共に連勝をかけた一戦は、京都が21本のシュート数という爆発力を見せ、熊本に競り勝った。
京都が軽い怪我を負った福村貴幸に代わり黄大城(ファンテソン)を今季初先発させたゲームは、互いにどっち付かずのスタートに。熊本が早めに前線にボールを送り、そのこぼれ球を積極的に狙うのに対し、京都はファールを犯す、或いはタッチに逃れるという対応で、リズムのあるサッカーにはならなかった。それ以上に、試合後、大木武監督も指摘した様に「ボールの前にいる選手が受けに入らなかった」ことで、京都は攻撃のリズムが単調になった。ただ、前半10分に中村充孝が裏でパスを引き出し、シュートまで持ち込んだ様に、単発ではあるが打開策を探る。
スコアが動いたのは32分。左サイドの裏に抜けた中山博貴がマイナスに送り、宮吉拓実が放ったシュートから得た左CK。こぼれ球を黄が左へ送り、そのまま裏へ走り抜け、ボールを受けると矢の様なクロスを中央へ。待ち受けるのは久保裕也と宮吉。これを宮吉がダイレクトで押込み京都先制。宮吉の今季初得点は、黄の初出場初アシストによるものだった。
後半に入ると、京都がテンポアップ。熊本に対し、攻撃の起点を作らせない速いディフェンスを敢行し流れを掴んだ。その状況の中で後半15分、ボールを奪うと、右サイドをドリブルする久保から、さらに外を駆け上がった安藤淳へ渡ると、安藤が中央フリーの中山博貴へ。これを中山がダイレクトボレーで豪快に叩きこみ2−0。その後も、素早い守備から前線へボールを送り込み、後半だけで15本のシュートを放ち、相手ゴールへと迫った。結局、2−0のままタイムアップ。京都がホームの連戦を連勝で飾った。
試合後、熊本の高木琢也監督は、対京都についてサイドの崩しに言及した。人をかけて崩すか、早めに入れるかという判断部分で、サイドを崩せば中の人数が少なくなる。早めに入れればセカンドボールを狙わなければ京都の速攻に入られる。どちらを強調すべきかというバランスについては難しい問題だったと感じている様に観えた。ただ、京都の最終ラインへのプレスでは、中盤へのパスコースを切り、GKへバックパスさせる様な形を何度も作り出し、迫力はあった。逆に京都としては反省点になるだろう。
対して京都。大木監督は、前半の戦い方で反省点を挙げた。ボールの受け手側の拙さで、攻撃に納得がいかないということだった。ただ、例えば中村充孝がボールの受け手ではなく、出し手側に回ることで、もっとスムーズに人とボールが回る様にしようとしたという印象もあり、選手が自ら状況改善の判断をしようとした跡も観え、そこは認めても良いのではとも思った。そして、後半は守備のテンポアップで大きな改善があり、これが熊本のリズムを崩し、京都が流れを呼んだ。前半の選手の状況判断は、戦術理解の浸透度の表れとなるだろう。つまり、「京都のサッカーを上手く表現する為にはどういうことをしなければならないか」ということを選手が理解出来ているから、アクションが起こせたということだ。逆に、後半の守備の改善は「選手が、やるべきことをやる」という部分で再認識した、ということである。
練習の様に試合で自分たちのサッカーを表現出来ない時、「上手くいくように、状況判断してアクションを起こす」のと、「やらなければならないことを責任持ってやる」という二つで、今節は改善できたのだろう。選手ら自ら「今、必要なのはこういうことではないか」という、積極的なサッカーへの関与を感じられたのは、大きなことではないかと思う。「京都のサッカー」は、大木監督のイメージするサッカーが柱ではあるが、自分たちからも「京都のサッカー」を色付けしていく。そんな方向性を持って来ている様に感じさせた試合だった。
以上
2012.03.18 Reported by 武田賢宗
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