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【ヤマザキナビスコカップ 大宮 vs 横浜FM】レポート:天は自ら助くる者を助く。劣勢にもがき続けた横浜FMが、勝ち試合のムードに浸った大宮から勝点2を削る(12.03.21)

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勝てる試合だった。いや、大宮にとっては勝たなければいけない内容だった。かつて2008年に大宮を率いた敵将・樋口靖洋監督が試合後の会見で「最低の内容」と、申しわけなさそうに顔をしかめたほどに、横浜FMは何もできていなかった。大宮は80分近くを圧倒的に支配しながら、自ら勝利者たる権利を手放して勝点1に終わった。

横浜FMの出来は開始から良くなかった。大宮の浅いラインの裏へロングボールを蹴ってくることは事前に大宮も読んでいて、前日練習でも「ロングボールの対策をしっかり確認」(金澤慎)していた。大宮はセカンドボールへの集中も高く、逆に「向こうは切り替えとか、守備の戻りも遅いということだったので、カウンターをねらっていた」(渡部大輔)。14分の先制点は、カルリーニョスが中盤の底で素早い反転から右足で小林祐三の裏のスペースに送り、ラファエルのクロスに逆サイドから渡邉大剛がゴール前に飛び込んでつぶれ、長い距離を走ってきたカルリーニョスがゴールへ流し込んだ。
横浜FMは指揮官が振り返る通り、「ピッチに躍動感がまったくなく、チームとしての一体感もなかった」。20分過ぎ、兵藤慎剛を右MFに上げ、中村俊輔をボランチに下げて打開を図る。そのポジション変更に加え、もう1枚のボランチ谷口博之に最終ラインをケアさせ、両サイドMFを中に絞り気味にし、両サイドバックを高い位置に張り出させた。勇ましい戦術変更ではあったが、メリットよりも残念ながらデメリットが目立った。
確かに中村からの縦パスも入るようになったが、そこに連動して動き出す選手はおらず、つぶされては手薄な守備を大宮のカウンターに急襲された。21分にはラファエルのクロスにチョ ヨンチョルが飛び込む。32分、カウンターからペナルティエリア内でラファエルの落としを走り込んできた渡部大輔がシュート。44分のチョ ヨンチョルからスルーパスでラファエルがGKと1対1。大宮はこれらの決定機を決めていれば、前半のうちに試合を決めることもできたはずだ。

後半の頭から横浜FMは、ゲームにあまり参加できていなかった大黒将志と狩野健太を下げ、小野裕二と松本怜を投入する。しかし、前線に人数が張り付くがボールを引き出す動きはなく、ボールが入っても連動性はなかった。ドリブルで突っかけ、あるいは無理なパスを通そうとしては奪われ、カウンターのピンチを招いた。前半同様、何度も大宮はチャンスを作った。最大のものは70分、渡邉から横浜FM最終ラインの裏へのロングフィードにチョ ヨンチョルが抜け出してGKと1対1になったが、ループ気味のシュートはゴール右に逸れていった。
完全に勝ち試合のムードがNACK5スタジアム大宮を支配していった。相手は前線に人数をかけるが単発で突っ込んできてはボールを失う繰り返しで、ブロックを作って守っていれば10分に1回のペースで決定機が訪れる状況では当然かもしれない。が、少なくともピッチ上の選手がそのムードに浸るべきではなかった。カウンターから数的優位を保ったまま相手ゴール前まで迫り、シュートもラストパスもできるのに、スピードダウンしてボールを下げる。攻撃参加したサイドバックが1対1の仕掛けに勝ってクロスを送っているのに、ペナルティエリア付近にいた3人がだれもエリア内に飛び込まない。「守備では集中していたが、全体的に(集中が)切れていた」と渡部大輔が語るように、たかだか1点のリードの過ぎないのだがまるで3点差でもあるかのように、ボールを奪ってからの大宮には緩みが感じられるようになった。

そして77分、「疲れている選手を代えたかったのと、リーグ戦につなげるためになかなかゲームに関われていない選手を使うため」(鈴木監督)ラファエルとチョを下げたことで、大宮は前線の起点とカウンターの迫力も失った。リーグ戦が何より優先という考え方も理解できるので、その是非は問わないし、代わったメンバーが思ったほど機能しなかったという誤算もあっただろうが、ともかく指揮官はまだ勝負が決まっていない段階で、目の前の試合よりもその先を考えた。少なくとも、この試合を守りきるためでも、緩んだ空気を引き締めるための采配でもなかった。
対して横浜FMは、細かくポジションやボールの動かし方を変えたり、少なくとも純粋にこの試合に勝つための努力を、功を奏していたとは言い難いながらも続けていた。そして前線のタレント2人がいなくなった上に、疲労もあって足が止まり始めた大宮を、横浜FMが押し込み始める。80分ごろからはセンターバックの栗原勇蔵とボランチの谷口博之を前線に上げ、途中出場の松本怜に代えてセンターバックの富澤清太郎を投入する非情采配まで見せるが、その執念が同点ゴールに結びついた。北野貴之の頭上を越えてファーポストの上隅をとらえた齋藤学のシュートも見事だったが、前線に栗原と谷口がいたために、GKとしてはポジショニング、反応ともにまずはクロスを警戒せざるを得なかったのだ。

天は自ら助くる者を助く。齋藤の同点シュートはなかなかねらって決まるようなものではなかったが、それは劣勢の中で諦めず1点を取るためもがき続けた横浜FMへのご褒美であると同時に、早々と勝負をセルフジャッジしてしまった大宮への罰でもあったように思える。ただし同点に追いついたとはいえ、「全然ダメだった。一人の問題じゃなく、チーム全体の問題」(谷口)と、横浜FMに笑顔はなかった。リーグ戦でもいまだ勝利は遠く、どう立て直すか、シーズン開幕から3試合で早くも試練を迎えている。
一方の大宮も、監督も選手も口々に語るように「チャンスに決めていれば勝てた」のは確かだが、なぜ数多くのチャンスをモノにできなかったのか、そもそも点を取ることに執着できていたのか、そこを見つめ直すべきだろう。その根本のところが、毎年の残留争いから抜け出せない理由である気がしてならない。
試合後、この日最も戦う気持ちを前面に出してプレーしたカルリーニョスは、自らの大宮加入後初ゴールを祝う会見で、勝ちきれなかった不甲斐なさから涙を流した。この悔しさを、すべての選手が等しく感じていると信じたい。昨年はホームで2勝しか挙げられなかったぶん、今年はホームでたくさんの勝利をプレゼントするのではなかったか。カップ戦の初戦というエクスキューズはあるにせよ、プロとしてサポーターの前で戦う以上、真摯に、貪欲に、勝利を目指し戦う姿を見せてほしいと思う。

以上

2012.03.21 Reported by 芥川和久
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