前回のホームゲーム(対栃木SC)時に見せた煮え切らなさは、さすがに今日は見られなかった。先制点をあげた弦巻健人、高さと強さで最前線の起点となった塩沢勝吾、得点こそなかったものの神出鬼没の動きを見せた船山貴之。皆一様に表情は明るく、この日の出来栄えに確かな手応えを感じ取っているようだった。
目下首位の東京Vに対し、松本は17位。反町康治監督が「厳しい戦いを強いられることは前提」と語ったように、彼我の戦力差は明らかだ。ならば相手の良さを消し、自分たちの良さを出すしかない。そのために「ゲームプランをしっかり立てて」「少してこ入れ」したと言う。その一つがフォーメーションだろう。基本的な構成に大きな変わりはないが、攻撃に重きを置く際には、弦巻が若干下がり気味になり、喜山康平が少し高い位置を取る。ユン・ソンヨルをアンカーにした、3-5-2(3-1-4-2)とでも表現すれば良いだろうか。この詳細については「東京Vシフトだったが、どこまで話していいのか分からないのでやめときます(笑)」(塩沢勝吾)と言葉を濁したが、中盤の厚くなった松本による『東京Vシフト』が奏功したのは明らかで、これによって喜山が攻撃に顔を出し、船山がディフェンスラインの裏を狙う機会がいつも以上に多くなるなど、得点の匂いは増していた。
先制点が生まれたのは前半38分。ユンが中央から左サイドに走りこんだ鐡戸裕史にパス、更にボールはゴール前に詰めていた弦巻へと送られた。ほぼフリーの状態から「確か左足で」打ったシュートはゴールネットへと吸い込まれる。
ただ、試合はそのまま終わることはなかった。1点ビハインドで折り返した後半、首位チームがいよいよその牙を剥く。68分に森勇介が素晴らしいミドルシュートをゴールに突き刺し、まず同点に追いつく。しかし、その後幾つかあった得点機をシュートミスで逸するうちに、試合は音を立てながらあらぬ方向へと転がり始めた。
2点目、3点目ともに、きっかけは船山。まず82分に船山が左サイドの鐡戸へと展開、ぽっかりとフリースペースの開いた右サイドに大きくチェンジすると、そこに走りこんでいたのは玉林睦実。これを冷静に流し込んで勝ち越し弾を奪うと、その3分後には船山とのコンビネーションからラインの裏を突いた塩沢が左足でゴールネットを揺らした。この3点目がものを言った。終了間際に中後がゴール前で得たFKの好機を直接決めたからだ。アディショナルタイムも追いすがる東京Vだったが、結果的に塩沢のゴールが決勝点となり、追いつ追われつの熱戦を制した松本が首位相手に見事なアップセット劇を演じた。
東京Vは、2得点を上げたことからも分かるように自慢の攻撃力はこの試合でも健在だった。しかし、その2得点は森のミドルシュートと中後の直接FK。言わば個人能力によるもので、阿部拓馬と杉本健勇の強力2トップが計6本のシュートを放ちながらもゴールを割ることは出来なかったことも痛い星を落とした要因に挙げられよう。一方の松本の3得点は全て流れの中から。「決めるときに決められたのが大きかった。3点目をとっていなければ引き分けだった」と弦巻も表情を緩ませる。
「(選手交替など)ゲームプランをしっかり立てた」と語る指揮官のもと、最終ラインの裏を執拗に突くなど自分たちの良さを存分に発揮した選手たちの奮闘も光り、第9節以来、約2ヶ月半ぶりとなるホームでの勝利という、結果・内容を伴った会心の一戦となった。
以上
2012.07.09 Reported by 多岐太宿
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