今季公式戦7試合目にして初めて、名古屋が内容と結果を伴う会心のゲームを披露した。敵地に乗り込んでのAFCチャンピオンズリーグ第3戦で3-0と天津泰達を一蹴。混戦のグループを抜け出すとともに、今後への期待を大いに抱かせた。
キックオフ前には名古屋はいくつかの不安要素を抱えていた。中国入りの前日に田中マルクス闘莉王の遠征不参加が発覚。チームの絶対的主力にして精神的支柱を欠いた上に、連戦の疲労を考慮してか不動の左サイドバック・阿部翔平もベンチスタートになった。彼らに代わってスタメンに名を連ねたのは、ダニエルと石櫃洋祐の新戦力たち。前回のオーストラリア遠征の際にストイコビッチ監督は「彼らにチャンスを与えた」と話していたが、もしかするとACLのグループリーグ前半戦をテストの場と考えているのかもしれない。ACLは国内に比べて相手に研究されておらず、比較的伸び伸びとプレーできる傾向にある。特に石櫃は今回、阿部の代役として「人生初の」左サイドバックで起用されている。監督の「フィーリング」による選手起用は、今後への布石といった意味合いが大きいと考える方が自然だからだ。
ここまでのACLを2戦連続で引き分け、国内リーグでは下位に低迷する天津泰達の実力は未知数だったが、キックオフから見せた激しさは予想以上だった。スタメン11人全員が180cmを超える長身の集団は、足元の技術はさほど高くないものの、見た目通りにフィジカルコンタクトを恐れない肉体的強さを持っていた。しかしスピードと判断力で名古屋に上回られたため、アフター気味のチャージを連発。足裏を見せてボールを奪いに行く悪癖もあり、前半だけで4枚のイエローカードをもらうなどややダーティーなプレーとなってしまったのは残念だった。もちろんマイナス面だけではない。ボランチのSHUMULIKOSKI(背番号29)は戦況を読む力に長けており、サイドハーフのCHEN TAO(背番号21)は技術と突破力のある好選手である。元中国代表のLI WEIFENG(背番号5)は2009年に水原三星の選手として見た時と変わらぬ空中戦の強さを誇っており、チームの根幹をなす選手たちのレベルは流石にACL出場チームというクオリティを持っていた。
しかしながら冒頭にも書いたように、この試合を支配したのは名古屋だった。試合開始から連戦の疲れを感じさせない激しいプレッシングを展開し、中盤より前のラインで次々とボールを奪っていく。奪ったあとは金崎夢生と永井謙佑のスピードをサイドでちらつかせ、玉田圭司と藤本淳吾が中央で巧みにリズムをコントロールする。ケネディの高さを必要としないほどにテンポよくパスをつなぎ、11分には藤本が、14分には虚を突く縦のロングフィードから永井が決定機を迎えるなど主導権を掌握した。
今季ここまでの名古屋なら、ここでなかなか得点が生まれない悪循環に陥るところだが、この日は違った。24分、中盤でボールを奪ったダニルソンがそのまま中央を突進。ペナルティエリア前でボールを受けた金崎が左の藤本に展開すると、背番号8はキックフェイントでマーカーを軽くいなし、芸術的なループシュートを逆サイドネット上に沈めてみせた。良い流れに得点という結果を伴わせることで、名古屋の攻勢はさらに加速する。その後も手を緩めることなく激しい守備を展開し、数少ない天津泰達のチャンスも体を張ってゴールを死守。リードをきっちり維持して前半を終えた。
名古屋の勢いはハーフタイムを挟んでも収まることはなかった。後半開始早々の49分、またもダニルソンがボールを奪って前線へ。左の玉田、中央を追い越していった金崎、右を走る永井と用意された選択肢の中から右サイドを選択すると、落ち着いたコントロールから永井が逆サイドへクロスを送る。胸トラップでマーカーをはがした玉田が浮き球に左足を一閃、強烈なシュートが逆サイドネットに突き刺さった。交代策で巻き返しを図る相手の出鼻をくじく理想的な追加点。前半から別格のプレーを見せていた攻撃の大黒柱が、豪快かつ華麗な一撃でさらなるアドバンテージをチームにもたらした。
その後、天津泰達は前線に入った長身のARS SJOERD ADRIANUS THEODORUS(背番号28)が奮闘し、一時は盛り返す。増川隆洋やダニエルですら押し負ける強烈なフィジカルで起点を作り、CHEN TAOやSHUMULIKOSKIらが次々とゴール前に飛び出しチャンスを作った。しかしその勢いも65分までのこと。前がかる天津泰達の隙を突き、永井が快足を飛ばしてスルーパスからチャンスを作ると、続けざまに66分にもケネディ、永井、金崎のチャンスメイクから最後は藤本がミドルシュートを放って形勢を逆転。73分にはケネディのディフェンスから藤本が攻め上がり、左の玉田、右の永井という選択肢から永井をチョイス。絶妙のアシストパスを受けた永井が冷静に流し込んでダメ押しの3点目を奪い、試合を終わらせた。
とにかくこの日の名古屋は運動量があり、攻撃時に多くの選択肢を作ったことが出色だった。流動的でありながらバランスの取れたポジショニングが、天津泰達の守備をすべて後手に回らせていた。守備でケネディ、金崎、永井の3人が精力的にフォアチェックを繰り返し、相手に満足に攻撃の組み立てをさせなかったことも、破壊力抜群の攻撃の下支えとなっていた。守備に奮闘した3名を揃って交代させ、次戦への休養を取らせることができたこと、ダニエルと石櫃のテストが及第点以上に終えられたことも忘れてはならない。藤本がイエローカードをもらい、次戦出場停止になってしまったことは玉にキズだが、この90分に関しての名古屋は完璧に近い出来だった。
グループGのもうひとつの試合、城南一和とセントラルコーストの一戦は引き分けに終わり、名古屋はグループ単独首位に浮上。今季のACL初勝利は何とも大きな1勝となった。帰国してすぐに待つリーグ鳥栖戦に向けても、この一戦は必ずや良い影響を及ぼすはず。現チームで実現できる快勝のモデルケースを得たことで、今後の快進撃の予感も漂ってきた。
以上
2012.04.04 Reported by 今井雄一朗
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