4月6日（水）AFCチャンピオンズリーグ2011 水原 vs 鹿島（19:30KICK OFF/水原）
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試合前日の水原は春らしい穏やかな温かさに包まれた。ダウンジャケットを着ていては少し暑いくらいの陽気。そのなかで、鹿島の選手たちは久々にサッカーだけに集中し、心からの笑顔をはじけさせていた。
「家がなくなったり、身内がいなくなったり、食べ物がなかったりする人もいるなかで、僕らはなに不自由なく生活して、サッカーができている。そういうありがたみや喜びを感じながらプレーして、日本で僕らのプレーを楽しみにしてくれている人もいると思うので、そういう人たちのためにも勝って喜ばせてあげたい」
この日、32回目の誕生日を迎えた小笠原満男は、サッカーができる喜びを感じながら、大きな使命を胸の奥に秘めていた。

対戦相手の水原三星は、現在3勝1敗でKリーグの3位に位置する。今季、大量補強を行い、多くの韓国代表経験者を揃える韓国を代表するチームだ。日本が優勝を果たしたアジアカップにもGKのJung Sung-Rｙongを始め、DFのHwang Jae-Won、MFのLee Yong-Rae、FWのYeom Ki-Hunが出場を果たしている。さらに、外国人選手にも大宮で活躍したマト（Mato）、そしてウズベキスタン代表のエースFWとして知られるゲインリッヒがいる。しかし、ゲインリッヒはACLへの登録が間に合わなかった関係で出場はできないのが水原にとっては痛いところだろう。その他、ブラジル人選手が2人在籍しているが、背番号7のMARCEL Augusto Ortolanも登録が間に合わず、背番号11のBergsonは怪我。外国人選手はマトだけになり「韓国代表とやるような感じ」（岩政大樹）という印象が正しいだろう。
監督のYoon Sung-Hyoは、4-1-4-1の布陣を得意とし、どうやら明日の試合でも背番号28のHa Tae-Goonを1トップに据えた布陣となりそうだ。ただ、今季の戦いの中で3-6-1という並びも見せており、最後までどういう布陣になるかはわからないだろう。

3月28日に練習を再開させ、大きな困難を乗り越えながらここまで急ピッチの調整を続けてきた鹿島。オズワルド・オリヴェイラ監督は「やるべきことはハッキリしている」と強い口調で言い切る。
「クラブハウスが壊れ、スタジアムもホームとして使えない。ただ、それがパフォーマンスに影響するようにしてはいけない」

対戦相手は強豪チームであり、敵地で勝点を奪うことさえ簡単ではない。しかし、震災は、手を取り合い、互いに励まし合うことの大切さを教えてくれた。クラブハウスには小笠原の呼びかけで集まった支援物資が山のように積まれ、その仕分け作業は誰ということもなく、全員で手助けしながら行ってきたという。また、本拠地である鹿嶋市も被災し、一時はライフラインが寸断され、チームとしての活動を中断することを余儀なくされた中、いま、こうして再びサッカーに打ち込めている。
「笛を聞いちゃえば問題ないですけど、正直、頭から離れない部分もある。でも、そういうのも僕らの力に変えていって、その力をまた向こうに還元できればいい。応援してくれている人がいて、僕らがその人たちを喜ばせてあげることが、いまできることだと思う。必ず勝ちたいです」
小笠原主将の言葉が力強く響いた。

以上

2011.04.05 Reported by 田中滋