12月3日(土) 2011 J1リーグ戦 第34節
浦和 1 - 3 柏 (15:35/埼玉/54,441人)
得点者:29' ジョルジワグネル(柏)、38' 橋本和(柏)、53' 柏木陽介(浦和)、76' 茨田陽生(柏)
スカパー!再放送 Ch180 12/4(日)前10:00〜
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※浦和側レポートはこちら
大谷秀和が高々とシャーレを掲げる。昇格チームによるトップリーグでの優勝は、世界に目を向ければ、1998年にドイツ・ブンデスリーガを制したカイザースラウテルンなどわずかながら前例があるものの、Jリーグでは史上初の快挙となった。
勝てば、ライバルチームの結果にかかわらず優勝が決まる。一方で、そのプレッシャーが選手たちのマインドにどう影響するのか、それがこの試合の大きなポイントになると思っていたが、柏の試合への入り方は完璧だった。6分にはレアンドロ ドミンゲスとジョルジ ワグネルのワンツーから工藤壮人のフィニッシュ、8分にはジョルジのクロスをGK加藤順大がパンチングで弾き返した後、レアンドロがハーフボレーのミドルシュートと、立て続けに攻撃の形を作り、立ち上がりから浦和を押し込む。浦和がボールを保持した時でも組織化された守備が機能し、前線からのプレスをはめてボールを下げさせる、あるいは浦和が中盤やサイドにボールを付けてきた場合でも、足元でボールを欲しがる相手を網にかけ、高い位置で奪ってはショートカウンターを発動した。
29分、柏に先制点が生まれる。柏にとっては良いリズムが続いていただけに、どうしてもゴールを奪っておきたい時間帯だった。ジョルジの左コーナーキック。ニアでの近藤直也のダイビングヘッドは梅崎司に当たり、レアンドロのプッシュはポストを直撃したが、こぼれてきたボールに対しジョルジが角度のない位置から思い切り左足を振り抜く。低く鋭い弾道はGKの股間を射抜き、ゴールへ吸い込まれた。
「あの時間の先制は落ち着きました」(田中順也)。先制点で落ち着きを増した柏は、最終ラインからの丁寧なビルドアップと、レアンドロ、ジョルジのキープ力を生かして完全にゲームを支配する。38分にはレアンドロの右コーナーキックの混戦から、橋本和がオーバーヘッド気味の左足シュートを決めて2−0。前半は柏のシュート17本に対し、浦和は0本という数が示す通り、内容的にも浦和を圧倒した前半だった。
だが後半は、原口元気がドリブルで仕掛ける意識を強め、または柏木陽介がプレーエリアを広げて裏への動きを増やしたことによって、前半とは異なりメリハリの付けられた浦和の攻撃に柏も後手を踏む。51分、酒井宏樹は大外の原口に注意を引き付けられたのか、平川忠亮のクロスが上がった時に増嶋竜也との間にスペースを作ってしまい、2列目から飛び出してきた柏木にまんまとそのギャップを突かれ、1点を失った。この時間帯から15分ほどは柏にバタつきが見られる。反撃ムードに沸く埼玉スタジアムの雰囲気に気圧された面も少なからずあったのだろう。
正直、スタンドの記者席から見ていても嫌な雰囲気は感じ取れた。もしこのままゲーム終盤を迎えたなら、例えば1つのミスや事故のようなゴールで同点にならないとも限らない。そしてその瞬間に柏の優勝の可能性が潰える。柏が耐え凌ぐのか、それとも悲劇を未然に防ぐため追加点を奪うのか。選手たちのメンタリティが大きく問われた。
そういう状況で、待望の追加点が生まれる。76分、これもコーナーキックのセカンドボール。茨田のミドルシュートは何の変哲もないように感じられたが、茨田はアップの際に試合前の雨でピッチが濡れてスリッピーだと感じたという。それを意識して遠目から放ったシュートがGKの手前でバウンドし、しかも引っ掛けるようなキックで不規則な回転もかかっていたのだろうか。加藤のファンブルを誘い、ゴールへと転がる。大きい大きい1点が加わり3−1。柏が優勝へ前進した。
勝利を目指すネルシーニョ監督の采配もさすがの一言である。81分には田中に代え、林陵平を投入する。ネルシーニョ監督は林にセンターバックへのケアを命じ、この采配で低い位置からの浦和のボールの出どころを封じるという、最後の最後まで勝利を手にするため最善の策を講じた。
そしてアディショナルタイム3分が過ぎると、主審のホイッスルが鳴り響く。柏、偉業達成の瞬間だった。選手、スタッフ、帯同していたベンチ外メンバーがピッチになだれ込み、歓喜の輪を所々に作った。11年前、優勝を目前で逃したあの悔しさを知る北嶋秀朗は涙を流していた。開幕前からダークホースとしてリーグをかき回す存在と注目を浴びていたが、誰も予想だにしなかった柏の初優勝。圧倒的な強さを誇示したというわけではない。それでも2年間かけて築き上げてきたチームの安定感は、やはり群を抜いており、昇格チームながらも開幕から常に上位をキープしていた。そして勝敗に関係なく、抽出された課題は必ず次の試合までに修正を施す。このネルシーニョ監督の卓越した手腕もあって、連敗は一度もなし。「優勝するに相応しいチームになろうとやってきました」。この大谷の言葉通り、シーズンの戦いを通じて最後には強者の風格すら身に付けた。
ひとまずJリーグは終わったが、まだ柏には今季の戦いの場が残されている。8日から開幕するFIFAクラブワールドカップと天皇杯だ。その2つの大会も柏のスタンスは何も変わらない。目の前の1戦1戦を全力で戦うだけである。
以上
2011.12.04 Reported by 鈴木潤
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