前節の甲府戦を終えて、愛媛に求められていたのはゴールがないFW陣の奮起、相手にペースを握られた時のゲーム運び、そして控え選手の台頭だった。その中で、愛媛は今節ホームの松本戦でその3点をひとつずつクリアすることで勝利に近づいた。さっそく、前半14分にはFWに今季初ゴールが生まれた。少しずつ愛媛がボールを保持し、リズムをつかむかに思われていた時間帯だった。中央からトミッチの縦パスでスイッチを入れると、右サイドを経由。ボランチの村上巧が放ったミドルシュートが松本のディフェンスに当たり、こぼれたところを石井謙伍が押し込んだ。
守備に自信を深めている愛媛にとっては、大きなアドバンテージになる先制点。「リードしたことで楽になった。そして、守備に集中することができた」とトミッチは振り返るが、そこから愛媛は前線からの積極的な守備、そしてラインを高くしてコンパクトさを保つことで持ち味を出しながら試合のリズムを作るとともに、攻撃に転じることができた。そのいい守備が、いい攻撃につながる。この日、愛媛のディフェンスラインには出場停止の浦田延尚に代わって関根永悟が起用されていた。これまではどちらかといえば左サイドに偏っていたサイド攻撃だが、この試合では右サイドで関根のスピードも生きた。前半28分には村上のロングフィードに反応。タッチラインぎりぎりでゴール前に折り返すなど、次々とチャンスに絡み始めた。すると、次第に松本の両サイドハーフがディフェンスラインに吸収されて5バックになる時間帯も長くなり、そのことによって愛媛がより高い位置をとることができた。
その中で、前半の松本はフリーキックが反撃のきっかけになっていた。度々、右サイドでフリーキックのチャンスを得ると、楠瀬章仁の左足から放り込まれる巻いたキックが愛媛の守備を揺さぶった。特に前半19分には、GK秋元陽太がはじいたこぼれ球を拾ってシュートにつなげるなど、愛媛のゴールに迫ることはできた。ただ、愛媛はこのセットプレーでも集中を切らさず、体を張って防ぎ続けた。「最終ラインだけでディフェンスをするのではないし、4人ではなく10人の働きに満足ができる」とバルバリッチ監督はチーム全体での守備を強調。松本は後半にエイジソンの投入などで反撃を試みたが、ここでも愛媛は全員が守備での集中を切らすことなく対応を続け、奪われかけた流れをもう一度呼び込んだ。
その流れを呼び込む意味では、バルバリッチ監督の采配も冴えた。終盤、疲れが見えたFW小笠原侑生に代えて、MF赤井秀一を投入。MF大山俊輔を前線に置くことで、攻撃の起点を作った。さらに、高さのある福田健二を投入。結果的にはこの3人で、愛媛は試合を決定付ける2得点を奪った。後半35分の追加点は、ロングボールを福田が頭で落とし、大山が2列目から飛び出してきた赤井にラストパス。赤井が冷静にGKの脇を抜いてゴールネットを揺らした。その5分後には、左サイドのスローインを福田が落とし、大山がファーサイドに絶妙のクロス。飛び込んだ赤井が角度のないところから押し込み、途中出場の2人の活躍によって勝負を決めた。
試合後、反町康治監督からは「完敗だった」「顔を洗って出直さないと」と反省の弁が続いたが、試合を振り返れば3-0という得点差が生まれる展開でもなかった。ただ、この試合に関してはチームとしての完成度の差が際立った結果。目標をひとつずつクリアしながら、愛媛がしっかりと自分たちのスタイルを前面に出せるようになったからこそ生まれた結果だろう。これで愛媛は4戦中、3試合で完封。チームの色を明確に出しながら、次は3連戦の勝ち越しをかけてホームに栃木を迎える(3/25@ニンスタ)。
以上
2012.03.21 Reported by 近藤義博
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