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【J1:第11節 川崎F vs 鹿島】レポート:非現実的な前半と、白熱の後半。鹿島の不調をうまく突いた川崎Fが、逃げ切りに成功する。(11.05.16)

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5月15日(日) 2011 J1リーグ戦 第11節
川崎F 3 - 2 鹿島 (16:03/等々力/19,643人)
得点者:10' ジュニーニョ(川崎F)、31' 山瀬功治(川崎F)、50' 遠藤康(鹿島)、78' 小林悠(川崎F)、90'+2 カルロン(鹿島)
スカパー!再放送 Ch180 5/17(火)前10:30〜
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試合前にちびっ子サポーターを撮影した際、今日の試合の行方について尋ねた。ちびっ子ならではの無邪気さで発した「3−0でフロンターレ!」との回答に、自分を含めた「大人」たちは「それはすごいね」とか、「そうなるといいね」とか、全く現実感を伴う事のない共感の言葉を投げかけていた。だって大人だから。相手は鹿島である。そんな簡単な試合になるはずがない。その場にいた「大人」は誰もがそう思っていた。ところが、蓋を開けてみると、大人の常識は軽く覆されてしまうのである。それは信じられない光景だった。

開始直後の1分に鹿島は興梠慎三がドリブル突破してマイナスのクロスを上げ、右からのCKを手にする。いきなりの展開に、ゾクゾクするような好ゲームが今日も繰り広げられるのだろうと、思っていた。しかし、その後ぼくの取材ノートに鹿島の攻撃が記されるのは、23分にまで待つ必要があった。このファーストプレー以降、試合展開は一方的な川崎Fペースとなるのである。

中村憲剛が柴崎晃誠とボランチでコンビを組んだこの試合は、その中村が自由に試合を組み立てる展開となる。3分には中村から田中裕介を経由してジュニーニョへとつながり、川崎Fの1本目のCK。5分にはスローインからの流れで矢島卓郎が岩政大樹と入れ替わりエリア内でシュートを放つ。6分には山瀬功治がファーストシュートと川崎Fが鹿島を圧倒する。

そんな展開の中、川崎Fの10分の先制点はCKのこぼれ球をジュニーニョが決めたものだった。鹿島を圧倒する試合展開をきっちりと得点に結びつけた事はほめられるべきことではあるのだが、それと同時にこのCKを取るに至る一連の攻撃に今の川崎Fの戦術改善の過程を見る思いがした。それは前半9分の攻撃だった。右サイドからピッチ中央を横断して左サイドへと展開し、最後は登里享平のクロスがCKになるという場面である。川崎Fが意識して改善するようになった、幅を使った攻撃によるチャンスメイクと、それによって獲得したCKが得点に結びついたのである。これがジュニーニョの今季初ゴールであるという事実も含め、川崎Fにとっては意義深い得点だった。

先制ゴールの前も、その後も、川崎Fは一方的に鹿島を攻め立てた。鹿島は起点の一つとして考えていたであろう大迫勇也にボールを入れられず、全く攻撃を組み立てることができなかった。その光景を見つつ、川崎Fのサッカーが改善したのだろうかと、素朴な疑問が湧いた。それほどまでに鹿島のサッカーは精彩を欠いていた。

試合後の選手たちは一様に鹿島の前半について、普段との違いを口にしている。

口数少なく「体が動かなかったです」と話した興梠慎三の言葉を伝えるまでもなく、川崎Fの選手たちは鹿島の選手たちのコンディションの悪さを指摘。「いつもの鹿島っぽくはなかった。多少疲れがあるのかなと」と中村憲は話している。ただ、後半に勢いを取り戻し、互角以上の戦いを展開。2点を奪い、川崎Fに追いすがった事実を元に小笠原満男が「残念ですね。特に前半は死んでいました。コンディションではなくて、気持ちの問題だと思います。後半はいいところも出たので、やればできるという事だと思います」と述べて、気持ちの問題であると指摘していた。

改めて振り返ると、活を入れられたであろうハーフタイムを経て鹿島は大きく勢いを取り戻している。だからこそ、圧倒していた前半に川崎Fが奪った追加点に意味が出てくる。前半31分。中村からのパスを受けた矢島がペナルティの境界付近でボールをキープする。その矢島を中村が追い越して鹿島の意識を引きつける中、左サイドの山瀬へとラストパスを通すのである。

「コウジさんがラインを見てそうだったので出しました」と話す矢島に対し、山瀬は最初にほしいタイミングではなかったと口にしつつ「ヤジが出してくれたことが大きい。一応ボールが出てもいいように引き出すようなポジションをとっていました」と振り返り「逆サイドに蹴り込むことだけを考えました」と移籍後初ゴールについて説明した。

圧倒していた内容だっただけに、2得点にとどまった事は残念ではある。ただ、それでも2得点できた事は褒められるべきであろう。この2点のマージンが川崎Fに勝利をもたらす事となるからだ。

試合前に聞いていたちびっ子の3−0という予想スコアが脳裏をよぎり始めた後半に試合は違う展開を見せ始める。「大人」の逆襲である。

ハーフタイムを挟み、エンジンが掛かってきた鹿島は後半の50分に遠藤康が追撃の狼煙となる1点を決める。2点差試合の怖さを、逆転した立場と、された立場の両方で経験してきた川崎Fは、守勢に回り始めてしまう。1点に縮んだマージンを保つべく川崎Fは60分に一枚目のカードとして「ルーズボールを拾いたいという事。それを拾うことでラインを上げる時間、ボールを自分たちで動かす時間がほしい」(相馬監督)との意図のもと、登里から横山知伸への交代を敢行すると、67分には矢島に代えて小林悠を投入する。そしてこの交代采配が結果的に吉と出る。

川崎Fは交代出場の横山がボランチに入り中村がサイドハーフへとポジションを上げる。ポジションを一つ上げた中村からのパスを「止めを刺してこいと言われました。1点とったら決まるから」との指示を受けピッチに立っていた小林がダイレクトに蹴り込んで貴重な3点目を手にする。まさに、相馬監督の采配が決まった瞬間だった。

そんな中、誤算があるとすれば鹿島が気持ちを切らすことがなかったという事であろう。アディショナルタイムに突入した90分+2分に途中出場のカルロンが1点を取り返し、なおも川崎Fゴールに迫っていた。川崎Fは結果的に逃げ切りに成功するのだが、それにしても、3点目を奪った時点で試合を終わらせなければならなかった。ただ、そこにエクスキューズがあるとすれば、それは相手が鹿島という強敵だったという事であろう。強豪クラブとしての矜持を胸に、最後まで気持ちを切らすことのなかった鹿島の戦いは、さすがだった。そしてその相手を下した事が、このチームにもたらす財産は大きいはず。

「これはすごい自信になりますね。これを勝てたことは大きい」と話すのは柴崎。ジュニーニョも「この勝利はチームにとって大きい。鹿島はタイトル争いをするチームなので、そういうビッグクラブに勝てるのは自信になると思います」と話している。

冒頭に記したちびっ子の予想は、前半に限れば的中していた。3−0のスコアは現実的なものだった。そんな試合展開を自らの力で覆すだけの力を鹿島は持っている。そしてその相手をきっちりと下したという点にこの試合の意義があったはず。未だにチームの形が定まらない川崎Fではあるが、結果を伴いながら進歩できているのは成果であろう。一方の鹿島は、なにしろ前半の戦いが悔やまれる。ACLだったり、ホームスタジアムで試合が行えていないという理由もあるのだろうがチームマネージメントに難しさがあるのかもしれない。鹿島はどうやってこの苦境を脱していくのか。気になるところである。

以上


2011.05.16 Reported by 江藤高志
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