5月25日(水) AFCチャンピオンズリーグ2011
ソウル 3 - 0 鹿島 (19:30/ソウル/12,725人)
得点者:37' バン スファン(ソウル)、54' ダムヤノビッチ(ソウル)、90'+4 コ ミョンジン(ソウル)
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「悔しいけど切り替えて、Jリーグがあるので、またタイトルを狙っていきたい」
そういって興梠慎三は表情をゆがませた。まさか今年もこの言葉をラウンド16の試合後に言うとは思っていなかっただろう。08年から4大会連続でのノックアウトステージ初戦での敗戦。今季も鹿島はベスト8に進むことができなかった。
試合内容は文字通りの完敗だった。すべてにおいて相手が上回ったと言えるだろう。オズワルド オリヴェイラ監督も「今日に関しては(収穫は)一切ありません。一瞬でもはやく消しゴムで消して忘れ去りたいです」と、不甲斐ない試合内容を悔しがる。0-3というスコアもさることながら、前半に鹿島が放ったシュートは0本。試合全体でも3本対20本という圧倒的な内容の差を見せつけられた。
試合は序盤から激しい展開で始まり、互いがこの試合にかける意気込みが感じられた。鹿島はDFラインがいつも以上に押し上げることで、布陣をコンパクトに保ち、ボールを奪ったらショートカウンターで相手ゴールを脅かす狙いで入る。しかし、試合が進むに連れて両チームのプレーに質の違いがあることが明らかになっていく。対面するポジションで、ソウルがことごとく勝利を収めていったのである。
センターバックは背番号8のアジウソンを中心に、鹿島のFWに簡単にボールを収めさせない。ボールを奪えばシンプルにFWへ送るのだが、FWのデヤン・ダムヤノビッチやバン・スファンが伊野波雅彦を封じ込めボールを繋ぐ。すると、奪われない安心感もあり、ソウルの中盤は躊躇なくサポートに入るため、ますます鹿島を押し込む展開となった。
鹿島もボールを奪ったあと、カルロンに預けようとするのだが、キープできない。DFラインを押し上げてもセカンドボールを拾うこともできず、逆に裏のスペースを使われてしまうなど、打開策がまったく見出せなかった。
なんとか耐え凌いでいたものの37分に、デヤン・ダムヤノビッチとの競り合いに伊野波が負けるとショートカウンターのような形になる。前を向いてドリブルでつっかけるダムヤノビッチから右サイドに開いていたバン・スファンへ。右足を思い切り振り抜くと逆サイドのサイドネットにグラウンダーのシュートが突き刺さり、ソウルが先制する。
後半から、カルロンに代えてフェリペ・ガブリエルを入れた鹿島は、ようやく前戦でボールが収まるようになり、興梠や野沢拓也が前を向いてプレーできるようになった。しかし、鹿島が前がかりになったところでソウルが追加点をあげる。54分、今度は、バン・スファンが岩政大樹に競り勝つと、左サイドの2列目にポジションを移していたセルベル ジェパロフへパスが繋がる。ドリブルでサイド深くに侵入したジェパロフがクロスを入れると、ダムヤノビッチが伊野波のマークをかわしニアで合わせ2点目を奪った。まるで、かつての鹿島が見せていたような鮮やかな試合運びだった。
鹿島も70分にフェリペ・ガブリエルのドリブルから左サイドでFKを得ると、野沢拓也がニアサイド上へ際どいシュートを見舞う。しかし、相手GKのキム・ヨンデが横っ飛びでこれをセーブ。跳ね返りからの混戦を岩政が押し込むも、オフサイドの判定でゴールは認められなかった。鹿島にとってはこれが唯一のチャンス。試合終了間際にも1点を奪われ、ソウルに最高の形で勝利をプレゼントすることになってしまった。
鹿島に対してどんな対策をとったのか。その質問に対するチェ・ヨンス監督代行の言葉が全てを物語る。
「相手の強みはサイドです。そこを封鎖して小笠原を抑える。これは誰でも知っていることです」
かつての鹿島も誰もが知っている攻め方で戦っていた。しかし、それでも抑えられないのが鹿島だったはずだ。それが簡単に抑え込まれるようになってしまった。ひとつの時代が終わった。
以上
2011.05.26 Reported by 田中滋
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