9月14日の練習中、柱谷哲二監督が選手たちに激怒した。
現役時代は“闘将”と呼ばれ、試合中に仲間を怒鳴り散らしているイメージが強い柱谷監督だが、監督としては温厚そのもの。試合のときにヒートアップすることはあるものの、練習ではいつも冷静に選手たちを見守っている。選手たちに対して、怒ったことは今までほとんどない。
その柱谷監督がついにキレたのだ。
当日、水戸はオフ明けということもあり、まずはフィジカルトレーニングを行い、その後に基礎トレーニングを行った。そして、5対5のゲームがはじまったのだが、その後に事件は起きた。
いつも水戸の守備はゾーンで守っているが、マンツーマンディフェンスで守ることがこの日の約束事であった。ゾーンディフェンスでは組織力が問われることとなるが、マンツーマンディフェンスでは個人の責任がより問われることとなる。いい試合をしながらも、あと一歩足りずに敗戦を重ねている水戸にとって、最も欠けている部分とも言える。「個人の責任意識を高めよう」。その意図が練習から伝わってきた。
しかし、簡単にマークを外したり、マークの受け渡しを失敗して失点するなど、目を覆いたくなるようなシーンが続いた。ゲーム中も柱谷監督は「声を掛け合えば、(マークを)受け渡すことができるだろ!」「なぜ簡単に背後を突かれるんだ」といった声を選手たちに掛けていた。それでもなかなか動きがよくならなかったため、柱谷監督はゲームを止め、選手をグラウンドの中央に集めて、話を始めた。
最初は冷静な話し口調であった。選手たちも水を飲みながら聞くことができていた。しかし、徐々にヒートアップしていき、選手たちは直立不動で話を聞かざるを得なくなった。
「なんで19位にいるんだ。お前たちは恥ずかしくないのか!? 大分戦後、泣いていた選手がいたけど、あれはウソだったのか!? 本当に悔しかったら、今日からしっかりやってみせろよ! いいか、この状況を変えるのは俺や秋葉(忠宏コーチ)じゃないんだぞ。お前たちなんだぞ! このままじゃ、ずっとこの順位だぞ。お前たちはそれでいいのか? 俺はよくねえよ。俺は本気でやっているんだよ! 1人でも本気じゃないヤツがいたら、チームは強くなんねえよ。やる気のないヤツは帰っていいよ。プロとしてどうあるべきか、お前らで考えろよ」
激しい口調で選手たちを怒鳴り散らした。そして「もう今日は終わり!」と言って、グラウンドを去ってしまった。
なぜ柱谷監督はそれほどまでに怒ったのか。「今日は何もなし!」と記者陣に対して口を開かずに帰ってしまったため、監督の真意はわかりかねるが、様々な要因が考えられる。
まずはチーム内の「温度差」だ。以前から柱谷監督は「試合に出ていない選手たちが伸びていない」と嘆いていたが、この日の練習でもアピールしようという姿勢は少なかった。メンバー入りしている選手だけでなく、全員が高い意識を持って戦わなければ、チームは強くならない。しかし、いつまで経ってもそういう気持ちが見えてこないことに、柱谷監督はフラストレーションを溜めていたと思われる。
前節(第27節)・大分戦後、そういうチームの雰囲気を察したキャプテンの西岡謙太が全員を集めて「試合に出ていない選手ももっとアピールしたり、声を出したりしてほしい」と訴えかけた(J2日記参照)が、その直後の練習でこの日のような練習をしてしまったことに柱谷監督は腹を立てたのだろう。
また、柱谷監督は「オフ明けのトレーニングのコンディションが悪い」ということも、以前から指摘していた。「オフというのはあくまで、いいコンディションを作るためのオフ。単なる休みではない。でも、選手の中にはコンディションを落として練習に入ってくる選手がいる」と語っていた。それにも関わらず、この日も一部の選手は精彩を欠くプレーを見せてしまった。
一向に変わらないチームを変えるためにも“劇薬”を注入するしかなかったのだろう。まるで中学校の部活のようだが、これはもはや最終手段と言えよう。「これで変われない選手は、この先やっていけないと思う」と西岡は強い口調で語った。
チームは確実に成長している。どの試合でもゲームを支配し、攻撃的なサッカーを繰り広げることができている。しかし、勝利を手繰り寄せられないのは、どこかに弱さがあるからだろう。「パワーが足りない、意欲が足りない、気持ちが足りない。全体的にちょっとずつ足りないのが大きな差になっている」と前々節(第4節)・札幌戦後に柱谷監督が語った通り、日々の“ちょっとした弱さ”が19位に沈む原因として考えられる。
「僕はコーチだからある程度のことまでは言いますが、そこからは選手が気付くかどうか。僕が選手だった時は、もっと厳しく言い合っていましたよ。そう考えると、まだまだぬるいと思いますね。19位という順位は必然ですよ。もっと厳しさを持たないといけない。最後に泣くのは選手たちなんですから」と秋葉コーチは語る。
“闘将”の思いは、果たして選手たちの心にどう響いたのか。そして、チームにどういう影響を及ぼすのか。このままでいいわけがない。「監督を見返すぐらいのことをしないといけない」と西岡は力を込める。まずは今週末の湘南戦(9月18日@平塚)。選手たちが“プロとしての意地”をむき出しに、戦ってくれることに期待したい。
以上
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2011.09.15 Reported by 佐藤拓也
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