まだ、開幕から2試合が終わっただけに過ぎない。たかが2連敗。大袈裟に騒ぎ立てる必要はないのかもしれない。パウリーニョ、菊岡拓朗、本橋卓巳と主力が戦線に復帰していない。今季一度もベストメンバーを組めていない。救いはある。言い訳もできる。でも、スタートからピッチに立った選手が危機感を抱かなければ事態は大幅に改善されない。きっと次の試合も同じことが繰り返される。目の前の試合に懸ける思いに、選手間で温度差を感じずにはいられない。
気持ちの切り替えも大切だ。だが、失点は3つともミス絡みである。今回ばかりは、「ひとりひとりが今日の試合を振り返り、しっかりと反省しないといけない」(高木和正)。とことん自分と向き合うべきだ。
「今日の反省から学ばないといけない。監督が自分の責任だと言っているけど、プレーするのは選手なんだから。この敗戦から学べたら高い勉強代を払った意味がある。もう自滅は繰り返せない」
廣瀬浩二は現状の危うさを、そう指摘した。例えばミスを減らすために指揮官は精神的な部分への働きかけは出来る。しかし、プロである以上そこは選手個々人に委ねられる。1失点目の狭い局面でのミスも、2失点目と3失点目の集中力の欠如に起因するミスも減らせるはずだ。前節の甲府戦の敗因も自分達のミスからだった。2戦続けて自ら墓穴を掘って苦杯を舐めた。相手の攻撃が素晴らしければ諦めもつく。だが、実際には与えなくてもいいゴールを許している。後悔は消えない。
「サッカーはミスが起こる。いかにミスを減らすかが大事。うちの戦術は崩されて失点することがほとんどない。失点はミスからが多い。悪い時間帯こそ集中しないといけない」
堅守で鳴るからこそ自滅がたまらなく悔しい。高木はそう感じている。
今こそ原点に立ち返るべきだ。クラブの連続無失点記録を作った時、合言葉は「5分間集中」だった。守備からリズムを作るチームが、甲府戦も大分戦も前半に失点を食らっているようでは勝機をたぐるのは難しい。とにかく無失点に抑える。そこから始めるべきだ。
「『奪われたらまず早く切り替えなさい』と伝えた」(田坂和昭監督)
栃木とは対照的に3発で快勝した大分は、前節の草津戦の反省をしっかりと反映できた。序盤から出足鋭く栃木に襲い掛かり、先制点も失ったボールを高い位置で奪い返してから森島康仁が叩き出した。後半にも駄目押しの一撃を頭で決めた森島は言う。
「開幕戦の負けがいい糧になった」
前節は後に重心をかけ過ぎたために、両ウイングバックがDFラインに吸収され5バックになった。そのために相手にボールを支配された。栃木戦では石神直哉も三平和司も高い位置でプレーし、サイドから脅威を与え続けた。また、ボールも人も動かなかった状況から、アグレッシブにスペースを見出してはボールを受けてはさばき、リズム良くパスを繋いで試合を組み立てられた。攻守にアグレッシブだったからこそ、「開幕戦よりも良いサッカーが出来た」と、宮沢正史は充実感を口にした。3ゴールも無失点も若いチームを成長させるには、またとない薬となるはずだ。
栃木は次節、開幕2連勝で首位に立った徳島と対戦する。昨季は開幕からの勢いが連敗で途絶えそうな崖っ縁の状況で激突し、4―0と圧勝で息を吹き返すきっかけを作ることが出来た。勝因は危機意識の共有。大分・田坂監督は、「『もう明日サッカーができない』と思うくらいの気持ちで戦え」と、選手を焚きつけたそうだ。松田監督も同じようにモチベーションを高める作業をするはずだが、結局は選手ひとりひとりが自分で自分を駆り立てて戦場に向かえるかがポイントになる。勝点3を貪欲に狙える11人が徳島戦のピッチには立っていて欲しい。
以上
2012.03.12 Reported by 大塚秀毅
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