9月14日(水) 2011 J2リーグ戦 第5節
鳥栖 6 - 0 岡山 (19:03/ベアスタ/3,724人)
得点者:3' 豊田陽平(鳥栖)、34' 金民友(鳥栖)、57' 金民友(鳥栖)、65' 金民友(鳥栖)、76' 豊田陽平(鳥栖)、82' 新居辰基(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch185 9/15(木)後06:30〜
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ひとつのミスから主導権を握られ、立て直す前に相手に勢いがついてしまう。引き戻すチャンスがあったにもかかわらず、相手の好守に拒まれ、さらに相手が加勢した。
終わってみると、勝者は今季2度目の6得点をあげ、敗者は今季最多失点を喫していた。元来、サッカーは点が入りにくい競技であり、内容どおりの結果が出るとも限らないスポーツである。そこは周知の事実としても、今節の鳥栖対岡山の試合結果を戦前に誰が予想しただろうか。
その予兆はキックオフ直後に現れた。
開始2分に、ホームの鳥栖が左CKのチャンスを得る。岡山のゴール前には鳥栖の長身選手が並んでいるが、マークする岡山の選手も高さでは負けていなかった。しかし、一瞬の駆け引きで相手のマークを外したFW豊田陽平がヘディングで先制点をあげ、この試合の主導権を鳥栖が握った。残る試合時間はまだまだ多く、岡山が盛り返すチャンスを作ることは可能な時間帯である。今節までの3試合を2勝1分で戦っている岡山だからこそ、その可能性は大いにあった。選手だけでなく、サポーターもそう感じていたに違いない。
が、先制点を奪われた同じミスが9分にも出てしまう。鳥栖が得た右CKを豊田陽平がドンピシャリのタイミングでヘディングシュートを放つのである。このシュートは、GK真子秀徳(岡山)の正面を突いて追加点にはならなかったが、岡山DFのマークの甘さが出たシーンであった。
この時点での得点差はわずかに1。ワンチャンスで流れを引き戻すことは可能な状況である。13分にはDFストヤノフ(岡山)、16分にはMF妹尾隆佑(岡山)が鳥栖のゴールを脅かすシュートを放つが、GK赤星拓(鳥栖)の好守に拒まれ、勢いを戻せなかった。
試合後に振り返ってみると、この2つの好守が鳥栖の勢いを増すプレーだったことに気づく。34分には、MF藤田直之のスローインを豊田陽平が競り、MF金民友(鳥栖)が左足で決めて前半を終えた。
「ひとつずつ返して行こう」と影山雅永監督(岡山)は、ハーフタイムで選手に伝えた。確かに、残り時間45分で追いつくことも、逆転することも、1点ずつ返していけば可能である。事実、前節の鳥栖は0−2からの逆境を3−3で終える試合を演じた。岡山も、80分に追いつき勝点1を得る試合だった。
そのためには、「チャンスでシュートかクロスで終えること」(影山雅永監督/岡山)が必要であるが、後半に入って立て続けにシュートやクロスで終えていたのは鳥栖のほうであった。49分にはMF早坂良太、51分には豊田陽平、55分には再び早坂良太が決定的なシュートを放っている。そして、「3失点目が痛かった」と影山雅永監督に言わしめたゴールを57分に金民友(鳥栖)が決めてこの試合の結果を決定付けた。
あとは、鳥栖ゴールショーが展開される。65分には「高校3年生以来のハットトリック」(本人談)となる金民友、76分には得点順位トップに並ぶ今季通算12点目を豊田陽平が決めた。そして、82分には今節の最大の見せ場となったFW新居辰基のゴールが生まれたのである。
この試合6点目のゴールは、単なるゴールではない事を追記しておく。次節より、金民友がロンドンオリンピック予選のためにチームを離れることになる。新居辰基の復帰は、今後の鳥栖の戦いに大きなプラス材料といえる。また、新居辰基自身2006年11月以来の鳥栖でのゴールである。鳥栖の多くのサポーターは、新居辰基のゴールがチームにどれだけ勢いを与えてきたかを忘れてはいない。彼のゴールは、まだ誰もが見たことない夢の実現を期待させるものである。夢と感動と期待をサポーターに与えてくれたゴールでもある。
全員サッカーで畳み掛ける攻撃を見せる両チームではあるが、今節に限って言えば鳥栖の勢いに岡山の守備が翻弄されていた。システム的な問題や戦術的な思惑が外れたこともあるだろう。
しかし、点が入りにくく内容どおりの結果が出にくいサッカーで、早い時間での先制点がどれだけチームに勢いを与えることができるのかが証明される試合だった。そして、その勢いを継続するためには、シュートやクロスで終えることの重要性を観ている人に知らしめる内容の試合でもあった。
華やかな得点の影には記録にも記憶にも残らないプレーが存在する。
起点となるクリアやインターセプト、シュートブロックは得てして忘れられていることとが多い。
何気ないパスやトラップも、強さや方向によっては違う結果を招く恐れがあるものである。
瞬時の判断を求められるサッカーでは、その目立たないプレーにこそ真髄を観ることができる。
文中には上げていないが、鳥栖の選手が岡山の選手のドリブル突破に対して体を入れて防ぎ攻撃へ移ったシーンを回顧するたびに、サッカーの奥深さを感じる。
サッカーは、いかなるプレーもシュートにつながっている。
以上
2011.09.15 Reported by サカクラゲン
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