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【J1:第13節 名古屋 vs 福岡】レポート:指揮官も満足の5得点で、名古屋が久々のリーグ戦勝利を大勝で飾る。追いすがる福岡を突き放す貫録の試合運びで、逆襲への勢いを手にした。(11.05.30)

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5月29日(日) 2011 J1リーグ戦 第13節
名古屋 5 - 2 福岡 (16:03/豊田ス/11,132人)
得点者:23' ケネディ(名古屋)、26' 岡本英也(福岡)、51' 玉田圭司(名古屋)、66' 重松健太郎(福岡)、81' 藤本淳吾(名古屋)、87' ブルザノビッチ(名古屋)、90'+2 玉田圭司(名古屋)
スカパー!再放送 Ch182 5/30(月)後04:00〜
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眠れる獅子が、ようやく目を覚ました。4月29日の川崎F戦を最後に1ヵ月もの間勝ち星から遠ざかってきた名古屋が、福岡を相手に大量5得点。負傷していた主力たちも続々と戦列に復帰し、得点すべきタレントがゴールを奪う快勝劇は、苦境に立たされていたJリーグ王者の復活を予感させるに十分なものだった。

試合前の名古屋はともすれば悲壮感すら漂う状態だった。今季のホームゲームでは試合前に大型ビジョンで前日のストイコビッチ監督の談話が流される。そこでの発言はこうだ。
「走れない、戦えない選手がいれば5分で代える。これは冗談ではない」
笑顔で語る指揮官の心中は煮えくり返っていた。現役時代、激情家としても知られた男は自らの選手たちのプレーにいらだち、腹に据えかねていたのだ。

一方で名古屋には追い風が吹いてもいた。水曜日のAFCチャンピオンズリーグ水原戦で負傷した楢崎正剛とダニルソンが、前日に軽傷であったことが判明。ダニルソンは太ももにテーピングを施しての出場だったが、守備の要である2選手が出場できたことは大きい。さらには増川隆洋も万全ではないものの復帰し、田中マルクス闘莉王とのレギュラーコンビが公式戦5試合ぶりに実現した。ベンチには実に7か月ぶりにブルザノビッチがメンバー入りし、控え選手のレベルも上昇。一時の負傷禍を脱したといってもいいラインアップを揃えるまでに、チームは回復してもいた。

7連敗で勝点0の最下位。時折暴風雨のような悪天候となった名古屋に乗り込んできた福岡は、名古屋とは対照的に2人の主力を帯同できなかった。背番号10を背負うエース城後寿と、中盤の司令塔・成岡翔である。技術が高く、攻撃に変化をつけられる2選手の不在は福岡にとっては大きな痛手。代役には20歳の重松健太郎と22歳の鈴木惇という若手が選ばれたが、福岡の苦戦は必至というのが戦前の予想だった。

試合の構図は強者vs弱者。つまり支配する名古屋とカウンター狙いの福岡という、名古屋のゲームで最も多い展開となった。福岡は名古屋に対して2段構えのディフェンスを用意。前線でのプレッシャーがかけられる時は重松や岡本英也が積極的にフォアチェックをし、DFラインは高い位置をキープする。それがいなされれば、11人全員がきっちりと自陣に引いて守備ブロックを形成する。それはAFCチャンピオンズリーグで名古屋が苦しめられた戦い方に他ならない。実際、序盤の名古屋はビルドアップがままならず、ファーストシュートを放ったのは10分。福岡は4分、9分、15分と惜しい場面を作り、自らの戦術の正しさを証明。良い形で試合に入ったのはアウェイチームの方だった。

試合が動いたのは23分のことだ。1本目のシュートを皮切りにリズムをつかんだ名古屋が、鮮やかな速攻を決めた。田中隼磨の素早いスローインから中村直志が右サイドを突破。グラウンダーのクロスは走り込んだケネディには合わなかったが、これを福岡GK神山竜一がまさかのファンブル。こぼれ球をケネディが押し込み、先制点をつかんだ。

しかし、ここで油断してしまうのが昨今の名古屋の悪癖だ。先制した直後のキックオフから福岡に攻め込まれ、コーナーキックを与えると、その一連のプレーからゴール前で小川が痛恨のPK献上。これを岡本にきっちり決められ、わずか3分でリードを失った。その後は再び攻勢に出た名古屋だったが、前半終了間際のセットプレーで決定機を作るも増川のシュートはポスト直撃で得点はならず。結果として一進一退の攻防で、前半は終了した。
ハーフタイム、福岡の篠田善之監督は「コントロールできている。このまま続けよう」と一定の手応えを感じて後半へと選手を送り出していたが、ストイコビッチ監督は違った。まずまずの前半に不満を爆発。「起きろ!」とさらなる檄を選手たちに飛ばしていた。そしてさらなる攻撃への一手を打った。中村のフリーランニングである。本人の持ち味のひとつであるゴール前への動きを増やしたことで、福岡の守備陣は混乱した。「中村が2列目から飛び出してきて、後半から戦い方を意識的に変えてきた。それでラインも下がってしまって、できたスペースにクサビを入れられた」とは福岡・田中誠の証言だ。後半開始早々の51分には、サイドでケネディが起点となり、中央の藤本淳吾とのパス交換から低めのクロス。これを玉田圭司が右足で合わせ、いきなり勝ち越しに成功した。

食い下がる福岡は66分に重松が絶妙の飛び出しから同点ゴールを決めたが、度重なる名古屋の猛攻の前についに守備が決壊。81分にクロスの処理を誤り、藤本に勝ち越しゴールを許すと、87分にはブルザノビッチに、後半アディショナルタイムにはゴールキックにしようとしたボールを永井謙佑にかっさらわれ、最後は玉田に決められ11分で3失点。後半途中までは一進一退のゲームだったはずが、終わってみれば名古屋が5−2という大勝を収める結果となった。

「今日は超攻撃的な布陣で、リスクを冒してでも得点を取りに行きました」
自らの狙いが最高の結果を呼んだストイコビッチ監督は得意顔。「今日は3つのことができた。1つは勝つこと。2つはブルザノビッチが戻って来たこと。3つは玉田は右足の方が左足より良かったこと。4年間一緒にいて、今になって分かりました(笑)」と舌も滑らかに久々の勝利を喜んだ。2度のリードを追い付かれた選手たちは軒並み油断を排する発言に終始したが、それでもこの勝利が大きな意味を持つことは理解している。
「ACLで敗れて、昨年得た物は全て失った。今日が新しいスタートなんだと思っている」
闘莉王の言う通り、この勝利はリーグ連覇への橋頭堡となり得るものだ。ヤマザキナビスコカップ1回戦が免除となる名古屋は、次戦まで2週間の準備期間を得た。その間に5月の過密日程でたまった疲労を取り除き、心身共にリフレッシュしたベストメンバーが揃えば――。名古屋の逆襲へのシナリオが、にわかに動き始めた。

以上

2011.05.30 Reported by 今井雄一朗
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