もう少し、あと少し……。決定機でも、失点シーンでも、栃木は僅かに詰めが甘かった。2位・湘南を仕留める機会は79分の失点前後に1度ずつ訪れたが、結局そのチャンスを物にすることができなかった。また、「ボールを取られたら追うだけの話」と松田浩監督が言うように、攻守交代の際に数人の足が止まったことで後手を踏み、不必要な失点を喫してしまった。
「もったいない失点だった。本当にもったいない失点だった」
ハイパフォーマンスを披露した宇佐美宏和は短時間に何度も同じ言葉を繰り返し、勝点3を取り逃した悔しさを露わにした。湘南に下剋上を果たし、上位浮上の足掛かりとしたかったが、一瞬の隙が白星を掴み損なう事態を招いてしまった。悔やんでも悔やみきれない。
「前半はある程度押し込めていた」と遠藤航が振り返る通り、後方でボールを回しながら機を窺い、栃木陣へ入った途端に加速した湘南。本来の姿を見せ、前半戦の主導権を握った。3バックの中央から右にコンバートされた遠藤。若きDFリーダーはボールの循環をスムーズにして流れを作り出した。ビルドアップの新たなオプションを得られたことは、湘南にとって小さくないはずだ。
6分、7分と立て続けにゴール前に迫られた栃木だが、3バックの両端に加え、ボランチの両脇を使い始めると、徐々に得意のショートカウンターを繰り出す回数が増える。ただ、試合自体はアップテンポで、それは湘南のリズム。栃木は相手の思惑にハマったものの、窮地に陥ることがなかったのは守備陣の奮闘が大きかった。スペースで受けられても、スペースへ抜けられても粘り強く冷静な対応ができたのは収穫だった。
ある程度、我慢しながら好機を待つのは栃木の常套手段。後半、疲労が垣間見られた湘南から手綱を奪うと、68分に菊岡拓朗がFKから技ありの一発で先手を取る。菊岡のキックに鋭く反応し、GKの判断を鈍らせた菅和範のニアサイドへの飛び込みは隠れた好アシスト。相手のお株を奪うセットプレーで先行した栃木だが、今度は逆に十八番のカウンターから失点を浴びてしまう。互いにシュート数はふた桁に届かなかったが、見せ場の多い白熱した好ゲームはドロー決着で幕を閉じた。
「前半に関しては頑張って前に走り、それに絡む意識があった」と、同点弾の古橋達弥はチームの復調の兆しを感じ取った。開幕の頃のダイナミックさを取り戻すまでには至っていないが、アグレッシブに仕掛ける回数は前節の大分戦に比べれば目に見えて多かった。ただ、曹貴裁監督は攻め急ぎや、シンプルさが幾分か足りないことを指摘している。ゴールが取れれば素早く攻めたことになり、ゴールが取れなければ攻め急いだことになる。そこは紙一重の部分があるが、無駄なくシンプルな湘南スタイルを取り戻し、次節のホーム徳島戦で7試合ぶりの勝利を手にしたい。ドロースパイラルから脱するためには、「やっぱり先にゴールが欲しい」(古橋)。
76分以降の失点がひとつ増えてしまった栃木。ここ最近続く終盤の失点という課題克服に向けて、「90分+アディショナルタイム、最後まで集中することが大事になる」とは宇佐美。GK柴崎邦博は、「いい流れの時にどれだけ冷静にやれるかが大事だと思う」。追加点を窺いつつ、リスク管理を怠らない、攻守のバランス感覚がクロスゲームでは求められる。1‐0を2‐0、1‐1を2‐1に。しぶとさは、J1昇格のひとつのキーになる。山形(1‐2)、鳥取(0‐1)、京都(0‐1)に競り負け、湘南に追い付かれた教訓を、今後に活かさなければ上位進出は難しい。幸いなことにここ3試合、先制点は取れている。追加点を奪い、2‐0あるいは2−1で勝ち切れるチームへと変貌を遂げたい。
以上
2012.05.21 Reported by 大塚秀毅
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