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【2011 Jユースカップ 決勝 名古屋 vs C大阪】レポート:初優勝を掛けた攻撃的チームの対決を制したのは名古屋。喜び爆発でJユースカップを5回掲げた選手たちが、トップも育成も『強い名古屋』の新時代を開拓する。(11.12.26)

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12月25日(日) 2011 Jユースカップ 決勝
名古屋 2 - 1 C大阪 (13:00/金鳥スタ/3,152人)
得点者:34' 北川 柊斗(名古屋)、39' 高原 幹(名古屋)、45'+1 風間 健治(C大阪)
★2011 Jユースカップ特集
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「おーーーーーーー」で溜めて、溜めて、「うぇーーぃ」で一気にJユースカップを頭上に持ち上げる。去年までは長居スタジアムのピッチでJユースカップが授与されていたが、金鳥スタジアムに会場を変えた今年は、ヤマザキナビスコカップや天皇杯の優勝・準優勝チームが国立競技場で表彰されるのと同様に、メインスタンドの中央で選手がメダルを授与され、最後にJユースカップがキャプテンに手渡された。嬉しい気持ちの爆発が止まらない名古屋には、「おーーー」、「うぇーぃ」でJユースカップを掲げたい選手が何人もいたようで結局5回もやった。数ではC大阪に圧倒された名古屋サポーターも表彰式では選手がやろうとするだけ、「おーーー」、「うぇーぃ」に付き合って優勝を楽しんだ。みんな楽しそうで、「たかーだマイク、たかーだマイク」とコールして、今や名古屋育成の寵児・高田哲也監督にマイクパフォーマンスをリクエスト。佑ちゃんならぬ哲ちゃん(本当のニックネームは哲さん)・高田監督も「俺、持ってます」なんて言ってサポーターを盛り上げた。
「前半は最悪0−0でもいいと思っていた。でも、選手に気持ちが入っていて抑えが効かないくらいだった。Jユースカップ2回戦の神戸戦、準々決勝の柏戦と試合ごとに伸びて、これまでは厳しく行けなかった部分で行けるようになって準決勝で広島に勝って、決勝でも守備が安定して攻撃に繋がった」と、高田監督は選手の能力を存分に引き出して優勝につなげた。

時代の流れは凄いもので、Jリーグが開幕した93年に生まれた選手が今年のJユースカップの主力・高校3年生。その年にはまだ生まれておらず、C大阪と柏が加盟した95年生まれの1年生北川柊斗(名古屋)はJユースカップ初優勝だったことを知らず、「1回くらい優勝していると思っていました。先輩に聞かされてビックリしました」という。もしかすると名古屋にリネカーがいたことも知らないかもしれないし、リネカーの存在自体も知らないかもしれない。三重県出身の北川は名古屋U15の練習会に小学生の時に参加し、そこでレベルの差を感じて名古屋U15入りを決断した選手。昨年U15では高円宮杯優勝、今年はJユースカップ優勝で、トップも昨年は優勝、今年は2位。彼にとって「名古屋はトップも育成も強い」といいう印象が「強い」のかもしれない。昔からJリーグを見ている人はここ数年のことと思っているのではないかと思うが、彼のような世代が「名古屋は強い」という誇りを背負って成長し、名古屋の新時代を創っていくのだろう。「ユースのうちにトップで試合に出て、得点王を取れる選手になりたい」と言うことはデカイ。大物選手を獲得して強くなってきた名古屋だが、これからは育成選手のブレイクスルーという楽しみも加わった。

名古屋グランパスU18は、守備のスタートポジションは4−4−2だが、攻撃になるとツートップが縦の関係になって4−2−3−1になる。対するセレッソ大阪U-18は、ボランチの2枚が出場停止とケガのため不在で、4−4−2ではなく、ワンボランチ(サイド2枚、ツーシャドー、ワントップ)の4−3−3気味のスタートポジションだった。しかし、記者席からはチームメイトも間違うほど似ている双子の西村兄弟(洋亮、拓馬)のダブルボランチに見え、「兄弟ボランチだ」なんて思って見ていた。大熊裕司監督によると「(ツーシャドーの)南野が上がるから(西村)拓馬が気を利かせて降りてきたからダブルボランチのように見えたかもしれないですね」ということだったが、意図した攻撃力を発揮することはならなかったようだ。それでも序盤は、お互いに自陣のバイタルエリアではミスをしないからシュートシーンが少なくても質の高い内容で、C大阪がやや優勢な時間帯も短くはなかった。ただ、トップの風間健治と南野のコンビネーションが爆発した準決勝・清水戦(5−1)のような場面はなかった。これはシステム云々の問題はなく、名古屋がC大阪以上に素晴らしかったからではないだろうか。

試合ごとに結果が自信の積み重ねに繋がっている名古屋。北川と森勇人の16歳同士のコンビネーションが効いているだけでなく、サイドの高原幹と都竹俊優も前を向いてボールを持てるだけでなく積極的に仕掛ける選手で、高田監督が「前で起点になる選手が多いし、攻撃で時間を作ってくれるから楽」と言うほど。ボールにプレッシャーを掛けられても名古屋の選手は簡単には失わないから、その時間で2列目から空いたスペースに誰かが飛び込む。そこにちゃんとパスも出るからC大阪のディフェンダーは相当苦労したと思う。組織的に追い込めない。完璧なゾーンディフェンスができるチームでないとテクニシャンが揃う名古屋の攻撃を押さえ込むことは難しい。34分の先制点もC大阪の守備がボールにかかりっきりになったところでサイドバックの加藤翼を使って、彼が右サイドから入れたクロスがゴール前の混戦を経て北川のゴールに繋がった。この時間帯は森が特にアグレッシブにプレーしていて名古屋はバランスを崩しての総攻撃。39分には都竹がスペースに走りこむ北川を使い、北川のセンタリングに高原が合わせて追加点。2点目は前線の4枚がお互いを活かし合って創造したゴールだった。

C大阪は前半のアディショナルタイムに風間のゴールで1点返して後半に繋げ、後半に4〜5回の決定機を作るも南野シュートがバーに当たったり、風間のヘッドは名古屋のGK・石井綾にはじかれたりするなどして決められなかった。風間は試合ごとに良くなっており、同点ゴールを決めていればヒーローなれたかもしれなかっただけに悔しさが残った。南野もエースの面目を保つゴールを決め損ねた。名古屋も都竹がバーヒット含む2回の決定機に決められず、結局後半は両チーム共にゴールの運はなかった。同点・延長戦突入というページを開けそうだったC大阪は、大津耀誠(57分)、魚里直哉(80分)を投入して南野を2列目に下げてバランスを取ったが、運は味方してくれなかった。名古屋の高田監督は「最後はかなり押し込まれたけれど、南野が前にいたほうが嫌だった」と言い、C大阪の大熊監督は「前半は南野が前で止まっていた時間が多かったが、プレッシャーの中でもボールを受けられるから2列目に下がってからの方がよかった」と、共に本心なら正反対の印象で真実は勝者のものになった。

試合後、「次、決勝に進むと3度目の正直と言われますね」と声を掛けると、大熊監督は「3回目は必ず(Jユースカップを)取ります。来年は行きます、行きます」と宣言。表情はサバサバしていたが相当悔しい思いがこの宣言に詰まっているはず。「あんなこと言わなければ良かった」なんて後悔することはないだろう。有言実行で突き進むはず。来年に向けてC大阪はモチベーションと最高に悔しい経験を積んだ。「次に繋がる終わり方だと思う。決勝まで来られるのは特別なこと。決勝トーナメントの2回戦とは全く違う、決勝でしか味わえないプレッシャーがあったと思う。多くのサポーターが応援に来てくれた中でプレーできた経験は大きい。ただ、名古屋の方が自分たちの技術を緊張感の中で上手く発揮できていた。彼らの技術の高さは改めて勉強になった」と言葉は神妙ながらも喉の奥からはめらめら燃えている炎が見えそうだった。

試合ごとに強くなっていった名古屋。「チームが一つにまとまっていることを実感できた。一つになることでだんだん強くなっていることも実感した。(森とのコンビネーションは)彼のボールの持ち方やドリブルの仕方でどんな感じでスルーパスが出てくるのかが分かる。自分の力を発揮しやすいパートナー」という北川と森はまだ1年生。主力の3年生はごっそり抜けるがこの2人とハーフナーニッキ(2年)を中心として高田監督がどうチームを作り上げるのかも楽しみになる。ただ、「彼らが来年もレギュラーだとは決まっていない。安心したら終わり」と、高田監督。マスクは甘いが甘い顔は見せない。チーム内の競争を強く喚起するだろうが、ライバルチームも黙ってはいない。

JユースカップのグループリーグFで、トップ昇格が決まった小野瀬康介不在(U-18代表遠征)でも名古屋に1−1で引き分けた横浜FC(重田征紀監督)は、指導経験こそ短いものの現役引退から間のないスタッフが揃っており、トレーニングに入ってプレーして見せることをアドバンテージにしてチームを伸ばしている。決勝の名古屋とグループリーグの名古屋は別物かもしれないが、「決勝トーナメントに行けなくて本当に残念。でも、名古屋戦はしっかり守って失点を防いだし、攻撃では個々で打開する場面もあった」と重田監督は手応えを掴んでおり、名古屋の優勝を聞いて「俺たちにもやれる」という希望を持って来年を迎えるはず。また、昨年優勝したものの今年は決勝トーナメントに進めなかった横浜FMの松橋力蔵監督も、「2年間積み上げてきたものをそのままシーズンに持ち込めず、Jユースカップの決勝トーナメントに進めなかったことは悔しい。しかし、U-18代表遠征などで選手が抜ける中でチャンスを手にして経験を積んだ選手もいる。プリンスリーグでも結果は出ていないが能力の高い選手はいる。経験を積んで勝負強さが出れば違ってくる」と虎視眈々。大本命と目されていた札幌と京都も勝つことと育てることのバランスを整えてタイトル奪取に挑んでくるはず。

そして、この大会を通じて一番印象に残った選手は2回戦で札幌に敗れたG大阪のキャプテン・山千代大斗。泣きじゃくりながら「強かったガンバユースを取り戻そうとしたんですけど…」と声を搾り出して話してくれた。この想いには心を打たれた。札幌、鹿島、名古屋、京都など新たに伸びるクラブがあるなかで、トップも育成も高いブランド力を持つG大阪の盛り返しやJユースカップを毎年盛り上げ、多くのチームが目標とする広島の存在も欠かせない。来年は記念の20回大会。この節目に1年最後のタイトルをどのチームが手にするのか今から楽しみ。来年もプレミアリーグ、プリンスリーグ、クラブユースでJユースチームの成長過程を見て、シーズン最後はJユースカップでチームと選手が取り組んできた成果をスタジアムで目撃して欲しい。クラブの誇りを賭けて戦う熱い大会は確実に根を広げている。

以上

2011.12.26 Reported by 松尾潤
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