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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【第91回天皇杯 4回戦 愛媛 vs 浦和】レポート:セットプレーが明暗を分けた。浦和が愛媛を下してベスト8に進出。(11.12.18)

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12月17日(土) 第91回天皇杯 4回戦
愛媛 1 - 3 浦和 (15:04/熊谷陸/9,234人)
得点者:9' マルシオ リシャルデス(浦和)、38' 原 一樹(浦和)、77' 柏木 陽介(浦和)、90'+4 福田 健二(愛媛)
★第91回天皇杯特集
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「FKの1点ですごい楽になった」(山田直輝)

他にも何人かの選手が認めていたように、序盤にセットプレーからリードを奪えたことは浦和にとって大きかった。立ち上がり、浦和は攻撃がちょっとしたところで微妙に噛み合っていなかった。「立ち上がりは相手のペースになったり、相手のハイプレッシャーで自分たちのプレーはできなかった」と柏木陽介は振り返っている。

そんななか、前半9分にマルシオ・リシャルデスがFKを直接叩き込んだ。かなり離れたポイントから狙ったマルシオのキックは、外から見ている分にはそこまで威力があるようには見えなかったが、そのままゴールマウスに吸い込まれた。「風の影響は大きかったと思う」とは愛媛のバルバリッチ監督だが、うまく環境を利用したマルシオのクレバーな面が光る一発だった。

これで浦和は落ちつくことができた。パスをじっくりと回して主導権を握り、愛媛を押し込む時間が続いた。ただ、浦和が優勢だったことは間違いないが、圧倒感は乏しかった。確かにボールポゼッションで優位に立っていたが、「そんなにチャンスは作られなかった」とバルバリッチ監督が語ったように、ボールを持っている割にはフィニッシュまで持ち込む場面がほとんどなかった。

その流れをどう評価するかは難しいところだ。「リードしていた展開だったし、無理に人数をかけてカウンターを受けるのはリスクがあったので、そこを考えながらボールを回していた」と梅崎司が語ったように、浦和はリードしていたから無理することはなかったという状況ではあった。

ただ、相手に脅威を与えられないなか、数は少なかったとはいえ、愛媛にカウンターからチャンスを作られかけていた。愛媛の絶対的なエース、齋藤学が前を向いてボールを持った時にしばしば嫌な形を作られた。「キレがあるので取れない」と濱田水輝が舌を巻いた齋藤のドリブルは、何かが起きるかもしれないという空気を漂わせていた。

しかし愛媛にとって残念だったのは、齋藤の他に決定的な仕事をできる選手がいなかったことだ。「前を向けたら自信はある」という“愛媛のメッシ”でもさすがに1人で全てをやりきることは難しい。ボールを前に運ぶことはできても、そこから先でつまる。せめてもう1人、局面を変えられる選手がいれば、浦和をもう少し苦しめることができたはずだ。

浦和は後方でパスをつないで隙を窺うものの、愛媛側から見れば「流れのなかでやられる感じはしなかった」(齋藤)。しかし、愛媛にも反攻の武器が十分揃っていないので、浦和からすれば齋藤さえ注意しておけばOKという状況。どちらのチームも決定打が足りないという試合展開だった。

そういう流れのなかで38分に突然ゴールが生まれた。浦和が再びセットプレーからリードを拡大。マルシオのCKを山田暢久が頭で折り返すと、最後は原一樹がなんとかゴールマウスに押し込んだ。「実質的に試合は終わってしまった」と敵将が語ったように、これでほぼ決着はついた。1点差なら事故も起こり得るが、愛媛の攻撃力を考えると2点差は厳しかった。

後半、愛媛はボールポゼッションを高めていったが、それは逆に自分たちを苦しめる流れでもあった。2点のリードを奪った浦和は“安全走行”にスイッチを切り替えていた。穴を空けない対応をする浦和を崩せるほどの力は愛媛には備わっていなかった。カウンターであれば、前半のように齋藤の個人技などでゴール前まで持っていくこともできたが、後半のようにブロックをセットされると、それを崩すのは愛媛にとって至難の業だった。

それは数字上にもはっきりと表れている。前半、愛媛は押し込まれながらもシュートを6本放っていたが、後半はわずか2本。76分に齋藤が鋭いドリブルからようやく後半のファーストシュートを放った1本と、試合終了間際の福田健二のヘディング1本だけだった。

浦和は77分に柏木陽介がトドメの一撃。愛媛も後半アディショナルタイム、カウンターから福田がゴールを奪ったが、試合の趨勢に影響はなかった。

ただ、この場面でアシストを決めた三上卓哉はかつて浦和に在籍した選手で、これが現役生活のラストマッチだった。バルバリッチ監督の粋な計らいで数分間だけピッチに立ったが、最後に思い出に残る仕事をしてみせた。

「プロ生活が浦和で始まり、引退を決めた時に浦和と戦って、同じピッチに立てて本当に幸せだと思った。まぐれだけど、最後にああいう風にアシストできたので、本当に感無量です」

試合後、三上には浦和サポーターから熱い声援が送られた。彼の頬には熱いものが止めどなく流れ落ちていた。試合の結果には影響しないプレーであったとしても、本人にも愛媛サポーターにも、そして浦和サポーターにとっても価値のある仕事だった。

以上

2011.12.18 Reported by 神谷正明
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