6月19日（日） 2011 J2リーグ戦 第17節
草津 2 - 4 京都　（19:04／正田スタ／3,106人）
得点者：14' 中山博貴（京都）、31' 鈴木慎吾（京都）、46' 櫻田和樹（草津）、62' 萬代宏樹（草津）、77' 伊藤優汰（京都）、86' 伊藤優汰（京都）
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何から記せばいいのか戸惑っている。「動揺」「歓喜」「熱狂」「落胆」。両チームが勝点３を狙って激しい攻防を繰り広げる中、目まぐるしく変化していく状況に完全にのめり込んだ。結果から見れば、草津が負けて京都が勝った。大きな勝利を手にした京都に対して、草津にとっては後悔とダメージの残る痛恨の敗戦となってしまった。

昇格圏内突入を目前にしていた５位・草津と、下位に低迷していた19位・京都。順位から推測されるチーム力の差はまったく存在しなかった。プレッシャーなのか、気の緩みなのか。ゲーム開始直後から浮き足立っていた草津は、京都の３−４−３のシステムへの順応ができず序盤から劣勢を強いられていく。「変則的な相手に対して誰がどこをマークするのかはっきりしなかった」（中村英之）。

さらに初先発となった京都のルーキー伊藤優汰の能力の高さに圧倒されたのも敗因の一つだった。リズムのつかめない草津は14分、伊藤に左サイドをえぐられてクロスを許すと最後は中山博貴に押し込まれてあっさりと先制を許す。さらに31分にはＧＫとＣＢの連携ミスから鈴木慎吾に追加点を決められて前半を２点ビハインドで折り返す。草津の選手たちには明らかに動揺が見えていた。

前半の嫌なムードを一瞬にして払拭するゴールは後半開始直後の46分に生まれた。バイタルエリアに駆け上がった櫻田和樹が左足を振り抜き、鮮やかにゴールネットを揺らす。「タイミングを合わせて思い切り振り抜いた」（桜田）。反撃の狼煙を挙げた草津は、自慢の攻撃陣が勢いを取り戻し、京都を一気に追い詰めていく。

そして62分、草津にとっての歓喜の瞬間が訪れる。熊林親吾がゴール前へ送り込んだ絶妙なクロスを萬代宏樹がヘッドで合わせて同点ゴールを叩き込む。「クマさん（熊林）のボールが最高過ぎて、自分はただ決めるだけで良かった」（萬代）。後半のわずか17分間で２点を追いついた草津のムードは最高潮。草津サポーターの誰もが逆転勝利を信じて疑わなかった。歓喜はいつの間にか熱狂となっていった。

しかしそこに落とし穴が待っていた。草津はその後、３度訪れた決定機を京都ＧＫ水谷雄一の好セーブなどで阻まれると77分、カウンターから右サイドをえぐられて伊藤に決勝ゴールを献上、さらに86分にも伊藤にダメ押し点を蹴り込まれて草津は力尽きた。「相手の足が出るタイミングでボールを突っついて仕掛けていった」という伊藤の独特なドリブルと天性のサッカーセンスは衝撃的だった。２ゴール１アシストで初先発を飾った伊藤の名は今後世界へと知れ渡るかもしれない。

今季初の連勝となった京都だが、３−４−３のコンパクトなシステムで草津を狭いスペースに閉じ込めて自由を奪った。萬代は「京都のプレースバックが早く、常に数的有利を作られてしまった」と振り返った。京都は後半に同点に追いつかれたもののプレッシングをベースとした攻守の切り替えの速いサッカーで草津を翻弄、結果をつかんだ。若手とベテランの力が融合し始めたチームは今後必ず順位を上げていくことだろう。

怒涛の反撃で一時同点に追いついた草津だが、その勢いを勝点３へ変えることが果たせなかった。「うちはこういう戦いをしたことがなかったので経験不足の面が出てしまった」（櫻田）。草津が大味なゲームを展開したのは事実でミス絡みの失点も反省しなければならないが、後半に魅せた攻撃は迫力に溢れていた。同点に追いついてからの時間帯は、昇格という夢が現実に近づく気がした。混戦Ｊ２を勝ち抜くのは容易いことではない。だが今季の草津には昇格に向かって突き進む力があると信じたい。この敗戦は決して無駄ではない。

以上

2011.06.20 Reported by 伊藤寿学