7試合連続失点。カップ戦も含めた公式戦というくくりにすれば、広島は10試合連続失点が続いている。開幕4試合でわずか2失点という完璧な守備を見せていたのに、この現状はいったいどうしたことか。キャンプから攻撃的なコンセプトの中でも「守備」のエッセンスを加える。それが「森保イズム」だったはずなのだが。
「大きく崩されているわけではない」
異口同音の答えである。しかし、ここ3試合の公式戦で7失点という現実からは逃れられない。
「誰がボールに行くのか、はっきりしろ」
沖縄キャンプ初日、森保一監督がチームに伝えた最初のメッセージ。結局はここに戻ってくる。横浜FM戦ではサイドアタッカーに対してのプレスが甘く、自由にクロスをあげさせて失点。水曜日のヤマザキナビスコカップ・C大阪戦でもルーズボールに対して誰も競りにいけず、そこからブランキーニョのゴールが生まれた。広島がつくるブロックは強固なはず。しかしそれも、ボールホルダーに対する厳しいプレスがあってこそのもので、それなくしてブロックなど機能しない。
「結局、スキを見せてはいけないということ。90分集中するのは難しいけれど、そこにチャレンジしないといけない」
森崎和幸の言葉である。
「試合の中で、集中が切れやすい時間帯とか気持ちを抜いてしまいがちになる状況は、必ずある。その時こそ、しっかりと集中してディフェンスすること。そこに、明日の神戸戦はこだわりたい。周りに誰かがいても、まず自分がボールに行く。その意識を強く持ってアクションを起こせば、そこに反応して連動していくもの。開幕の頃はそういう感覚でできていたから、守りやすかった」
特に対神戸ということを考えると、ボールホルダーへの厳しさやルーズボールへの反応など、広島の現状の課題を修正することが何よりも肝要である。ハイプレスとロングパスを軸にアグレッシブな闘いを見せる神戸には、攻撃的なタレントも豊富。エース・大久保嘉人は前節で怪我からの復帰を果たし、大砲・田代有三も戻ってきそう。17歳の高校生・松村亮もヤマザキナビスコカップでクラブ最年少ゴールという結果を残した。そして中盤には、野沢拓也というパッサーがいる。
広島が見せるほんの少しの油断は、神戸得意の速攻への誘い水。実際、彼らは「監督交代」という劇薬を処方したとはいえ、リーグ戦ここ5試合で9得点。5試合ぶりに無得点となった前節の名古屋戦も決定機は創っていた。破壊力は間違いない。
だが、広島がしっかりと「自分たちの守備」ができれば、森崎和が目指す「完封という結果を出す」ことは決して不可能ではない。いいポジションをとり、ボールホルダーに厳しく、チャレンジ&カバーの関係をはっきりさせる連動した守備。決して特筆するようなことではない。しかし、「守備は基本を大切にすること」(森保監督)であり、それができていたからこそ、開幕時の鉄壁の守備が実現できた。そこを思い出すことだ。
一方で、青山敏弘は「完封したいのは当然のこと。ただ、失点ゼロを達成することは簡単ではない。大切なのは、たとえ失点しても勝つことなんです」と語る。完封はもちろん目標だが、それを全ての試合で実現することは、バルセロナでもレアル・マドリードでもチェルシーでも無理。大切なのは、先に失点したとしても、最後まで勝つことを追い求め、結果として勝利すること。今季のリーグ戦で、先制されながら勝点をあげたのは名古屋戦のみ。たとえネガティブな状況に陥っても反発力を発揮して結果を出す。そんな強さを見せつけたい。
広島対神戸と言えば、様々な特筆すべき歴史がある。2010年の広島ビッグアーチでは李忠成(現サウサンプトン)が広島移籍後初得点(リーグ戦)を叩き込み、その後の大ブレイクのきっかけを築いた。2005年の神戸ウイングスタジアム(現ホームズスタジアム神戸)では佐藤寿人がハットトリックを記録し、現在のチャントが自然発生的にサポーターから巻き起こった。2度にわたって広島が勝ち越したのに残り8分で神戸が逆転した試合もあれば(2007年)、神戸が0−2からひっくり返したにも関わらず、残り6分で広島が再逆転に成功した試合もある(2009年)。2005年のビッグアーチ決戦で広島が2−0で勝利した試合を最後に、どちらかのチームが2点差以上をつけた試合はない。スタイルこそ違えど、共にハードワークを持ち味とする両チームの激突は、その歴史を考えても、熱戦への期待が高まる。
「闘うという部分で神戸を上回らないと、勝てない」
あと1得点で9年連続二桁得点に迫っている佐藤寿人の言葉は、選手全員の決意。身体をぶつけ合い、強い気持ちを発散しあう闘いが、明日の広島ビッグアーチで巻き起こる。
以上
2012.05.18 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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