14位C大阪と13位鹿島の、下位脱却を目指す両者の対戦は、鹿島が小笠原満男の直接フリーキックによる1点を最後まで守り抜き、1-0で勝利。前節の大宮戦に続いて連勝し、7勝4分7敗と五分の成績に戻して、11位に浮上した。逆に、ホームのC大阪はこれでリーグ戦5試合勝ちなしとなり、再び順位を15位に落としただけでなく、16位新潟との勝点差も2に縮まり、後半戦がスタートしたばかりとはいえ、J1残留争いでも黄信号がともる形となってしまった。
ロンドンオリンピック日本代表の扇原貴宏、山口螢(以上C大阪)、山村和也(鹿島)も、壮行試合から中2日ながら強行先発出場したこの試合。序盤からペースを握っていたのは、今回からホーム用のサマーユニフォームで臨んだC大阪だった。前半から積極的に攻めに出ると、開始10分で4度の決定機を迎える。しかし、1分と8分のケンペスのシュートは鹿島GK曽ヶ端準に阻まれ、7分の柿谷曜一朗のシュートは左ポスト、10分のケンペスのヘッドは右ポストに弾かれてしまう。
すると、そこからは「目を覚ました」(ジョルジーニョ監督)鹿島も応戦し、興梠慎三がヘッドでゴールを脅かすなど、一進一退の攻防が繰り広げられる。そして均衡が破れたのは38分。鹿島がゴールから約20mの位置でフリーキックを獲得すると、小笠原が右足を一振り。C大阪GKキム ジンヒョンの手も届かない、ゴール左隅の絶妙なコースに直接決めた。このゴールで形勢が逆転。ワンチャンスをものにした鹿島がリードして後半を迎える。
C大阪は状況を打破するために、後半頭から播戸竜二に代えて、永井龍を投入。前線に新たな活力を加えて反撃に出ると、49分に柿谷がダイレクトボレー、52分には永井が左足シュートと、攻勢を強める。63分には左サイドに抜け出た柿谷のピンポイントクロスに、待ち構えていたケンペスが渾身のヘディングシュートで狙うも、GK真正面を突いてしまい、ゴールがなかなか奪えない。
一時はパスミスから鹿島の興梠にビッグチャンスを献上するも、シュートがわずかに枠を外れ、難を逃れたC大阪。終盤は運動量の落ちない山口らの献身的な守備も光り、さらに、村田和哉、舩津徹也を加えて、右サイドから圧力をかけ続けたが、「カウンターのみのサッカー」(セルジオ ソアレス監督)という鹿島を最後まで崩せず。ラストプレーのフリーキックではGKキム ジンヒョンも鹿島ゴール前に上がり、得点への執念は見せたものの、最後のケンペスのヘッドも枠を越え、万事休す。これでC大阪はホームゲームも第8節磐田戦以来、5試合勝利から遠ざかるという屈辱的な結果に終わってしまった。
一方、アウェイでもしっかり勝点3をものにした鹿島。試合後、ジョルジーニョ監督は「頭と気持ちの整理をして、チームの精神に則って戦ってくれたこと。プラス、集中力と注意力を持続できたというところが、今日の勝利につながった」と、気温28.7℃、湿度75%という蒸し暑いコンディションでも、最後まで戦い続け、白星を勝ち取ったイレブンを称えた。また、「両センターバック、両ボランチともに、素晴らしい活躍をした。途中出場の選手が、チームのために仕事をし続けるという精神があり、頭でそれを理解できていた」と、2試合連続完封勝利に導いた山村をはじめとする守備陣を、指揮官は絶賛していた。
C大阪は、この敗戦で5勝4分9敗と、4つの負け越しとなり、シーズン前に掲げた「追球(『王=タイトル』を追い求める)」というスローガンからは大きくかけ離れてしまう状況に。「勝負の結果というのを、選手のせいにするつもりはまったくない。指揮官として、逆に私の責任もあると思う」と述べたのはセルジオ ソアレス監督。深刻な課題である決定力不足については、「ケンペスだけではなくて、(柿谷)曜一朗、播戸、永井龍、こういった選手も含めて、もっともっと決定率が上がるよう、これはチーム全体として、グループとして、フィニッシュの精度を上げることを考えていかなければいけない」と、立て直しを誓っていた。
「もう言い訳できないので、『次、次、次、次……』と言っていてもダメやと思うし、ほんまに次の試合は死ぬ気で戦っていきたい」と、悲壮な決意を示したのは、柿谷。移籍した清武、ロンドンオリンピック韓国代表で不在のキム ボギョンだけでなく、これからは山口、扇原もチームを離れることになり、さらなる厳しい状況がC大阪には待っているが、「僕も含めて、ベンチのメンバーは全員準備ができているし、扇原とか山口とはまた違ったよさが、違う選手にはあるので。そういうところでも全然できると思うし、自信を持ってやっていくだけ」と永井。試練の1カ月を迎えるなか、C大阪イレブンの一層の奮起が待ち望まれる。
以上
2012.07.15 Reported by 前田敏勝
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