き寄せ、口づけしながら、迷わずサポーターの元へ。思い起こせば第6節、町田での東京Vデビュー戦でも、杉本健は決勝ゴールを決め、この日と同じように一目散に東京Vサポーターの待つゴール裏へと走っていった。あの日から約3ヶ月半。「まず、ヴェルディの勝利に貢献したかった」生粋の大阪っ子として最初にそう語った杉本健の思いは、「今年の最後までヴェルディのJ1昇格の力になりたかった」と、東京への愛着とともにさらに強く、熱いものとなっていた。「もっとずっと長くここにいたような感じ。五輪代表の夢が叶えられたのも、ヴェルディに来たからだと思っています。ヴェルディには心から感謝しています」。だが、一方で、「夢を叶えるために快く送り出してくれたC大阪にも感謝している。そのC大阪が今、順位的に厳しい状況にあるので、そのチームに貢献したいという気持ちもある」。生まれ育ったチームの力になりたいとの思いもまた、高めてもいる。
その思いを、「性格がとにかく良いからみんなに可愛がられていた。いなくなっちゃうのは残念だけど、C大阪でめちゃめちゃ活躍してくれればOK!」(森)、「人間的にもイイ奴だし、このままどんどん成長し続けて欲しい。ロンドンでも点決めて、C大阪で力出して、今後の日本を背負っていってほしいよね」(土肥)など、チームメイトも心から応援している。さらに川勝良一監督も「本当に素直で良いヤツ。こういうゲームで決めたり、この間も(ニュージーランド戦)決めたりするのは、偶然ではない。最後大きい体でも隠れて出るとか、大きい体フルに使っているのにプレーの質を落とさないとか、両面できる選手だと思うので、それを海外で勝負して、国際舞台で本当に結果を出していって、もっと大きな選手になってほしい」と評価を述べた上で、「ウチが大きいローンを組んで買えれば一番良いですけどね(笑)」と、最大級の賛辞を贈っている。

杉本健の一撃で勝利した東京Vは、2位へと浮上した。「本当はダントツで突っ走りたいけど、現状を考えたら、こういう日替わり首位の状況が続く中での戦いも覚悟しなければいけないと思う。だからこそ、1つ1つしっかりと、特に今日みたいな難しい試合をしっかりと勝ちきることが大事」だと、中後。短期間だったが、杉本健が東京Vに在籍し、チームにもたらしてくれたものの価値をより一層高めるためにも、必ずやJ1昇格を成し遂げたいと、東京Vを思う全ての人が改めて願った一日だったのではないだろうか。

前節の松本山雅サポーターに続き、今節は鳥取サポーターからも杉本健への五輪代表エールが届けられた。壮行会中、鳥取のゴール裏には、『ロンドンで輝け 杉本健勇 J2の星』の横断幕が掲げられた。それに気付くと、鳥取サポーターの前にも足を運び、深々と頭を下げ、謝意を表現した背番号41の姿は実に印象的だった。本大会には、J1チーム所属選手としての出場となるが、「選出時は唯一のJ2所属選手」ということで、J2チームサポーターからの絶大な期待を一身に受け、勇気へと変えているはず。
ゴールで始まり、ゴールで終わる。川勝ヴェルディ史上最高の“助っ人”19歳は、最高の形でロンドンを経由し、大阪へと戻っていった。

以上

2012.07.16 Reported by 上岡真里江
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