もしかしたら、明日から始まるナビスコカップ第1節のなかで、最も注目を集めるのはこのカードかもしれない。ジョルジーニョ新監督を迎えながらリーグ戦は2連敗からのスタートとなり目下最下位に沈む鹿島は、このオフに田代有三・野沢拓也を引き抜かれた神戸を迎え撃つ。さらに、昨季夏まで鹿島に在籍していた伊野波雅彦や羽田憲司を含めると元鹿島の選手が4人もおり、まさに因縁の相手と言えるだろう。今季、最も勝利したい相手のひとつだ。
しかしながら、前述したように鹿島のチーム状態は決して良くない。いまだ公式戦は無得点。今季からの目玉になると思われたダイヤモンド型の中盤もバランスの悪さを考慮して、従来のボックス型に変更されたがそれでも結果は出ず、苦しい状況が続いている。
ただ、そこは経験豊富なベテラン選手の揃う鹿島。小笠原満男は自らの役割を十分に理解していた。
「ネガティブになって、怖がってしまうのが一番良くない。戦う気持ちと自信を持っていけるようにしないと。それはオレらがやらないといけないところ」
実際、練習でも大迫勇也にアドバイスを送る姿が見られるなど、積極的に若い選手たちとコミュニケーションを取り、結果が出ない状況に萎縮するのではなく、本来の力を発揮できるよう細かな配慮を見せていた。
ただし、対戦相手の神戸は野沢拓也や橋本英郎などの移籍組がさっそく能力を発揮し、リーグ戦では2連勝と波に乗る。もしかしたら中二日という厳しい日程で迎えるアウェイ戦ということで、メンバーを変えてくる可能性もあり、何人かの選手とは古巣対決が実現しないかもしれない。
しかし、鹿島の選手たちは、「もし対戦したら」という仮定で尋ねると目を爛々と輝かせて答えてくれた。中盤で野沢拓也とマッチアップする可能性の高い増田誓志は「前を向かせたくない。厳しくいきたいです」と話し、抜群の精度を誇るセットプレーを跳ね返すであろう岩政大樹は「彼のボールの軌道はよく知っている。間違えて自分のゴールに決めないようにしないといけないですが、軌道を知っているということはアドバンテージだと思う」と意気込み、伊野波雅彦のマークを受けるかもしれない大迫勇也は「とりあえず勝つ」と語気を強めていた。
チームの形は未完成ながら、ここまでの結果が好対照な両チーム。豊富なタレントを有することになった神戸がどのような選手起用を見せるのか楽しみだが、鹿島としては中二日という日程を考慮するよりまずは勝利を求めたいところ。
「どの大会とかは関係ない。応援してくれる人に勝利を届けたいというのは変わらない」
いまだに歓喜を届けられていないことを小笠原は心から悔いていた。もう負けは許されない。
以上
2012.03.19 Reported by 田中滋
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