蔚山に「You'll Never Walk Alone」が響いた。平日開催となったこの日、蔚山文殊スタジアムには空席が目立つ。その中で、一団を組んだアウェイゴール裏の声援がホームの歌声をかき消して一層引き立った。選手の名前をコールし終えると、「ポポトーキョー」の合唱が起こる。それに指揮官はサムアップで応えて試合が始まる。
90分間の試合の後、青色のユニフォームを着た選手たちは地面に腰を落とし、その場に倒れこんだ。しかし、彼らの顔には笑みが浮かんだ。37分に、FKからカク テヒに頭で合わせられ、こぼれ球にマラニョンが飛び込んでバーを弾くと、それをカン ミンスが押し込んだ。その1点を最後まで守りきった蔚山がACLグループステージ最終戦を制し、1位の座をつかんだ。すでに決勝トーナメント進出を決めていたF東京は、勝点11でF組2位となり、30日にH組1位の広州恒大とアウェイで8強進出を懸けて対戦する。
アウェイのユニフォームを着た選手たちはその場に立ちすくみ、首を横に傾げる。結果に反した不釣合いな姿。試合は終始、F東京が圧倒していた。多くの時間を敵陣で過ごし、ボールは2度、蔚山ゴールのポストを叩いた。蔚山のキム ホゴン監督も「今日は、試合内容は決してよくはなかった」と試合後にコメントしている。もし、内容で優劣をつけるならF東京は勝者になってもいいはずだった。「サッカーでは良くあることだ」と、ポポヴィッチ監督は自分を納得させようと試みる。しかし、グッドルーザーで片付けられない勝負の世界。「あのとき(第一戦で)私が怒ったのは、同点に追いつかれたからじゃない。こういう状況を招いてしまうからだ」と、指揮官は淡々と感情を押し殺して語った。
ただし、悲観すべき内容では決してない。けが人続出で札幌戦から5人を入れ替えて戦ったF東京が同組で首位となった蔚山を圧倒した。決定機を作られたのも、失点の場面も含めて数える程度だった。
「よくやったと言いたい」
ポポヴィッチ監督は、その言葉を選手に贈った。ワンプレー、ワンプレーを切り取っていくと、次へとつながっていく姿もあった。終盤、5バックで守る蔚山をパスと、動きでかく乱。練習で何度も見たフィニッシュまできれいに崩しきる形が連鎖した。「観る人を魅了する崩しができていたし、誰が出ても同じサッカーができるというチーム力を見せられたと思う」と、MF高橋秀人も胸を張った。
個人の活躍に目を向ければ、移籍後初先発のMF河野広貴は序盤に前線で違いを見せ、MF米本拓司は時間の経過とともに、しり上がりに調子を上げた。人生初の右サイドバックで起用されたDFチャン ヒョンスは、負傷で痛みを抱えながらも、交代直前にCKを奪うオーバーラップも披露した。そのヒョンスに代わってFW林容平がプロデビュー戦を飾った。泥臭く走り、守備に攻撃に貢献した。彼らの復活、成長がチーム力を上げる糧となっていくはずだ。
林は「FWならシュートを打たないと」と言い、河野は「自分らしいプレーは少なかった」と苦い顔をした。
F東京の挑戦はまだ続く。下を向いて反省した後は、次への行動を急がなければいけない。「もっともっと上を」と指揮官は、若い選手たちの顔を上げさせる。「チームの約束事を守り、全力を出して楽しむ」(ポポヴィッチ監督)それがトーキョースタイルだ。ラウンド16の相手は、J1王者柏を苦しめたアジア最強の呼び声も高い相手。「広州が相手か」と腰を重たくする前に、そんなチームとのヒリヒリとした真剣勝負を想像して楽しまないわけにはいかない。そしたら、ポポみたく思わずサムアップでサインを作って「広州まで何時間かかるんだろう」と、早速検索を始めている人がいるはずだ。
以上
2012.05.17 Reported by 馬場康平
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