前節から先発6人を入れ替え、愛媛はホームでの水戸戦に臨んだ。理由は出場停止や怪我など様々。その中で「最もフレッシュな選手を使うことを考えた」とバルバリッチ監督は理由を話したが、チャンスをつかんだ選手たちの気迫はピッチから伝わってきた。例えば試合開始直後には高い位置でボールを奪うと、FW久場光はすかさず縦へのスルーパスを選択。ツートップのパートナー、石井謙伍の動き出しを逃さずゴールへ向かう意識を見せた。このパスが少し後ろにズレたことでシュートにはつながらなかったが、愛媛は奪われたボールに対しても次々と高い位置からプレッシャーをかけ続けて試合のリズムをつかみにいった。

対する水戸も最終ラインからつなぎながら、愛媛の隙をうかがう。前半26分には奪ったボールをすかさず前線に送ると、裏に抜け出した橋本晃司が飛び出した愛媛のGK秋元陽太の背後を突くループシュート。これはアライールがかろうじてヘディングで難を逃れたが、水戸も時間の経過とともに持ち味を発揮していった。

後半に入ると、さらに両者はゴールへの形を作っていく。先に動いたのは愛媛。後半6分にバルバリッチ監督は早々と大山俊輔を投入すると、ツートップから久場のワントップに変更。すると13分、左サイドに張った前野貴徳がドリブルから折り返し、高杉亮太のシュートに結びつける。ゴールは奪えなかったが、22分には高い位置で奪った大山から東浩史がフィニッシュに持ち込むなど、前半から続けていたスピードのある攻撃に厚みが加わっていった。一方の水戸もサイドチェンジからシンプルに裏を狙うと、小澤司が抜け出してシュートを放つなど互いに譲らない展開が続いた。

そして、ついに均衡が破れたのが後半37分。水戸のコーナーキックから愛媛がカウンターを仕掛ける。園田拓也のスルーパスが東に通ると、ニアサイドの石井にラストパス。石井が相手よりも一歩先に飛び込みながら、泥臭く先制点を奪った。ただ、ここからは両チームの指揮官の采配が明暗を分けた。守りに入るべく、バルバリッチ監督がアンカーに渡邊一仁を投入したのに対して、「立体的に攻めなければ難しい」と、柱谷哲二監督はすかさず三島康平と坂井洋平を同時に投入。パワープレーで同点ゴールを目指すと、この狙いが的中する。アディショナルタイムにゴール前の混戦から、こちらも途中出場の岡本達也が同点弾を叩き込んだ。

「先週とは逆にドローに持ち込めたことは選手たちを評価したい」と柱谷監督が振り返ったが、水戸はアディショナルタイムに追いつかれた前節の湘南戦から、今度は逆の形で追いついた。負ければ愛媛と順位が入れ替わる状況を逃れ、勝点1をもぎ取った点は水戸がこの一戦で手にした収穫。ただ、その一方でパワープレーに入る前の攻撃では工夫が足りず迫力を欠き、愛媛の守備を崩しきれなかった。

追いつかれた愛媛にとっても、チャンスを得た選手が奮起して連敗を止めた点では収穫がない試合ではなかった。しかし、試合終盤の試合運びは痛恨。奪ったボールを簡単に相手に渡してしまい、時間を使うことができなかった。いずれにしても、忘れてはならないのは両者ともに勝点2を失ったということ。今節を終えた時点で両チームが目指す6位のチームは大分になったが、そこまでの勝点差は12と広がってしまった。この試合で失った勝点2をいかに早く取り戻せるか。勝点3をつかむための課題が両者に残された一戦だった。

以上

2012.07.16 Reported by 近藤義博