岡山は5日前の前節・大分戦から先発メンバーを3人替え、ワントップにチアゴ、左ワイド・田所諒、ボランチに今季初出場の千明聖典が入った。山形は前節と同じメンバーで臨んだ。立ち上がりからゴールに向かう姿勢を見せたのは、岡山。強風の風上に立ち、右ワイド・澤口雅彦からのサイドを変えるパスとこぼれ球を、左の田所が続けて2本のシュート。対する山形は、ややスロースターターとなったが、前半5分には、左サイドで繋いだところに走り込んだアンカー・宮阪政樹がシュートを放つなど、中島裕希ら前線が収め、山崎雅人のラストパス、さらに後方からのスピードを生かしたプレーで岡山ゴールに近づく。
岡山の前線で効いていたのは、「先発でも、後半のカードとしてでも、やるべきことはわかる」と話していた石原崇兆の走りだ。ダイアゴナルに進む豪快なドリブルでトップに繋げるなど、石原の動きが生み出す活力は相手にとっては厄介で、山形はしっかりと人数をかけて対応した。
先制点は前半36分に生まれた。山形DFのパスミスをチアゴが奪い、抜け出してシュート。そのこぼれ球を詰めていた中野裕太が決めて、岡山が先制。「短い時間に思考がわーっと巡りましたが、シュート自体は難しいものではなかった。フリーで待っていたところを、こぼれ球の対応に切り替えて、運良くあそこにこぼれてきた。しっかり決められて良かった」と中野は話す。前節決められなかった悔しさは、ここでひとつ晴れた。3年目を過ごす岡山での初ゴール、J通算2ゴール目だった。
このゲームで不動の存在感を見せつけたのは、岡山のボランチ・千明聖典。復帰初戦ながらコンディションは良く、相手のパスをカットするリスクケアなど守備的仕事をこなしながら、時折、仙石のひとつ後方でバランスを見た。そのため「今年は、中に入って仕事をしようという意識がある」田所、「夢吾(一柳)が外を上がってくるので、中でプレーすることが増えた」澤口雅彦の左右ワイドの自由度がさらに広がり、守備重視を強いられる山形に対しても積極的に攻撃に出ることが出来た。
岡山の2点目は、61分。細かいパスを繋いで決定的場面を作った後、山形のディフェンスにいったん押し戻されたが、田所、千明で再び高い位置でビルドアップ。そこからスイッチを入れて仙石が中央の川又堅碁に縦パス、田所に落とす。田所がためて、後ろから走ってきた仙石が決める。先週、影山雅永監督が練習場で話していた「シュート打てばいいってもんでもないと思うんですよ。それより、エリア付近でアクションを起こして欲しい」という要求を選手たちは理解し、プレーした。
とはいえ、その追加点のわずか3分後には、山形が左の山崎からの角度のないパスを、中島がトラップしてゴール。この失点を許したことは現在の岡山の甘さだろう。しかし1点差となった後は、両者が交代枠を使いきり、持てる力を発揮した緊迫の展開となった。山形のシュート数は前半3本に対し、後半は9本。08年以来の4連勝を逃した奥野僚右監督は、「戦う姿勢、玉際の厳しさ、ゴールへの気迫、そういったものが岡山さんの方が勝っていたなと実感しています」と話し、状況への対応が遅れたことについても言及した。
先週、「たぶん先制点とったら勝ちますね…、うん」と話していた澤口は、「2点目をとって、その後すぐ失点したことで、相手を勢いに乗せてしまい、同点になってもおかしくない状況になった。ここは突き詰めていかないと」と試合後、コメントした。結果によらず、パフォーマンスに沿って考える澤口、また個性ある歯車として機能するコンディションを作っていた田所ら、岡山のメンタル体幹の強い選手たちの良さが発揮できたゲームでもあった。
以上
2012.03.26 Reported by 尾原千明
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