第18節の京都戦。結果は残念な引き分けに終わりましたが、試合そのものは、東京V戦からの良い流れを継続した内容の戦いを見せてくれました。その試合後、バスへと急ぐ選手の横で、岸野靖之監督がこう声を掛けてくださいました。
「寺田よう走るようになったでしょ。『よう走るようになった』ってどんどん書いてやってください」
そうです。横浜FCが上昇気流になったのは、第15節東京V戦の後半から。前半終了間際の退場で1人少なくなった後、ハーフタイムに投入された寺田紳一、高地系治がチームに活力を与えました。特に、寺田は豊富な運動量でチームを支え続け、岸野体制初の逆転勝利に大きく貢献しました。
そして、第16節の札幌戦からは、寺田はダブルボランチの一角に。本来は、前目のポジションで攻撃的なプレーに魅力豊富な選手ですが、ボランチに入ったことで、新たな成長を始めています。まさに、横浜FCの心臓とも呼べるほどの活躍です。そのボランチでのプレーについて、寺田選手はこう語っています。
「サイドをやっていた時に、こういう風にボールを捌いてくれればと考えていた部分があった。そういう、サイドで欲しいタイミングを理解しながらプレーできている。(札幌戦では)ボールを触りながら、捌くことができた。選手が動いたところをシンプルに使えばリズム出るし、みんなの視野も広がる。そうなるとロングボールも生きる。そのバランスを大事にしたい。それに、守備でもディフェンスラインと連係しながらできている。最終ラインの人に指示をしてもらいながら動けている」
と、本来持っているサッカーのセンスがさらに磨かれて、ボランチというポジションで開花しつつあるようです。
中村敦コーチも、寺田の成長に目を見張るものがあると言います。
「もともと攻撃のテクニックはあるけど、守備の意識がとても高くなった。タイプは違うけど、甲府にいたときの藤田健が、林健太郎がいないときにボランチをやってプレーの幅を広げたような感じ。囲まれながらも前に向く動きは、彼しかできないものがあるが、そういうプレーも余裕をもって出来るようになった。現在の出来でも、J1でも十分注目されるぐらいのパフォーマンスだと思う」(中村コーチ)
京都戦が終わって、寺田選手に「よく走ってましたね」と聞くと、「まだまだ。もっと運動量を上げないと」という答えが返ってきました。今、寺田選手は、ボランチのプレーに大きな手応えと、さらなる成長の予感を感じているのだと思います。G大阪時代の印象からすると、一回り大きくなったのではないでしょうか。
今年の横浜FCは、カイオをボランチで起用するなど、ボランチの組み合わせを決めるのに時間が掛かっていました。しかし、このタイミングで「ボランチ・寺田」が形になることで、この悩みが解消されようとしています。横浜FCというチームにとっても、寺田選手にとっても大きな収穫となりそうです。次のゲームでは、ピッチの上で表現される寺田選手のセンスと運動量に、ぜひ注目してください。
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2011.06.28 Reported by 松尾真一郎