柏が昨シーズンのJリーグ王者にして、FIFAクラブワールドカップ4位ならば、全北現代もKリーグ王者で、AFCチャンピオンズリーグ準優勝のチームである。したがって互いにリスペクトの念を抱いていたのは言うまでもないが、この一戦への入り方は自分たちのサッカーを貫いた柏に対し、自分たちのやり方を変えた全北現代という異なる図式が成り立っていた。
「柏はパスが非常に速く、2人の外国人の技術も優れているため、守備的に入ろうと思った」とイ ヒョンシル監督が振り返ったように、従来の4−4−2ではなく、3−4−3のシステムを使い、5バック気味に試合を進めた全北現代。特に守備への切り替えが早く、自陣ではすぐさまカッチリとしたブロックを作り上げ、奪った後はエニーニョ、イ スンヒョン、キム ジョンウの3人がスピーディーでパワフルな攻撃を奏でた。
全北現代は、J1第2節で浦和が用いた柏対策からヒントを得たのかもしれないが、仮にそうであったのなら、柏は同じ轍は踏まないと言わんばかりに各選手の役割を明確にし、全北現代のシステムに慌てることなく対応していく。立ち上がりこそ緊迫感に満ちた慎重な試合は、「相手が得意である4−4−2から変えてくるということは、逆に言えば我々のことをリスペクトしている、精神的にも我々の方が上に立てる」(ネルシーニョ監督)という言葉を体現するかのように、柏のサイドアタックが機能し始め、そしてセットプレーのチャンスをモノにしてペースを掌握した。
左サイドでのフリーキック。「浦和戦でもセットプレーは多かったので、レアンドロとジョルジのキックの軌道を研究していた」と振り返る那須大亮が絶妙のタイミングでゴール前に入り、ヘッドでジョルジ ワグネルのキックの軌道を変え、サイドネットに突き刺す。40分の先制弾で均衡が破れると、柏は畳み掛けるような猛ラッシュで一気に点差を広げた。45分には相手のハンドで得たPKをレアンドロ ドミンゲスが冷静に決め、さらにその直後の前半アディショナルタイムにも橋本和のロングフィードをリカルド ロボが頭で落とし、DFラインの背後へ抜け出したレアンドロが技ありのループシュートでGKの頭上を射抜き、3−0と全北現代を引き離した。
後半、全北現代は「疲労を考えて休ませた」(イ ヒョンシル監督)というエースのイ ドングッを投入して、4−2−3−1の並びに変更。この屈強なFWにロングボールを当て、そのセカンドボールを2列目のアタッカーが狙うという意図は、その選手交代とシステム変更から容易に判断でき、柏の選手も十分に警戒していたはずだが、それをまんまと遂行してしまうあたりは、さすがは“グループH最強”と誉れ高き全北現代である。51分、イ スンヒョンのクロスをイ ドングッと橋本が競り合い、セカンドボールをファン ボーウェンが豪快に突き刺して3−1となった。
バランスを崩してまで攻撃の比重を高めることは、いわゆる「諸刃の剣」である。その分、柏には攻め入るスペースが生じ、カウンターを発動しやすい状況が生まれた。全北現代の反撃の1点が比較的早い時間帯だったため、レアンドロが前を向いて仕掛ける場面が増えた柏は4点目を奪って突き放したかったのだが、田中順也とリカルド ロボの2トップが好機を逸し続け、しかも76分のレアンドロのPK失敗と、そのセカンドボールをリカルド ロボが大きくふかした時は、正直嫌な流れを感じつつあった。全北現代には71分にイ スンヒョンがゴール前でフリーになり、80分にゴール正面のフリーキックからのルーズボールに複数人の選手が飛びこむなど点差を詰めるチャンスがあり、もしここで決められていれば流れは傾いたかもしれないが、柏は那須、増嶋竜也の決死の守備によって辛くも難を逃れた。
柏が試合を決定付けたのは試合終盤だった。89分と後半アディショナルタイムの93分に、ともにカウンターから田中と茨田陽生が決めて、5−1と突き放す。このスコアが示すほどの実力差は両者の間に存在していたとは思わないが、ACL初開催となった日立台で大勝を飾った。
ACL初戦を落とし、この試合を迎えるまで公式戦3試合で勝ち星がなかった柏にとっては間違いなく大きな1勝である。新戦力の那須はチームへのフィットを強く印象付け、復帰した栗澤僚一は相変わらず泥臭く相手を潰し、バイタルエリアで自由にプレーをさせない。ようやく攻守が噛み合い、柏らしい安定感が戻ってきたようにも思えた。先述したようにチャンスがありながら、4点目を奪うまでに時間を要した点は改善すべきポイントだが、「点を取れなかっただけで素晴らしいプレーを披露した」とネルシーニョ監督が評したように、リカルド ロボも片鱗を見せ始めている。残りのグループステージ4試合につなげることはもちろん、この良い流れを今度は週末のJリーグにも結び付けたい。
以上
2012.03.22 Reported by 鈴木潤
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