8月13日(土)J2 第24節 横浜FC vs 栃木(18:00KICK OFF/ニッパ球)
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日程変更により変則的になったが、試合数で言えば前節でシーズンの前半戦を終了した。松田体制3年目を迎え充実を見せる栃木は10勝7分2敗(勝点37)で3位、一方横浜FCは5勝5分9敗(勝点20)で17位。もちろん共に目標は昇格であり、優勝であるが、現時点では大きな差がついている。俗説では、どんなに勝ち続けても、勝点差が残り試合数を上回ると、逆転するのは絶望的になる。その意味では、横浜FCにとって「引き分けでも負け」(宮崎智彦)という状況だ。この栃木戦は、勝点差を縮めるには勝つしない一戦。それも、ここ12戦負けがないという、熟成度100%の相手に対してである。そのような相手に、どのように立ち向かうのか、横浜FCというクラブが持てる力が問われる一戦となる。
そもそも、現在まで横浜FCが調子に乗れない状態に陥った分水嶺は、前回の対戦(5/8@グリスタ)にあったと言って良い。この試合、1-2で敗れるのだが、シュート数だけで言えば横浜FCの17本に対して、栃木は6本。守備を中心とする栃木に対して、横浜FCは攻め続けた。しかし結果は敗戦。「前回はまだチームもできていなかったし、オウンゴールとコーナーキックから入れられて。後半だいぶ攻めていたように見えていたけど、栃木に2点目を入れられてから、型通りに守られて逃げられた。僕らが形がまだ全然できていないときの試合だと思う」と横浜FC・岸野靖之監督が振り返ったが、攻撃しても勝点に繋がらないもどかしさと、勝ち切るという意味での未熟さが露呈した試合だった。サッカーの内容は希望が持てるものだっただけに、尾を引く敗戦であったことは間違いはない。
指揮官が「その時に比べて今回どのくらいできるか」と意気込みを語るとおり、横浜FCはその試合に比べるとチームとしての戦い方が確立されてきている。自らボールを奪いに行き、ボールを奪ったらポゼッションをしながら攻撃を仕掛けることでリズムを掴むこと、ボールを失っても全員の守備でカバーしあうこと。その結果が、アウェイ千葉戦でのドロー、前節水戸戦での勝利に繋がっている。その姿勢は、この栃木戦でも変わらない。「この前の水戸戦の前半で危ないシーンが2回あったが、あれを恐れてはいけない。もちろん本来は、その前で未然に防いでいないといけないが、奪いに行って逆に攻められるというのを怖がって後ろで構えることをしてはいけない」と、あくまで自らのスタイルで栃木を打ち破ることを目指す。高地系治も「チームとしてのプレーができている手応えがある」と語るが、横浜FC本来のサッカーで3位栃木を破ることが、後半の躍進には何よりも大事なことになる。
もちろん、栃木のスタイルを考えるとこれは簡単なことではない。ボールの位置に応じてブロック全体のポジションを修正しながら、バランス良く守備をする戦術には乱れがない。選手間の距離にも乱れが生じにくく、うまくサイドに追い込みながら、サイドに張った時に最大4人でボールを奪い続ける姿は魔法のようだ。そして、奪った後の速い攻撃で確実にゴールを仕留める力も持っている。今節はリカルド ロボが警告の累積で出場停止だが、前節の鳥取戦のように水沼宏太とサビアのコンビネーションでゴールを奪い取る鋭さは持っている。現在の栃木の安定をもたらしている堅牢な守備組織と鋭い攻撃をどのように対抗するかが、試合の大きな見所となる。
栃木の守備組織をどのように打ち破るか。ボールの位置を中心に考えた理路整然としたポジショニングによる網を、根気よく広げて行くしかない。DFラインの裏を使う事、DFラインで左右に揺さぶること、サイドチェンジを使う事、サイドでプレッシャーを受ける前にボールを回して行くこと。岸野監督がよく使う言葉「相手の守備を緩めさせる」回数をいかに増やすか。相手の網の内外で自信を持ったプレーを続けることが唯一最大の鍵になる。そして、先制点を取ることが何よりも大事になる。
横浜FCには「魔法使い」フランサが加入した。先発で出場することは現実的ではないが、栃木の守備の網を破る強烈な個になりえると思われることは確かだ。しかし、チームを強くするという過程には魔法は存在しない。プロフェッショナルが持つ技が結集することで、それが魔法のように見えるに過ぎない。それは、フランサが活躍した柏も、現在の栃木の見事な戦い方も同じだ。3位栃木に勝つには、現在の横浜FCが持てる力を結集して、冷静かつ根気よく戦うことが何よりも必要。それが成就した時、それは栃木の魔法を上回る横浜FCの魔法になるだろう。ニッパツ三ツ沢球技場で、そのようなチーム力の結集がぶつかり合うことを期待したい。
以上
2011.08.12 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
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