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ローマは一日にして成らず。浦和は開幕戦で広島と対戦したが、“先輩”との違いを痛感させられる内容だった。同じスタイルを志向しているだけにクオリティーの差がはっきりと浮かび上がる結果となった。
だが、それも当然だ。浦和が新たなスタイルに挑戦し始めてからまだ数カ月しか経っていない。一方の広島には積み重ねてきた６年間という歳月がある。成熟度で彼我の差が出たのは当たり前であり、そう簡単に習得できるほど単純なスタイルでもない。
「この対戦は少し（我々にとっては）早い段階だったと思う」とペトロヴィッチ監督は語っていたが、スタイルが同じチームがぶつかれば完成度の違い、細部のクオリティーの差が浮き彫りになりやすい。そして、それがそのまま結果に反映されやすくもなる。広島との対決は時期尚早だったという指揮官の気持ちは理解できる。

ただ、早い時期に広島とぶつかったことは悪いことばかりでもない。同じようなビジョンを描くチームとがっぷり四つに組んだことで何をすればいいのか、どうすれば機能するのかということを身をもって学んだ。
「開幕で自分たちが目指しているサッカーをするチームと対戦してうまいと思ったし、差を感じたけど、最初に広島と戦えてよかった。目指すサッカーに負けたことで、伸びしろを感じられたのは収穫だった」。山田直輝が言うように、進むべき道を先に歩んでいる広島に手本を見せてもらえたことは今後の成長を促進させるはず。苦い思いはしたが、今は“いい稽古をつけてもらった”と捉えたい。この借りは次の機会に返す。

その広島よりもはるかにやっかいなのは、ホーム開幕戦の相手となる柏だ。ポゼッションサッカーをする上で一番気をつけないといけないのはカウンターへのケアだが、柏はカウンターが非常に強い。まだまだ改善の余地がある現状のパスワークでは、柏に強烈なカウンターを浴びせられる可能性は低くない。

一番の問題はレアンドロ ドミンゲスにどうやって対応するか。特に気をつけるべきは柏が守りに回った際のレアンドロのポジショニング。レアンドロは目の前の敵には寄せにはいくが、自分のラインを越えられたら深追いはしない。守備のタスクを必要以上に負わず、中途半端なポジションで「浮く」ことで、攻守が切り替わった際にはいち早くフリーでボールを受けられる体勢を作る。柏はそこを基点としたカウンターアタックを非常に得意としており、レアンドロをフリーにすれば高い確率で痛い目を見る。開幕戦で柏と対戦した横浜FMもレアンドロに泣かされていた。

浦和が今のシステムで通常通りに戦うならば、どうしてもレアンドロのマークは外れやすくなる。「FUJI XEROX SUPER CUP 2012」で柏と対戦したF東京は、攻守に渡るシステマチックなラインコントロールでスペースを圧縮し、可能な限りレアンドロにスペースを与えないという戦い方でうまく対応していたが、浦和は通常そういった守備のやり方はしていない。

基本的にリトリートして守るため、攻守が切り替わった際にレアンドロの対応に間に合わない場面はおそらく出てくる。左サイドでレアンドロと酒井宏樹に２対１の数的不利な状況を作られるケースもあるだろう。浦和としては、攻め込んでいる時でも常に柏の背番号10のことは気にかけていないと危険だ。

さらに大変なことに、逆サイドにも要注意人物がいる。ジョルジ ワグネルもポジション取りがうまく、フリーにすると危ない選手だ。特に、ちょっとでも時間を与えるとすかさず狙ってくる左足の一撃は非常に脅威。今季は早くもF東京が「ワグネル砲」の餌食となったが、浦和にも彼の左足には嫌な思い出がある。

浦和は攻撃に人数をかけて攻める以上、「あれはもうしょうがない」とある程度割り切って戦わなければいけない局面もあるだろうが、中途半端なプレーでチャンスをプレゼントするようなことは避けなければいけない。

ミハイロヴィッチ監督も彼らのことは強く警戒している。相手に合わせることよりも自分たちのスタイルを貫くことで知られる指揮官だが、今週は柏を意識した練習も行っていた。「レアンドロとワグネルのことはミーティングでも練習でも言っていた。ペトロヴィッチ監督は自分のサッカーのことを考えるので珍しい」とは恩師をよく知る槙野智章。その成果が表れることを期待したい。

ホームで行われた昨季最終節では、目の前で優勝の歓喜を見せつけられて悔しい思いをした。「あの時の借りを返したい。ここでリベンジしたい」（濱田水輝）

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2012.03.16 Reported by 神谷正明