鹿島が勝てない。
つねにタイトル争いに絡んできた名門クラブが、その歴史に名を刻むレジェンドプレーヤーを監督に迎えたことは、オフの話題をさらう歓迎すべき話題だった。しかし、蓋を開けてみると、公式戦5試合でわずかに1勝という、まさかの低迷。リーグの覇権奪還を目指しながら4試合目にしてようやく勝点1を手にした超低空飛行は、数多の問題点が指摘されるようになった。
しかし、そんな状況にあってもジョルジーニョ監督は毅然と振る舞う。
「改善に向けて何もしていないわけではない。アントラーズの選手の質を考えると、リーグ戦4試合無得点は信じられない」
一貫して選手を信頼するコメントを残してきた。
普通であれば、結果が伴わないことに対して不満を露わにするはずのサポーターも、肩を落とす選手たちを逆に励ましてきた。確かに、結果は出ていないが、試合を見た者であれば、勝利まで紙一重のところまで迫っていることが確認でき、監督の言葉が虚勢ではないことを実感するはずだ。生みの苦しみは予想以上に長く大きい。しかし、そこを乗り越えたときに得るものは、ただの1勝ではない。勝利への道筋を知り尽くす79年組に頼ることなく、新たな世代が一歩を踏み出すことができれば、それは新たな黄金期に向けた第一歩となるはずだ。
そう考えたとき、先のリーグ戦で横浜FMをシュート3本に抑えた守備の安定感は、攻撃陣にとって心強い。特に、ここ数試合の岩政大樹のパフォーマンスには目を見張るものがある。横浜FM戦では、1トップの大黒将志を機能不全にしただけでなく、精度の高いボールが飛んでくる中村俊輔のフリーキックやコーナーキックに対しても「触れる奴が触れ!」と味方を鼓舞し、90分間、ゴール前で体をはった。被シュート数が少なかった理由のひとつに、岩政の身を挺したブロックがあることは間違いない。その姿には、昌子源、山村和也という後輩たちも大いに感銘を受けていた。
その姿は攻撃陣にも見えている。
「後ろが守ってくれたのに。申し訳ない」
このところ、FWの柱として起用されてきた大迫勇也は、大きな責任を感じている様子だった。
決定力不足のテコ入れとして期待されるドゥトラも、月曜の紅白戦に出場。まだまだ90分間の出場は難しそうだが、時折パワフルなプレーを見せ、相手を混乱させていた。ジュニーニョの左サイドからの折り返しをダイレクトボレーで逆サイドのネットに突き刺した場面は、ジュニーニョのファウルがあったためゴールは取り消されたが、ポテンシャルの高さを感じさせた。ベンチメンバーには絡んで来ると思われる。守備のバランスは整ってきただけに、彼らを中心とした攻撃陣の奮起に期待だ。
対する大宮も、なかなか結果が出ずに苦しんでいる。しかし、先のリーグ戦では大変な悪天候のなか、名古屋を相手に一歩も引かない戦いを見せ、勝点1をもぎ取った。「失点してからしばらくはメンタル的にも高まらず危険な状態だったが、何とか持ちこたえて1点を返すことができた」と鈴木淳監督も一定の評価を示した。押し込まれた展開の中でも闘志を前面に出して戦うことができただけに、それを勝利という結果に結びつけたいところだろう。
じつはヤマザキナビスコカップで両者が対戦するのは初めてのこと。カップ戦初対決を制し、リーグ戦へと勢いを繋げるチームはどちらだ。
以上
2012.04.03 Reported by 田中滋
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