横浜FCは第9節になってようやく初勝利を果たしました!
これまで、期待がふくらむ補強をしながらも、試合になるとその力がうまく発揮できない状態が続き、簡単なミスで勝点を落としていくことが多かったように思います。サッカーの世界には、万能な戦術、万能な選手、万能な監督はないのですから、ピッチ上でいかに落ち着いて良い部分が組み合わされるか、というところで試合の結果が大きく左右されます。シーズン途中で監督が交代になってしまうような状態に陥ることは誰もが望んでいないと思いますが、横浜FCの初勝利までの軌跡を見ると、結果的にはこの監督交代がチームの目を覚まさせたということになると思います。
チームの目を覚まさせたと書いたのは、「自縄自縛」になっていた面がかなり改善されたと感じるからです。山口素弘監督になって約1カ月。この間、横浜FCとしては珍しく非公開練習が取り入れられたため、練習の詳細までを知ることはできませんが、選手のコメントから推察すると、いかにボールを精度高く繋いでいくか、自らが主導権を握るために必要な「きわめて基礎的なスキル」をひたすら磨いているような気がします。ボール受ける角度、距離感。シーズン途中で試合が続く中で、どうしても対戦相手や試合に即した練習に時間を割きたくなるところでしょうが、そういった基礎力のアップを非常に大事にしていることは確かだと思います。この変化により、自らに課していた重りを外し、自らの力を蓄えるという監督のメッセージで、チームが良い意味での冷静さを取り戻したように思えます。まさに「急がば回れ」。勝負の世界で生きる人にとって、なかなかその決断をすることは難しいと思いますが、修羅場で本当に必要な力を知る一方で、プロの監督初挑戦である山口監督だからこそできる思い切ったやり方が、ようやく実を結んできたのだと思います。
山口監督が初戦の甲府戦後の記者会見で述べた「こんなものじゃないでしょうか」という言葉が強く印象に残っています。この試合は、甲府との力の差をはっきりと見せつけられた試合でした。初采配の山口監督にとっては、非常にほろ苦いスタートです。しかし、文字に起こしてしまうと、あっさりした感想にも誤解されるかもしれない言葉を自然と口にしました。きちんと目指すものがあれば初戦の結果よりも大事なものがある、だから慌てるなというメッセージが伝わるものでした。
その後、取材をするたびに選手の顔つきが変わってきました。山口監督は、よく「ファイティングポーズを取っている」という表現をしますが、まさに日に日に選手の言葉が力強くなってきたのです。負けている時は空元気になることもあるのですが、そういう感じもありませんでした。
第9節の京都戦に至るまで、横浜FCは一歩一歩、足元を固めてきました。昇格候補の京都に勝ったのは、その回り道が意義深いことを少しだけ証明しました。一度、冷静に目を覚ましたことで、選手は1つの方向を向いています。これからも、地道に力を付けていって、トレーニングで得た自信を試合で発揮するだけです。今後が楽しみになってきたと思います。次の試合も期待しましょう!
以上
2012.04.25 Reported by 松尾真一郎