シーズンはまだ4試合を終えたばかりだが、少しずつチームの色が数字にも表れ始めている。愛媛は前節の松本戦を3−0でシャットアウト。4試合中、2失点の甲府戦以外は3試合で完封しており、一昨年の「堅守」という色を取り戻しつつある状況だ。しかし、そのことは別の数字からもうかがえる。それは被シュート数の少なさだ。この4試合で愛媛が打たれたシュートは28本、1試合あたり7本でリーグ最小だ。シュートは打たなければゴールにならないが、裏を返せば打たせなければ失点はしない。「全体として相手に向かう守備に固執している」とバルバリッチ監督は表現するが、相手に前線からプレッシャーをかけることで簡単に前を向かせず、さらには高く保った最終ラインによって相手をゴールから遠ざけることが被シュート数、そして失点数の少なさにもつながっている。さらに言えば前節の松本戦後、バルバリッチ監督は「4人ではなく10人の働きに満足ができる」とチーム全体での守備を強調したが、試合によってはキャプテンの前野貴徳が抜けたり、センターバックの浦田延尚が抜けたりしても守備のクオリティが変わっていないことは、スタメン以外の選手も含めたチーム全体にしっかりと守備の意識が浸透している証拠だろう。
対する栃木も、2試合連続で完封中。新しいシーズンを迎えてメンバーが大きく入れ替わり、開幕から2戦はつまづいたものの、らしさを取り戻しつつある。前節の富山戦でもピンチらしいピンチはほとんどなく、安定した守備で90分を乗り切った。あとは前線のコンビネーション。新加入のFW棗佑喜はターゲットとして存在感を発揮していたが、今節は廣瀬浩二や高木和正、河原和寿ら他の前線の選手たちも交え、いかにして縦へのスピードを生み出せるかがポイントだろう。前節は途中から新戦力の菊岡拓朗もピッチに立って攻撃を組み立てたが、勝利に結びつけるためには愛媛のプレッシャーが緩んだ隙を逃さない、瞬発力が求められる。逆に愛媛としては今までどおり、シュートにつながるパスを断ち切る前線からのプレスを続けられるかがポイント。これまでと同じようにラフなボールを蹴らせて、セカンドボールを拾って攻撃につなげたい。
一方で愛媛はその攻撃面でも、前節は様々な収穫があった。先制点はボランチ村上巧のミドルシュートから。こぼれ球を石井謙伍が押し込み、チームのFWとして今季初ゴールを奪った。昨季まではなかなかスタメンの座をつかめなかった大山俊輔も開幕から攻撃の軸となって活躍し、前節は2アシスト。さらに途中出場の福田健二が、同じく途中出場の赤井秀一の2得点をお膳立て。多くの選手がしっかりと結果を出すことで、チーム内に刺激も生み出している。「今シーズンは前にボールを運べる回数が増えているし、いいボールを出せる選手が多い」と赤井は攻撃の手ごたえを語るが、彼を含め2列目がゴールに絡む回数が増えれば、いなくなった齋藤学の14得点も埋められるはず。これまでの4試合に関していえば、愛媛は攻撃に関しても昨シーズンからしっかりと上積みができていることを結果で示すことができている。
だからこそ、これから積み重ねていきたいのは結果。今節ホームに迎える栃木はJ1に向けて近い力関係にあるライバル。昨季は1勝1分だが、アウェイでは終了間際に逆転し、ホームでも終盤にゴールを奪い合ってドローに持ち込んでおり、毎試合僅差のせめぎあいが続いている相手だ。これまでの対戦成績を振り返っても2勝4分1敗と接戦を続ける両者。しかし、どちらのチームにとっても、今シーズンはそういう相手を蹴落とし、勝点3を積み重ねられるたくましさがなければJ1昇格への道は厳しいだろう。
以上
2012.03.24 Reported by 近藤義博
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