12月29日(木) 第91回天皇杯 準決勝
横浜FM 2 - 4 京都 (15:03/国立/14,467人)
得点者:42' 渡邉千真(横浜FM)、50' 工藤浩平(京都)、72' ドゥトラ(京都)、90'+5 大黒将志(横浜FM)、116' 久保裕也(京都)、120' 駒井善成(京都)
★第91回天皇杯特集
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決勝進出! 劇的勝利を象徴する4発の花火。京都が元日決戦の挑戦権を手に入れた!
アディショナルタイム5分、まさかの同点で延長突入。しかし大木武監督は動じなかった。「選手はその気でしたね。選手にはそれだけのタフさがあった。確信はありましたね」。
それは現実となる。18歳・久保裕也、そして19歳・駒井善成というアカデミー出身組の決勝点とダメ押し弾。延長になったからこそ起きた劇的勝利。120分の激闘だからこそ、これを戦い抜いて京都は、更なる強さを身にまとえるのではないだろうか。
この試合、京都は出場停止のチョン・ウヨンの位置に加藤弘堅を配置。前半序盤から、横浜FMに押込まれる。「ウチが悪いというよりもF・マリノスの2トップが良かった」と大木監督が語るように横浜FMの前線が京都の最終ラインを押し込んだ。
ただ、これは相手前線2人の巧さもさることながら、中盤の、特に中村俊輔の巧さも際立っていたことも大いに関係があるだろう。例えば4回戦・鹿島戦。興梠慎三と大迫勇也の動き出しに京都は最初、後手を踏んでいたが、京都の前線、中盤のプレスが効くようになると鹿島の前線へのボールが単調になり、最後は鹿島攻撃陣の威力を半減させていたように見えた。
だが今回、中村俊は京都のプレスにも慌てず、確実に前に、時には逆サイドにと、丁寧に味方にボールを配っていた。プレスをものともしない中村俊のテクニックと、そこに全幅の信頼を置く横浜FM攻撃陣。力がある、という印象を与えた。
しかし京都も次第に攻撃がかみ合い出す。前半25分に右からのクロスに中山博貴がボレーシュートを放つと、そこから怒涛の攻撃を見せる。32分には工藤浩平から宮吉拓実がシュートを放ち、そのこぼれをドゥトラが詰める。37分には中村充孝がドゥトラとのパス交換でフィニッシュに持ち込むと、そこから得たCKで秋本倫孝の頭。さらに攻撃が続いて右からのクロスのこぼれ球をシュートしたがバー直撃。さらにこぼれたのを加藤が拾いシュートしたが、今度はポストに弾かれる。京都の立て続けのフィニッシュに得点の予感が漂う。
しかし42分。一瞬の隙を突かれ、中村俊から、ディフェンスの間に入った渡邉千真に送られ、GKもかわされ流し込まれ、横浜FMに先制を許してしまう。
前半は流れを掴んでも決め切れなかった京都だが、嫌な雰囲気はなく、後半はさらにボールへの出足を良くし流れを掴む。そして後半5分、ドゥトラが工藤にボールを落とすと、そのまま工藤がドリブルに入る。それを宮吉がクロスするように走り抜けると、横浜FMのディフェンス陣に一瞬の隙が生まれる。そこを見逃さず工藤がエリアの外から左足でシュート! これが見事ゴール右隅に吸い込まれる。後半早くも京都同点!
さらに、後半27分。ドゥトラがドリブルで仕掛け、FKを得る。ゴール正面やや右の位置。キッカーはドゥトラ。その右足から放たれたボールは壁を越えて同サイドのゴールポストをすり抜けて横浜FMゴールへ。京都、ドゥトラのゴールで2−1の逆転に成功する。
その後は横浜FMの攻撃を粘り強く跳ね返す京都。途中、DFが胸トラップした拍子に腕に当たる疑惑のシーンがあったが、審判の判定はノーファウル。
そして、アディショナルタイム4分も過ぎ、残り1プレーという場面。中村俊のクロスを跳ね返したところに中澤佑二にシュートを打たれると、そのこぼれ球を途中出場の大黒将志に決められ、京都は終了間際に同点に追い付かれた。
延長。互いにチャンスを作る中、京都はドゥトラに代えて、「(得点を取ることについては)数段上」(大木監督)という久保裕也を投入。勝負に出る。
延長後半11分、その期待が現実に。中盤で、工藤がボールを落ち着かすと、その瞬間に久保が相手DFの間に入る。工藤がそれを見逃さずスペースへ。前を向いた久保はDFを遠ざけるように、外に向かって斜めへドリブル。ペナルティーエリアに入ると、GKが飛び出してくる瞬間、逆サイドのゴールネットへ。これが見事に決まり、とうとう京都が横浜FMに勝ち越した。
さらに終了間際の延長後半15分。京都のクリアボールを右のタッチライン際で拾った久保が一気に持ち込むと、詰めてきたDFをすり抜けるように中央へボールを送る。するとそこにはゴール前に詰めていた駒井善成。これを確実に流し込み4−2と横浜FMを突き放した。
そしてタイムアップ。京都が2002年の日本一以来、元日決戦の切符を手中にした。
本当にタフなゲームだった。そして、そのゲームを制した京都の選手たちを何よりも称えたい。
終了後、安藤淳が素晴らしいコメントを残してくれた。ファウルが多くてリズムが作りにくかった点を指摘された時、彼は「裏を返せば、僕らがボールにプレッシャーをかけに行っているということにもなる」と答えてくれた。この前向きな思考、これでいいのではないか。ここまで来たのだから自分たちのやっていることをとことん信じた方が良い。点を取りに行って点が取れた、勝利もした。これが全てだろう。
勝利を信じること。これが全ての扉を開くはずだ。中2日というと、必ずコンディション面が不安視される。だが、「自分たちのサッカーで点が取れる」、「このやり方で絶対勝てる」と心の底から信じられれば走り出せるし、足は前に出るはず。勝利を信じること、つまりは絶対的な自信を持つこと。最後1試合、迷いも曇りもない、そんな晴れがましい姿の京都の選手がピッチに立つことに、大いに期待したい。
以上
2011.12.30 Reported by 武田賢宗
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