5月22日(日) 2011 J2リーグ戦 第13節
岐阜 0 - 2 徳島 (19:04/長良川/4,163人)
得点者:52' ドウグラス(徳島)、63' ドウグラス(徳島)
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歯がゆい。この試合を一言で表すとこうだ。悔しさが募るのはこういうことか。ホームで喫した0−2というスコアの裏側には、その言葉が刻まれていた。
立ち上がりはこう着状態だった。徳島の3トップに対し、岐阜は冷静に対応した。センターフォワードの佐藤晃大に当てられたクサビに対し、秋田英義と田中秀人のCB、ボランチの三田光が即座に挟み込み、1.5列目から飛び出してくるMF衛藤裕、左FW柿谷曜一朗の動きを封じた。三田は常に視野の中に衛藤を入れてプレー。これが90分間続くかが、岐阜が勝利を手にする一つのポイントとなった。
前半の守備は集中していた。挟み込みが早く、相手のボールポゼッションに対しても、簡単に突っ込むことなく、ゾーンディフェンスをうまく組み込みながら、組織的な守備を展開。リズムは相手に握られていたが、ほころびはなく、あとはカウンターがうまくはまればという状況を作り出していた。
逆に徳島はボールポゼッションはしても、バイタルエリアで岐阜の包囲網に引っかかり、リズムが作れているようで作れていない歯がゆい展開に。双方にチャンスらしいチャンスのないまま、前半はスコアレスドローで終了した。
これまでの試合の中でも、水戸戦の次にいいと言っていい前半の内容だった。前半の岐阜の攻撃で、これまでの改善点が生かされたシーンが何度か見られた。それは10分と27分、33分のシーン。10分、中央からの展開を、左サイドをオーバーラップして受けたDF野垣内俊が、そのままペナルティエリア内に持ち込んで、惜しいシュートを放つ。27分には中央のMF嶋田正吾から右のDF野田明弘に展開し、野田明からのクサビを受けたMF橋本卓がシュート。33分には野田明がペナルティエリア中央まで果敢に仕掛けて行った。
3つともサイドバックのオーバーラップが絡んだものであり、これは今までの試合であまり見られなかったことだ。
なぜ、この試合はここまでスムーズに事が進んだのか。サイドバックのオーバーラップに対し、三田がスッとDFラインに入って両CBとともにブロックを形成。その中でも三田は常に衛藤と柿谷の姿を視野に捉え、ブロックを作りながらも、アタックするところはアタック出来る、絶妙な距離感を保っていたことも、彼らがオーバーラップを仕掛けられた要因であった。
「よく辛抱して守備ができているし、ポジションもよい。後半も続けよう。チャンスが必ず来るので狙っていこう」。
木村孝洋監督のハーフタイムの言葉は、前半の出来をそっくりそのまま表していた。岐阜にとって、前半は理想的な試合運びだった。
あとはこれを後半続けるのみ…。
しかし、この試合も一つのまったく単純なミスがすべてを狂わしてしまう。後半立ち上がりを見る限り、岐阜のプレスははまっていたし、前半同様にスムーズな入りができていた。だが、52分に起こってはいけないミスが起きた。
前半はほとんど仕事をさせてもらえなかった衛藤の突破を、何とかギリギリで防いだが、これで与えた右CK。中央でヘッドで合わせたのは、このCKの直前に佐藤に代わって投入されたFWドウグラスだった。ドウグラスの放ったヘッドは、GK村尾龍矢の正面に飛ぶが、何とこれを村尾が痛恨のキャッチミス。ボールは力なくゴールへこぼれていった。今季初出場のドウグラスにファーストタッチで許した先制ゴール。
「徐々に選手は焦りだしていた。なので、ハーフタイムに慌てるなと言った。もし、あのまま続けていたら、カウンターでやられていた。アウェイで勝点3を必ず取ることが、この試合の目標。必ず点がほしいという狙いのもとで、前線の選手を入れました」。
美濃部直彦監督も岐阜の組織的なプレスに手を焼いてきたからこそ、早い段階で動き、FWにテコ入れをしてきた。それに対して岐阜は今で通りの守備を貫けるかがポイントとなる矢先のミス。しかも決めたのは、状況を打破するために投入されたドウグラス。岐阜にとって最悪すぎる展開が、すべてを一変させた。
何とか気持ちを持ち直そうとするが、自らの手で乱した歯車は戻せなかった。62分、中盤でつながれ、右サイドにぽっかり空いたスペースを衛藤に突破される。衛藤はGKと1対1になるが、放ったシュートはGK村尾がファインセーブ。しかし、直後の63分、同じような展開で右サイドに流れた衛藤にあっさり突破を許すと、フリーで上げられたセンタリングを、ファーサイドでこれもまたフリーのドウグラスにヘッドで合され、追加点。このシーン、ドウグラスは足を滑らせ、一度体勢を崩しているのにもかかわらず、ヘッドで合されてしまうほど、彼の周りには誰もいなかった。
0−2。こうなると今の岐阜に2点のビハインドを跳ね返す力は残っていなかった。ただいたずらに時間が過ぎていく。そしてそのままタイムアップの時を迎えた。
東京V戦同様につまらないミスから生じた綻び。これはもうどうすることもできない。細かいミスならば修正できるが、これはもう個々の自覚に直接問いかけるしかない。自覚。それは自分のプレーに深く反省し、奮起すること。今、一番やってはいけないのは人のせいにすること。自分の中で自分に厳しくぶつかって、今何をすべきかを導く。選手、スタッフ全員にはこれを求めたい。
試合後、サポーターからは一際大きなチャントが歌われた。ふがいない負け方にブーイングが出るかと思いきやだ。これは何を意味するのか。サポーターは前を向いている。ならば、選手たちが前を向かないでどうするのか。
選手たちはチャントを歌っているサポーターの表情を見たのか。もし見ていないとすれば、また同じミスを犯すだろう。しっかりとその目に刻んでいれば、いつまでも下を向いていられないはずだし、すべてを壊すようなミスはしないはず。今は彼らの自覚に問いかけたい。理想もわかるが、現実を見なければ何も始まらないんだと。
以上
2011.05.23 Reported by 安藤隆人
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