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多くの反対意見がある中、鳥取インターハイのサッカー会場として1995年に新設された、『バード』ことバードスタジアム(現在の名称は『とりぎんバードスタジアム』)。同年10月に初めてJリーグの試合が開催された翌年からも、広島や京都のホームゲーム会場のひとつとして、年に2、3試合はJリーグや天皇杯などが行われた。建設に尽力した鳥取市教育委員会事務局体育課の課長補佐兼スポーツ係長、乾秀樹さんも、一人のサッカーファンとして、そうした試合を楽しんだ。2002年には、日韓ワールドカップに臨むエクアドル代表のベースキャンプ地となり、セネガル代表との国際Aマッチも開催されている。
しかし、徐々にJリーグや天皇杯の誘致が難しくなり、03年以降は大きく減少。『Jリーグの開催が地元の活性化にもつながる』という、当初の建設意義が問われる状況になっていた。ガイナーレ鳥取は、前身のSC鳥取が01年からJFLに参戦していたが、Jリーグ参戦は表明しておらず、降格を免れるので精いっぱい。しかも、ホームゲームの多くは米子市で行われており、『バード』では利用を促進する必要から、ゲートボール大会が開催されたこともあった。
状況が大きく変わったのは、05年12月。SC鳥取が、将来のJリーグ参入を宣言したのだ。07年に名称をガイナーレ鳥取に改め、08年には活動拠点を米子市から鳥取市に移転。練習環境が整っていることに加え、米子市にはない、Jリーグ基準の『バード』があることも、移転の決め手になった。
95年にスタジアムが完成したときは安堵感に包まれた乾さんだが、本格的にガイナーレ鳥取のホームスタジアムとなった時に、完成時には感じなかった大きな感慨を覚えたという。
「Jリーグの試合を誘致するために全国を回っていた頃、各地のJクラブとスタジアムが生み出す、素晴らしい雰囲気に憧れていました。鳥取市にはJ基準のスタジアムという『ハード』はありましたが、『ソフト』がなかった。ガイナーレが来て、ついに『ハード』と『ソフト』が揃った時、“ああ、あの事業が、意味のあるものになったんだ”と感じたんです」
『バード』は長年、各クラブの“仮住まい”でしかなかったが、地元のクラブが本拠地とする、紛れもない“ホーム”となった。「スタジアムという仏像に、ガイナーレという魂が入った感じでしょうか」と乾さんは言う。FC町田ゼルビア、V・ファーレン長崎などのJ参入を目指すクラブが、スタジアムの基準クリアに苦心する中、10年以上前から基準を満たして存在した『バード』の存在は、ガイナーレ鳥取にとっても、この上なく大きなものだった。
その後もガイナーレ鳥取のJ参入への道のりは厳しく、08年、09年は成績以外の条件を満たしながらも、2年続けて昇格圏内の4位以内に一歩及ばぬ5位に終わり、昇格ならず。08年に4位で昇格した岡山は、09年に『バード』でJ2のホームゲームを行い、乾さんも「うらやましく感じた」と振り返る。
しかし、10年は序盤から首位を独走。後期8節のSAGAWA SHIGA戦では、クラブのホームゲーム史上最多となる9499人が『バード』に詰めかけ、勝利を収めたガイナーレ鳥取は、J昇格に大きく前進。地元の大観衆が、地元のクラブを後押しするスタジアムの雰囲気に、乾さんは「これはすごいことになった」と感動したという。後期10節にはアルテ高崎に勝ち、4位以内が決定。1−0の勝利の決勝点を決めたのは、建設のきっかけとなったインターハイの優勝メンバー、吉野智行だった。
4月30日、ついに実現するホームゲーム。乾さんはこれまで毎年シーズンチケットを購入し、プライベートで観戦していたが、今年からは市役所の職員として業務を行う。気軽に観戦できなくなるが、「いずれ代わりの職員がやってくれるようになるでしょう。そうなったらスタンドに戻ります(笑)。J1にも行けると思っているし、いつかACLに出るところを見たいですね」と夢をふくらませる。
猛反対を押し切っての建設から16年。とりぎんバードスタジアムは、ガイナーレ鳥取という魂を吹き込まれ、Jリーグの舞台として、これまで以上の輝きを放つ日を待っている。
以上
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★記念すべきJリーグでのホーム初戦は4月30日!
J2 第9節 鳥取 vs 富山(13:00KICK OFF/とりスタ)
2011.04.27 Reported by 石倉利英
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