周囲には雪が舞っていた札幌ドームで行われた試合は、札幌がセットプレーから先制するも、前半アディショナルタイム、後半中ごろと2つの得点を奪った浦和が逆転勝利。スコアは1点差でシュート数も11本対11本だったが、その内容に目を向ければアウェイの浦和が力の差を見せつけた試合だったと言っていい。
前半は互いの特徴が存分に出たゲームだった。アウェイの浦和は最後方から、時にはGKもビルドアップに加わって、パスをしっかりと動かして攻めていくスタイル。対する札幌は「個人の力では相手が上。こっちはチームとして戦う」と奈良竜樹が試合前に話していたように、チームとしての組織的なプレッシングと、そこからの素早いショートカウンターからチャンスを生み出すやり方だ。
浦和は3−4−2−1が基本フォーメーション。だが、マイボールになると守備的MFの阿部勇樹が最終ラインに下がり、センターバックと左右サイドMFが高い位置に張り出す。そして阿部を中心にショートパスをつないでジワリジワリとラインを押し上げたり、時には阿部や永田充からのロングキックで前線に起点を作っていく。
それに対して札幌は前線から素早くプレスを仕掛ける。2分に岡本賢明が相手の坪井慶介からボールを奪ってチャンスを作り、9分過ぎには奪ったボールを素早く縦に運び、オフサイドぎりぎりで飛び出した内村圭宏がGKを抜き去る惜しいチャンスを生み出した。
そうして互いの特徴が発揮されながら試合は進み、スコアが動いたのは32分。札幌が右CKからのサインプレーで山本真希が見事なミドルを叩き込んで先制点を奪ってみせた。特徴を出し、先制点も奪った。傍から見れば札幌が良い流れを得るかに思われたが、実際にはここから浦和が勢いを得ていくことになる。そしてその勢いを生み出したのは、やはりパスワークだった。
「序盤はいい形でプレスを仕掛けることができていた」と内村は言う。浦和がサイドにボールをつけた際には複数人で一気に囲みこむことができていた。しかし、プレーを重ねていくごとに浦和の最終ラインは前田俊介、内村のチェイスを巧みにかわしたり、左右に揺さぶることで翻弄していった。「途中から、サイドにボールを出されたときに、体力的にかなりしんどかった」と内村が言うように、浦和はゆっくりとボールを動かし、時にロングボールを織り交ぜながら札幌の消耗を誘っていったのである。そして前半アディショナルタイム、永田が一気に前線へフィードを蹴り、それを受けた平川忠亮が中央へ折り返すと、札幌守備陣のミスを突いた柏木陽介が悠々と同点ゴールを決めた。
後半に入ると、完全に浦和のゲームに。前半は孤立していたデスポトビッチも上手く攻撃に絡めるようになり、札幌のDFラインの裏を襲っていく。そうして相手ペナルティエリア周辺でのプレーが増えてきたところでFKを獲得し、これを再び柏木が綺麗に蹴り込んで逆転に成功する。
逆転を許した札幌はキリノ、榊翔太、大島秀夫と攻撃的な選手を高い位置に投入し、サイドからのクロスから得点機をうかがうも、ここも浦和の守備陣がシャットアウト。経験のある彼らは、多少守備のバランスが崩れても、個々が読みを生かして的確なポジションを常に取り続けた。札幌がパワフルに迫ってきても、それを簡単にフィジカルコンタクトでストップ。パスワークも安定していたが、それ以上に浦和は守備に力強さがあった。そして、タイムアップ。浦和が敵地で完勝し、勝点3を獲得している。
スコアは1−2ながらも浦和が力の差を見せた、と冒頭で記した。ただし、考察すべき部分も存在する。確かに札幌は浦和に力負けしたが、それでもやはり点差は1点。1点差というのは、ちょっとした工夫やアイデア、さらにはアクシデントでもあれば埋まる点差でもある。そして浦和側に立つと、逆転してからも追加点を奪うチャンスはいくつもあり、そこで得点していればもっと楽に試合を進めることができたはず。
札幌にしてみれば、完敗の内容ながらも現実的な視野に立てば勝点を得るチャンスは確かに存在したし、浦和にしてみれば、完勝の内容ながらも勝点を取りこぼす可能性が存在した。
アウェイチームが1点差ながらも完勝した試合だったが、その中で見えたものは、双方が持つさらなる伸びシロだ。リーグ戦はまだ、3節を終えたばかりである。
以上
2012.03.25 Reported by 斉藤宏則
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