9月10日(土) 2011 J1リーグ戦 第25節
福岡 0 - 1 横浜FM (18:03/レベスタ/15,818人)
得点者:11' 長谷川アーリアジャスール(横浜FM)
スカパー!再放送 Ch185 9/12(月)前04:30〜
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「ざっといかんばい、本当にもう」。記者会見場に現れた木村和司監督は苦虫をかみつぶした様な表情で、開口一番、そう話した。
1年間を通して戦うリーグ戦では思うようなサッカーができる時もあれば、そうでない時もある。自分たちの状態が悪い時にどうやって勝点を積み重ねるかがリーグ戦を勝ち抜く最大のポイント。まして、終盤に来て優勝争いに絡んでいるチームにとっては、どんな状態であっても勝点を取ることは何よりも優先される。そして、この日手にした勝点3。横浜FMにとっては、決して悪くはない結果だったはずだ。それでもなお、指揮官には、その内容のふがいなさの方が気になったのだろう。
自分たちでアグレッシブにボールを動かしていたのは、結果として決勝ゴールになった長谷川 アーリアジャスールのゴールが生まれた11分まで。その後は、チーム全体の足がぴたりと止まった。2列目が機能しないチームは、ボールを支配できず、チャンスも作れず、放ったシュートは福岡の約半分の5本。得点シーンを除けば、3位と最下位の順位の違いを見せつけることができず、中村俊輔不在のチームは、前節同様に、攻撃のリズムをつくれないままだった。「ちゃんとやってくれる選手が出てこなかったというか、それが悔しいし、残念な気持ちで一杯。本当に勝っただけの試合。全然、サッカーになっていない」。記者会見場では、最後まで木村監督の不満だけしか聞くことが出来なかった。
逆に言えば、福岡にとっては付け入る隙がある試合だったはず。しかし、チャンスらしいチャンスと言えば、8分に中町公祐のシュートが右ポストを叩いた場面だけで、不満だらけの横浜FMに対してさえ、相手を慌てさせるシーンを作ることはほとんど出来なかった。試合の主導権を握るシーンは多くはなく、福岡もまた、90分間を費やしただけの試合だった。「最後のクロスの精度だったり、クロスに対する入り方、そのセカンドボールの奪い方の所を、もっともっと精度を上げて行いないと、ああいう守備の強いチームには、点を重ねるのは難しいなということを強く感じている」とは浅野哲也監督の言葉だが、堅守に阻まれたと言うよりも、技術、戦術を含め、自らの中にある問題の方が大きかった。表面に表れる試合内容に大きな差はなかったかもしれないが、その裏側にある力の差の存在を思い知らされた試合でもあった。
しかし、その実力差を認めた上で、いかに戦うかが福岡に求められているもの。そして、それがJ1に残留するための必要条件でもある。そういう観点から言えば、いくつかの点で不満が残った試合でもあった。ひとつは90分間の中で、そこかしこに見られる安易なプレー。決勝ゴールを決められるきっかけとなったCKを与えたプレーも、さほど正確ではなかった小林祐三からの前線へのフィードを、簡単に見送ったことが原因だった。ボールがラインを割るとの判断から生まれたプレーだったが、立ち上がりから積極的にボールを追いかけていた小野裕二のプレーを見れば、どんなボールであろうとも追ってくるのは分かっていたこと。見送るにしても、もっと繊細な注意が必要だった。
また、ハマゾッチを投入してからのチームとしての戦い方にも疑問が多く残った。指揮官の采配は、成岡翔を下げてハマゾッチを1トップに置き、岡本英也を左SHに、そして松浦拓弥をトップ下に回すというもの。長いボールをハマゾッチに当てて、落としたボールを拾ってチャンスにつなげるという意図は明確だった。しかし、選手たちはボールを 回すことを選択し、ハマゾッチに長いボールが入りだしたのは、その投入から10分以上も過ぎてからだった。試合後、選手たちは口々にハマゾッチを有効に使うべきだったと話したが、残念ながら、指揮官の意図を汲み、試合の中でそれを体現する選手は多くは現れなかった。
サッカーに「たられば」はなく、それらを着実にこなしたからと言って、この日の結果が変わったとは言い切れない。しかし、そうしたディテールの部分にこだわることが出来なければ、現段階では、技術、戦術面での差を認めざるを得ない福岡が勝点を重ねることは難しい。残された時間が少ない中で、徹底してディテールにこだわる姿勢を作るのは簡単ではないが、それを実践することがJ1に残留する唯一の手段でもある。残り試合は9。崖っぷちにいることは間違いないが、研ぎ澄まされた集中力を発揮して戦う姿をピッチの上で表現してほしい。福岡がいまやらなければならないことは、そういうことだ。
以上
2011.09.11 Reported by 中倉一志
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