5月25日(水) AFCチャンピオンズリーグ2011
水原 2 - 0 名古屋 (19:30/水原/11,036人)
得点者:24' Yeom Ki-Hun(水原)、57' Lee Sang Ho(水原)
☆ACL特集
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今季の大目標であった国内外2冠の夢が、もろくも崩れ去った。AFCチャンピオンズリーグ準々決勝の切符をかけた一発勝負で、名古屋は韓国の水原三星に完敗。アジア制覇の夢は潰えた。結果だけでなく内容面でも圧倒された試合に対し、ストイコビッチ監督は「この大会から去らなければいけないことについては落胆していない。これからはJリーグに集中する」とサバサバしたもの。それは裏を返せば負けず嫌いの指揮官も突き放すほどの、低調なゲームだったということだ。
アウェイに乗り込んだ名古屋の布陣は、まずまず充実していたはずだった。ケネディとダニルソンの復帰で従来の4−3−3にフォーメーションを戻せた上に、ここ2カ月のチームをけん引した永井謙佑をスーパーサブとしてベンチに置けた。相変わらずの負傷者の多さで控え選手には若手が多かったが、ピッチに並んだ11人はほぼベストメンバー。唯一の不安点が2年目のセンターバック新井辰也の抜擢だったが、周囲には楢崎正剛を始め、田中マルクス闘莉王、田中隼磨と経験豊富な面々が揃う。これが公式戦2試合目にしてプロ初スタメンという若いDFの、サポート体制は万全だった。
水原三星もまた、負傷者に頭を悩ませての一戦だった。ここ数試合で得点を量産していたストライカーのHA TAEKYUNが負傷で欠場。188?の長身で前線の起点となれる選手を欠く中で、YOON SUNGHYO監督が選んだのはカウンターサッカーである。選手の並びは守備時は5−2−3、攻撃時は3−4−3といったところ。昨年は大宮に所属したマトとCHOI SUNGHWAN(背番号25)、そして2年前の対戦時にはキャプテンを務めていたKWAK HEEJU(背番号29)が3バックを組み、HONG SOONHAK(背番号15)とSHIN SE KYE(背番号30)を左右のサイドバックに配置。5人のDFラインの前にOH JANGEUN(背番号9)と韓国代表のLEE YONGRAE(背番号6)が並び、7人で守備のブロックを形成した。スピードに優れたテクニシャンが揃った前線は、かつて柏で玉田圭司と同僚だったCHOI SUNGKUK(チェ・ソングッ、背番号10)を軸にLEE SANGHO(背番号8)とYEOM KI HUN(背番号26)が流動的にポジショニング。ホームで選んだ「守ってカウンター」の構図からは、水原の勝利への執念を感じることができた。
前半は五分の展開だった。名古屋はここ数試合と同様になかなか攻撃の流れを作り出すことができなかったが、ケネディとダニルソンを中心にシュートチャンスを創出。2分にこの試合のファーストシュートをダニルソンが放てば、4分にはケネディが高さを生かしてチャンスメイク。12分にはコーナーキックからダニルソンが競り合ったこぼれ球を中村直志がミドルシュートに持ち込むなど見せ場を作った。23分にはFKからケネディがペナルティエリア内で倒れるも判定はノーファウル。復帰した主力がさすがの存在感を見せる。
しかし、それ以上に良いサッカーを展開したのは水原のほうだった。7人の守備ブロックは堅牢で、ケネディに対しては3バックの誰かが必ずタイトにマークする。主に対応したのはやはりJでの対戦経験があるマト。名古屋の両ウイングにはサイドバックが対応し、2枚のインサイドハーフにはボランチの2名が対応する。守備面での数的優位が崩れることはなく、これにはYOON SUNGHYO監督も「日本のチームは中盤とサイドバックをうまく使う。そこの守備はうまくいった」と胸を張った。3トップは常に名古屋のDFラインと中盤の底にプレッシャーをかけ続け、ビルドアップの阻害も抜かりなし。ひとたびボールを奪えばスピードのある3トップがボールを深い位置に運び、サイドバックとボランチが素早くサポートする。運動量と連動性に優れる素晴らしいプレーぶりで、15分、17分、20分と決定的チャンスを連発した。
水原に先制点が生まれたのは前半24分。LEE SANGHOとOH JANGEUN、LEE YONGRAEが巧みに前線でパスを交換し、最後はLEE YONGRAEのクロスをYEOM KI HUNがゴール正面で頭で合わせた。対応した新井は競ることもできず、至近距離からのシュートにはさしもの守護神・楢崎もなすすべなし。名古屋が抱えていた不安要素が、最悪の形で顕在化してしまった。
後半は完全に水原のゲームとなった。1点を追う名古屋の意識を逆手に取り、水原はおもしろいようにカウンターから決定機を生み出していく。57分には名古屋の不用意なバックパスにYEOM KI HUNが食らいつき、こぼれたところをLEE SANGHOが流し込んで2点目。焦る名古屋はチグハグな攻撃を繰り返し、ミスからボールを奪われカウンターを食らう悪循環に歯止めを利かすことができなかった。最終的には藤本淳吾をアンカーに入れてまで攻撃の立て直しを図ったが、効果はまるで出ず。水原の追加点が1点で済んだ、と言うほうが正しい劣勢のうちに、試合終了のホイッスルを聞くこととなった。
ぐうの音も出ない完敗に、試合後の名古屋の選手たちの表情も様々だ。闘莉王は「残念すぎるよ。最近はアクシデントが多いし、チャンスを生かせなかったり、相手の素晴らしいクロスにやられたり。なんか悪いことが重なっている」と悔やみ、楢崎も「全体の動きは重くはなかった。ただ、今はチームの流れが悪すぎる」と同調した。しかしこの試合を最もよく表現したのは玉田だろう。「相手がサッカーをして、自分たちはできなかった」。この日の名古屋に特徴的だったのは、まさしくこの部分だった。ひとつひとつのプレーがどこか行き当たりばったりで、チームとしてどのような展開にしたいのかが不明瞭。水原は運動量でも名古屋を圧倒したが、それも明確な狙いがあってこそだ。ただ闇雲に走るのでは、体力も戦術も続かない。実際、水原の選手も後半には明らかにペースダウンしたが、戦術面、組織面で綻びを見せることはなかった。
前半終了間際にはダニルソンが負傷退場。右太ももの裏を押さえる仕草からは、またしても肉離れでの戦線離脱者という悪夢がよぎる。ACL敗退のショックに追い打ちをかけるアクシデントは、チームの新たな悩みの種となった。「ポジティブなことを考えていくことは、ベテランであり経験のある選手の仕事。自分もそういうつもりでいる」。苦境の中にあって前を向く闘莉王の言葉は心強い限りだが、名古屋の現状は依然として厳しい。踏んだり蹴ったりのJリーグ王者は、大きな傷を負ったまま、4日後に迫ったホームでの福岡戦へと照準を合わせた。
以上
2011.05.26 Reported by 今井雄一朗
J’s GOALニュース
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