1月1日(土) 第90回天皇杯決勝
鹿島 2 - 1 清水 (14:00/国立/41,348人)
得点者:26' フェリペ・ガブリエル(鹿島)、59' ヨンセン(清水)、77' 野沢 拓也(鹿島)
天皇杯特集
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長谷川エスパルスとして迎えた3度目の決勝戦。「今度こそ」、そして「このチームの最後を良い形で締めくくりたい」という思いは本当に強かった。しかし、終わってみれば、結果は非常に残酷なもの。結果は1点差だが、惜敗と言うには少し違う印象もある。試合直後は、選手もサポーターも、悔しさを胸の内でぐっと噛みしめるしかなかった。
清水としては、立ち上がりを制することが最初の狙いだったが、それができなかったことが、まず計算違いの部分。鹿島の中盤での寄せや囲みが非常に早く、それによってなかなかボールを前に運ぶことができない状況が続き、そのうちに何度かボールを奪われてショートカウンターを受ける中で、清水の選手たちに余裕がなくなっていく。
狙いとしては、準決勝・G大阪戦と同様に「裏へ、裏へ」と積極的にボールを送ってDFラインを下げさせ、自分たちのリズムを作るというイメージがあった。だが、裏に蹴るにしても余裕がない状況で蹴るため、ヨンセンのところを完全に狙われて厳しいマークを受け、セカンドボールもなかなか拾えない。岡崎慎司と藤本淳吾のところも、前半は鹿島の両サイドバックが上がりを抑え、きっちりと対応されて、なかなか前線でタメを作ることができない。中盤でもリズムの良いパス回しができず、焦って裏に蹴っても相手ボールになるばかりで、前半は自分たちのリズムを作ることがほとんどできなかった。
ボールに対する出足や反応も、明らかに鹿島のほうが速かった。その差はコンディションというよりも、清水の“硬さ”にあったことは否めないだろう。スタンドから祈るような気持ちで見つめていたキャプテン、兵働昭弘も「上から見ていても若干硬さを感じた」と言う。
そんな中での前半26分、左CKからフェリペ・ガブリエルに頭で決められ、先制点を奪われてしまう。高さという面では清水が多少優位に立っていた中で、伏兵に決められてしまったのは運の要素があるだろうが、展開としてはまさに鹿島の狙い通り。前半に関しては、鹿島の試合巧者ぶりや経験値の差を見せつけられ、術中にはまってしまったという印象が強かった。
しかし、「前半は前線で全く起点が作れなかったが、そういった中で1点で抑えることができたので、後半は1点は返せるのではないかと感じていた」(長谷川健太監督)と、まだまだ勝機はあった。
後半は立ち上がりからシステムをヨンセンと岡崎の2トップに変え、前線でボールが収まる回数も増え、小野伸二や藤本がサイドで時間を作れる場面も増えて、少しずつ自分たちのリズムをつかんでいく。急な先発で前半はなかなか力を発揮できなかった山本真希も、ボランチに下がって球際で非常にアグレッシブなプレーを見せ、リズムをつかみ始めた。クロスからゴール前で際どい形になる場面も出始め、長谷川監督の予想通り、徐々にゴールの匂いが感じられるようになっていった。
そんな中での後半14分、本田拓也の裏を狙った絶妙のパスでヨンセンが身体ひとつだけ抜け出し、飛び出してくるGKの直前でチョンと蹴り上げて、頭上を越える柔らかいシュートで同点に追いつくことに成功した。
後半のここまでは、今度は清水の狙い通りの展開。勝負は2点目にかかってきた。
その後は、鹿島が後半18分に切り札の本山雅志を投入し、清水のほうは22分に山本真に代えて伊東輝悦をピッチに送り出す。連戦の疲労が徐々に出始め、鹿島の出足も鈍ってきた中での1点勝負。中盤のバランスを整えて、「6枚できちっと守備をして4枚で攻撃を仕掛ければ、(得点が)十分取れるだろうと思っていた」(長谷川監督)という狙いだった。
清水は前半に比べてセカンドボールを拾う回数も増え、サイドから攻め込む場面も増えて、展開は一進一退。ただ、お互いに守備は手堅く、どちらも決定機はなかなか作れないまま時間が進んでいった。
こうなると、セットプレーで試合が決まるというのはよく見られるパターンだが、それを実現したのは、残念ながら清水ではなく鹿島のほう。後半32分に危険な位置でのFKを与えてしまい、野沢拓也に鮮やかなFKを決められてしまった。
必死に1点を追いかける清水は、37分に原一樹を投入し、38分には太田宏介が左サイドを突破して低く鋭いクロスを入れるが、これには岡崎もヨンセンもわずかに届かずゴールならず。さらに42分に大前元紀を入れ、最後はボスナーも前線に上げて捨て身の攻撃を仕掛けるが、その後はなかなかチャンスを作れず、最後は鹿島にうまく時間を使われたままタイムアップ。同時に、6年間続いた現体制での戦いも、ノンタイトルのまま幕を閉じた。
この試合で清水に悔いが残るところがあるとすれば、鹿島が主力2人を欠く中でも鹿島らしさを存分に発揮したのに対して、清水らしさという部分を100%発揮できたとは言えないこと。大舞台での勝ち方を知っている鹿島のようなチームに対しては、相手以上に自分たちの力を発揮しなければ勝つことはできない。それは当然試合前からわかっていたことだが、その難しさを今回も痛感させられる結果となった。
これで長年チームを支えてきた伊東輝悦や市川大祐も清水を去ることになる。表彰式が終わった後、日頃あまり感情を人前で出すことのない伊東が、溢れる想いを抑えきれず、両手で顔を覆ってしゃがみ込む姿を見て、胸が締めつけられたサポーターも多かったことだろう。
この後、さらに何人かチームを離れる選手が発表され、2011シーズンはまったく違うチームとして新たなチャレンジを始めることになるだろう。しかし、この悔しさはしっかりと胸に刻みつけ、次への教訓と活力に変えていかなければならない。
以上
2011.01.02 Reported by 前島芳雄
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