この試合の最大の注目は、鳥取が果たしてどのような戦い方をしてくるのかということにあった。ピッチの上に並ぶスターティングメンバーは、前節に京都を破った時と同じ11人。布陣も同じく4−2−3−1。そこからは高い位置から激しくボールにプレッシャーをかけようという意図が窺える。実際、吉沢英生監督も「基本的に高い位置からプレスをかけるという意図を持っていた」と話した。
しかし、試合は鳥取の思惑通りには運ばない。「意識してスピードを出して追っていたつもりだったが、そこから縦に入れられた時、坂田さんや、成岡さんに上手くてキープされてしまって、そこで取りきれなかったことが回されることにつながり、だんだん追えなくなってという悪循環につながってしまった」(奥山泰裕)。開始間もなく、前へ出られなくなった鳥取は、ブロックを敷いて相手を待ち受ける形で試合を進めるしかなくなってしまう。
さりとて、福岡が鳥取を圧倒していたのかというと、決してそうではない。自陣に下がった鳥取に対してセカンドボールを一方的に支配。成岡を起点にしてパスを回し、ボール支配率では大きく上回るものの、守から攻への切り替えのスピードが上がらず、緩急の変化がない単調なリズムでチャンスを演出できないままに時間を過ごした。試合は序盤から膠着状態に陥っていた。
そんな流れを、高橋泰と坂田大輔の2トップが変える。時間は27分。左サイドのキム ミンジェの突破から始まった攻撃は、右サイドを経由して中央の高橋へ。そして、相手DFに囲まれながらも粘った高橋が送ったラストパスが中央でフリーになっていた坂田へと届く。最後は、慌てて寄せる鳥取DFをワンフェイクでかわした坂田が左足を振り抜いた。「切り返して左足というのは、自分の得意な形。上手くGKとのタイミングを見ながら打てた」(坂田)。次の瞬間、鳥取のゴールネットが大きく揺れた。
この一発で攻撃のリズムを取り戻した福岡は、ここから鳥取を圧倒する。そして2点目を演出したのも高橋と坂田。右サイドから鳥取守備網を崩した福岡は、高橋が放ったシュートにゴール前へ詰めていた坂田が合わせた。
後半に入っても福岡の攻勢は変わらない。3点目はキックオフから20秒後。城後寿が右サイドから送った浮き球のラストパスに、末吉隼也が鮮やかなダイレクトボレーで合わせる。そして、とどめの4点目は、過去4試合を含めて、何度となく決定的なシーンを作り出してきた高橋が決める。城後のクロスがファーサイドに流れてきたところを、トップスピードに乗ったまま右足アウトサイドのボレーシュートで合わせた。高橋はこれが今シーズン初ゴール。開幕以来、キレのある動きと、特長であるゴールの嗅覚の鋭さを見せ続けている高橋の、これからのゴール量産を予感させる見事なゴールだった。
さて、鳥取を圧倒して5位に浮上した福岡。この試合では、ゴールを取り切る力がいかに大切かを改めて示した。その中心になったのが高橋、坂田の2人であることに疑いの余地はないが、ゴールにいたるまでのプレーに今シーズンの福岡の特長を見ることができる。1点目はミンジェの突破から始まって5人が絡んで奪ったゴール。そして2点目は6人。3点目も、中央に飛び込んできた成岡を合わせて5人でゴールを演出した。これは昨シーズンまでは多くは見られなかった形で、これこそが、リアクションサッカーからアクションサッカーへの転換を図る福岡が目指すものと言える。細かなところに目を移せば、当然のように解決すべき課題が存在する。しかし、チームを転換させながら、同時に勝利という結果を追い求める福岡にとっては、内容を積み上げた上で勝利したことに大きな意義があった。
そして敗れた鳥取は、残念ながら力の差を認めざるを得ない結果になった。だが、悔しがっている時間はない。Jリーグ昇格後2年目を迎えるチームにとって、今シーズンはチーム全体の底上げを図り、ジャンプアップを目指すことが大きな目標。一つひとつの課題と向き合いながら、その修正に向けての弛まない努力が求められている。「ホーム、アウェイに拘わらず応援してくださる皆さんに、1週間をかけて、これからも応援してもらえるようなチームを作り上げたい」とは試合後の吉澤監督の言葉。次節はホームに首位の湘南を迎えての試合になるが、その場所で、この日とは違った姿を見せたいところだ。
以上
2012.03.26 Reported by 中倉一志
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