互いに点を取り合った試合は、終始ゲームを支配した京都が競り勝った。
京都は、出場停止明けの中山博貴、チョンウヨンを戻し、前線には久保裕也に代わり長沢駿を起用。福岡はセンターバックに「調子が良かった」(前田浩二監督)と堤俊輔を配置した。
試合は早々に動く。5分、チョンウヨンが起点になり中盤でつなぐ。中村充孝が前を向くと、すぐ隣にいた工藤浩平へ。これを、工藤がドリブルで抜けだしシュート。これが決まり、工藤の今季初ゴールで京都が先制する。
その後も京都はボールを回してゲームを支配。しかし20分、中盤でボールをカットされると、ペナルティエリア近くでFKを与えてしまう。このクロスを、福岡・堤のプレッシャーを受けた中村がヘディングクリアできずにオウンゴール。1−1の振り出しに戻る。
密集の中をパスで崩していく京都に対し、福岡はサイドを広く使い、相手を揺さぶる。しかし、そこからフィニッシュが遠くゴール前まで中々持ち込めない。
逆に京都は33分に、FKのこぼれを黄大城がシュートを放ち、そのこぼれを宮吉が詰めるなど福岡ゴールに迫る。そんな状況の中、追加点は福岡に入る。
45分、福岡は速攻から、右サイドをえぐった城後寿が中に上がってきた末吉隼也へ送る。末吉のキックが浮き球となるも、左にいた高橋泰の前へ。高橋がこれを冷静に決めて福岡が2−1と逆転に成功する。
後半、「しっかりプレーすれば逆転できる」(工藤浩平)と、強い気持ちで入った京都。そのプレーが同点に結びつく。後半5分、工藤から中村へとつなぎ、中村がDFの背中を取る絶妙スルーパスで宮吉へ。宮吉がこれを逆サイドで走り込む長沢駿へグラウンダーで送ると、これをきっちりと決め。長沢駿の京都移籍後初ゴールで京都が2−2の同点に。
さらに攻勢に出る京都。右サイドを攻略し、中山や工藤の決定機を作る。そして後半13分、京都、逆転へ。
チョンウヨンから中村が裏へ走り出す長沢の足元にボールをつけると、長沢は逆サイドを走る宮吉へ。2点目の長沢と宮吉が入れ替わる様な形で、今度は宮吉がゴール。京都が3−2と試合をひっくり返す。その後、福岡のサイド攻撃に押込まれる場面もあったが、粘り強く相手の攻撃を跳ね返しタイムアップ。京都が勝点12まで伸ばし、4位に浮上した。
試合後、福岡・前田浩二監督は、京都の攻撃に対し「全体でプレッシングに行く」プランがあったことを明かした。しかし「ワンテンポ出足が遅くなったこと。連続して追えなかったことで後手後手となった」と、守備での綻びが大きくなったポイントを挙げた。それが京都に流れを渡す要因の一つになったのかも知れない。
対して京都。大木監督が試合後「自分たちで自滅することもなく、最後90分まで戦い抜いたということ。ゲームの中でもいい時悪い時があると思います。その中である一定の気持ちを持ってやり通せるということは、非常に価値のあること、価値のある戦い方の様な気がします」と語ったが、「いい時悪い時」という部分は興味深かった。
工藤の素晴らしいゴールで先制した京都。その後も「京都らしい」ゲーム運びができた、にも関わらず前半終われば1−2で福岡に逆転を許していた。京都に隙があったと言えば簡単だが、京都の選手たちが、厳しく非難されるほど集中に欠けていた様には観えなかった。逆に福岡は速攻で末吉が中盤からゴール前に走り出しボールを受けている。つまり、福岡の素晴らしい攻撃だったということ。ワンチャンスかもしれないが、非常に研ぎ澄まされた攻めで得点した。
極端に言うと、得点や失点、流れを掴むというものは、簡単な理由で片付けられないものがあるのだということ。今節、京都は長い時間主導権を握ってはいたが、福岡の時間帯も当然あった。その時に、何がきっかけで福岡の主導権の時間が長くなったり、或いは福岡の攻撃が結実したりするか、それは理屈では説明できない部分があるということである(逆に、さらに福岡を抑え込むことも、京都が得点を重ねることも、出来たかもしれないということ)。
何が起こるか分からないサッカーの中で、「いい時悪い時」に左右されることなく「一定の気持ちでやり通せた」ことを、大木監督は称賛したかったのだろう。
ただ、例えば、リードされての試合終盤などは、もっとゴールへの執念を出して、という場合もある気もする。そういうことを考えていくと、試合後、工藤が口にした様に「サッカーって難しいなって…」、と本当にそう思う。
心の部分でもしっかりした戦いが出来た京都。心技体をしっかりと整え、何が何でも「勝ちに行く」。一つ勝って、また次も勝利への欲が強まっていく。そんな雰囲気が高まっていくことに期待したい。
以上
2012.04.02 Reported by 武田賢宗
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