5月22日(日)J1 第12節 山形 vs 仙台(13:00KICK OFF/NDスタ)
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☆仙台側プレビュー
それぞれの人に、それぞれの被災体験がある。震災直後は、自分たちになくてはならないものとしていたサッカーさえ、その必要性が揺らいでいた。それも、サッカーにそれほど興味がない人ばかりでなく、サッカーをプレーする選手自身が自らの存在価値に疑問を持つ発言や無力感を口にするに至り、事の重大さを噛みしめざるを得なかった。多くの人の人生観、価値観を変えた東日本大震災発生から2ヵ月と少し。多くの人の尽力によって、NDスタでみちのくダービーが予定どおり開催されることに、ただただ感謝するほかない。そして開催する以上、この一戦が復興の一助とならなければならない。
今季初の連敗を喫した直後のダービーとなる今節、小林伸二監督はチームの状況と相手の状況を見定めたうえで、システムを4-3-3から4-4-2へ変更する決断を下したようだ。
仙台の戦いについて、小林監督は「全員がしっかり守備をして、全員でつなぐというよりも、背が高くなくても前の選手が走るから、そこへ合わせてロングボールを当てて拾っていく。きちっと守備をして飛び出す。オーソドックスだと思うんだけど、それを90分徹底してやろうとしているのがすごくいいように出ているのと、蹴るとそこで競るし、絡むし、セカンドボールを拾おうとするしというところで、すごくシンプルにタフにプレーをしてる」と分析する。一方、山形は攻撃で前がかったときにスペースのある自陣をシンプルに突かれ、相手フォワードと個の勝負に持ち込まれることで失点を喫するパターンを繰り返している。この状況から、ボランチを佐藤健太郎1枚からもう1枚増やすことで、バックラインのサポートとセカンドボール奪取の確率を高めようとの狙いだ。
さらに、小林監督は仙台の得点パターンについて重要な指摘をしている。「得点が全部クロスなんですね。展開したクロスというよりも、(ターゲットに)打ち込んでセカンドボールを拾ったり、プレスをかけたのがこぼれたり、体に当たったのを拾ったり、際のところを拾っている。そこは今そういうたくましいところが出てるし、得点に結びついている」
ロングフィードのセカンドボール対策として、ディフェンスラインは中に絞らなければならないため、どうしてもサイドは空きやすい。競ったボールが弾かれて、あるいは中央で拾い展開する形で、サイドからクロスが上がる機会は多くなる。相手の攻撃が完全に終了するまで、集中力途切れさせてはならない。
前線に目を向ければ、古橋達弥が今季初先発で長谷川悠と2トップ、ないし1.5列目でコンビを組む可能性が高い。山形の得点力不足の要因の大きなひとつに、裏へ飛び出す選手がいないことがあるが、それをチームでもっとも得意としているのが古橋だ。「できるだけ動きながら相手の裏を突くプレーを増やしていけば、全体的にも押し上がってくるし、チャンスはできてくる」。スペースは少ないかもしれないが、それを動きの質で補い、ブロックをかき回すことで、ペナルティーエリアの手前が空くなど副次的なチャンスも生まれてくる。
布陣は定まった。しかし、本当に重要なのはそこではない。縦にボールが出た瞬間に味方を信じて走り、たとえ攻撃が成就しなくても今度はポジションに戻ることを厭わず、球際の執着心を失わず、最後まで驚異的に走りきる仙台のプレーに対抗するには、それ以上に強い気持ちが要る。確かに、仙台は2試合連続で追いつかれているが、リーグ再開の川崎F戦、ホーム開幕の浦和戦で見せたようなタフさや驚異的な粘り腰が、ダービーという大一番で蘇ることは十二分に考えられる。修羅場をくぐってきた仙台に対抗するためにも、山形の大きな武器「ホームの力」を存分に発揮したい。
遡れば、08年の第14節には、2-0とリードした前半から後半に3失点で逆転負けを喫したが、その6節後に今度は2点のリードを3点目につなげ、3-0と快勝した。敗戦からリベンジを誓い、力を付けながら大きく成長を遂げた1ヵ月間だった。逆にJ1初年度となった昨シーズンは、7月の第1戦で山形が3-1と勝利したあと、9月の第2戦では仙台に0-2とやり返された。JFL時代の95年から鎬を削ってきたその一戦一戦を積み重ねたことで、現在の「みちのくダービー」のブランドがある。どちらかが勝ち、負け、あるいは互いに引き分けという形で結果は表れるが、両チームが本気で勝利を欲して戦ったなら、得るものは勝点3の比ではない。
東北が未曾有の震災に負けないことは、この2クラブの真剣勝負こそが証明できる。そう信じている。
以上
2011.05.21 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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