今日の試合速報

ACLE
ACLE

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第18節 大宮 vs 神戸】レポート:難しい攻守のバランス。神戸と攻め合った大宮、清水・渡部のリーグ戦ダブル初ゴールも2失点を喫し痛いドロー。(12.07.15)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
攻撃と守備のバランスに、大宮は苦しんでいる。ベルデニック新監督は就任以来、まず守備の立て直しから始めた。ボールを失うと素早く自陣に戻り4−4−2のコンパクトな3ラインを形成し、ボールを奪っても人数をかけたつなぎの過程でのミスを嫌い、素早く前にボールを運んで少ない人数で攻めることを要求した。結果、守備はリーグ戦ここ3試合で1失点に抑えることに成功したが、同時に3試合で1得点と、その裏返しとして攻撃力も落ちた。前節・鹿島戦では前半30分まで攻撃的に押し込みながら、カウンターでピンチを迎えたことで後半は自ら守勢に回り、守りきれず試合を落とした。攻撃と守備の理想とするバランスは、いまだ見えない。
対照的に神戸は、持ち味のアグレッシブなハイプレス+ショートカウンターに、西野 朗監督が得意とするポゼッションの融合が進み、14節以降リーグ戦で3連勝。前節の仙台戦も敗れたとはいえ内容・シュート数で圧倒した。ポゼッションサッカーを標榜する監督の理想は当然、「攻撃こそ最大の防御」である。となれば攻める神戸、守る大宮の構図でジリジリしたゲームになると思われたが、実際には大宮も攻撃的に出たことで動きのあるゲームとなった。気温29.9度、湿度68%の厳しい条件の中、互いに人数をかけて攻め合った結果2得点し、また必然的に薄くなった守備を突かれて互いに2失点し、勝点1ずつを分け合った。

前節・鹿島戦の後半で守備的になりすぎたことは、「前がかりになりすぎるなとは言ったが、絶対に前に行くなと言ったつもりはない」と、ベルデニック監督にとっても本意ではなかった。「その理解に私と選手とで相違があった。状況によっては前に行かないとゲームにならない」と、日本人の生真面目さに驚いた節もある。この日はホームであること、またその反省から「前から攻撃的に行けと」(青木拓矢)指示された選手たちは、これも忠実に実行したことで、試合は序盤からオープンな撃ち合いの様相を呈した。下平 匠は「前から行って攻めるチャンスはできたが、そのぶん守備でボランチの周りにスペースができてしまい、そこに相手に入られた」と語ったが、神戸も似た状況。互いに守りは薄く、陣形は間延びして危険なスペースはどちらにもあった。
大宮は、神戸のハイプレスに対応して、攻撃は基本的にロングボール主体。カルリーニョスの左足から放たれる高精度のロングボールが神戸の最終ラインの背後をピンポイントで突き、前半だけで3度のビッグチャンスを演出したが、東 慶悟とチョ ヨンチョルの二人がいずれもそのチャンスを生かせなかった。この日リーグ初先発となる高卒2年目の清水慎太郎もハイボールに強さを見せ、セカンドボールを拾ってサイドハーフとボランチ、サイドバックもからんで厚い攻めを展開した。
対する神戸も、ロングボールに都倉 賢が高さで競り勝ち、またバイタルで受けて小川慶治朗とのコンビネーションから大宮ゴールを脅かす。都倉と小川の2人の関係だけで再三のチャンスを演出した神戸は、遅攻に入ってもポゼッションから野沢拓也と相馬崇人が左サイドを崩して好クロスを供給した。
前半20分に神戸がカウンターから下平の裏のスペースで小川がキープし、長い距離を走り込んだ田中英雄のゴールで先制したが、その6分後に大宮がコーナーキックから清水がリーグ戦初ゴールを記録。このコーナーキック、大宮のロングボールに対応した奥井 諒のクリアがゴールラインを割ったもので、ハーフタイムに西野監督が「久しぶりに個人的に怒った」というプレーだが、下平が奥井に猛然とプレッッシャーをかけていたからこそ起こったミスであり、セットプレーからとはいえまぎれもなく大宮の攻撃的な姿勢が生んだゴールといえる。

後半の両指揮官の選手交代も、あくまで攻撃的だった。神戸は59分、都倉に代えて田代有三、朴 康造に代えて森岡亮太をピッチに送り込む。前半から大宮を苦しめた縦のロングボールは減ったが、よりポゼッションを高めてサイドから崩す場面が増えていった。大宮はその2分後に、再三のチャンスを外しFWととしてのプレーに苦しんでいる印象のチョ ヨンチョルに代え、長谷川 悠を投入。献身的なチェイスができる長谷川の投入で、前線からの守備と高さでペースを握りにかかった。
選手交代は一種の賭けであり、この試合ではその功罪がはっきり表れた。神戸は勝負所に投入されたにもかかわらず森岡の攻守に軽いプレーに、攻撃でボールは回ったがカウンターでの迫力を削いだし、守備においては片岡洋介に易々と右サイドを突破され、渡部大輔のプロ5年目でのリーグ戦初ゴールにつながるアシストを許した。大宮の長谷川は、足元でボールを受けたときは物足りなかったが、このときはしっかり中でつぶれ役をこなした。
しかしその7分後、橋本英郎とのパス交換から野沢がバイタルエリアに侵入。左サイドの相馬へ展開したパスに森岡がからんだことで応対した片岡の注意が分散され、相馬の縦突破からのクロスが容易になった。やや戻りながらの体勢から、豪快なヘディングを叩き込んだ田代の強さと技術も讃えられるべき。ポストでは都倉のほうが大宮に脅威を与えたが、しっかりとゴールという仕事を残した。

大宮にとっても神戸にとっても、2得点は喜ばしいが、その代償として2失点をどうとらえるか。攻撃と守備のバランスの問題ではなく、「個人の技術的なミス。修正させる」と簡単に片付けたのは、いかにも西野監督らしい。それよりも「着実だが、攻撃に良い面が出ている」と満足を感じているようで、今後も攻撃サッカーを貫いていくのだろう。
一方ベルデニック監督は、「結果に対してがっかりしている」と渋い顔。「守備に重点を置いてトレーニングしているが、攻撃にミスがあり、想定していた相手のカウンター攻撃も止めることができなかった」と、予想通り2失点を問題視した。ただ、攻撃に出れば点を取れることを証明できた。しかも攻撃の大黒柱だったラファエルがチームを去った状況で、高卒2年目の19歳とユース生え抜きの23歳がともに初ゴールを記録したことは、チームにとってこの上なく明るい材料だ。この勢いを維持しながら、攻撃と守備のベストなバランスを探りたい。そのきっかけには十分になるゲームだった。

以上

2012.07.15 Reported by 芥川和久
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • サッカーのポジション解説
  • サッカーの試合時間・タイムルール
  • サッカーにおけるインテンシティとは?
  • オフサイドって?サッカーのルールを開設!
  • ビルドアップとは?サッカーにおける戦術とポジションの役割を解説

テレビ放送

一覧へ

JリーグYBCルヴァンカップ
プライムラウンド 決勝
2024年11月2日(土)13:05 Kick off

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/10/21(月) 10:00 【週末のゴールをイッキ見!】明治安田Jリーグ全ゴールまとめ【1018-1020】