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【J1:第34節 仙台 vs 川崎F】レポート:満員のサポーターの前で、最後に見せた意地。仙台が終了間際の同点弾で、自力による残留決定。(10.12.05)

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12月4日(土) 2010 J1リーグ戦 第34節
仙台 1 - 1 川崎F (15:34/ユアスタ/18,989人)
得点者:25' ジュニーニョ(川崎F)、90'+3 渡辺広大(仙台)
スカパー!再放送 Ch308 12/5(日)後00:00〜
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昨年のJ2優勝の前、仙台が最もJ1に近づいた瞬間だった、2008年のJ1・J2入れ替え戦。その最後の場面を覚えているだろうか。
第2戦、梁勇基の直接FKが決まり、2試合合計スコアは2−3。あと1ゴール奪えば、アウェイゴールの関係で逆転昇格となった仙台は、最後に波状攻撃からCKを得る。
梁が放った左CKに、ゴールに少し遠い、ニア寄りの正面から飛び込んでいったのは、あの試合の仙台の選手で最も若かった渡辺広大だった。だが彼の頭はボールにわずか届かず、CKが相手にクリアされたところで試合は終了。「まだJ1には早い」。そう告げられたかのような最後の場面、ボールの一番そばにいたのは、渡辺だった。

そしてあれから2年後。

入れ替え戦の悔しさを糧に、改めてつかんだJ1の座を、最終節に至ってもまだ確保できずにいた仙台。ドローでも残留を決められる中、川崎Fに0-1とリードを許していた後半アディショナルタイムにCKを得る。

サイドこそ違うが、キッカーも同じ。右コーナーから梁が入れたボールは、まさにあの時と同じ「ニア寄り正面、ゴールから少し遠く」へ。そしてそこに飛び込んだのも、この日24歳の誕生日を迎えたものの、仙台のメンバーで最も若い渡辺。

だが、あの時の渡辺、そして仙台と、今は違った。様々な思いを叩きつけたような渡辺のヘッドはボールを捉え、ゴール左に柔らかく吸い込まれていった。他会場の結果に少々脅えながら、最後の最後で自力での残留をたぐり寄せるゴール。拳を突き上げる渡辺を中心に広がる光景。試合終了と共に黄金色のスタンド全体に広がった歓喜。そう、全てがあの時と違う空気の中、仙台は7年ぶりのJ1で生き残って見せた。

他会場の結果にかかわらず、引き分け以上の結果で残留を決められる状況にいた仙台は、立ち上がりからむしろ勝利を狙って積極的に攻めに出る。そして実際に決定機を立て続けに得るのだが、CKから渡辺、中原貴之と立て続けにシュート、最後はGKも倒れていたゴールマウスに向け渡辺が蹴り込んだシュートはゴール左に逸れ、直後に右からのセンタリングにフリーで飛び込んできたフェルナンジーニョのシュートもバーの上。試合後に手倉森誠監督が「決めなければ、勝たなければという思いになった分、少し気負いが、シュートチャンスで感じられた部分はあった」と振り返ったがこの辺りも、残留に近づくにつれて増してきた「残留争いのプレッシャー」なのか。

すると、仙台が続いた好機を逃がした直後の25分、仙台にとっては最高に嫌な形で、川崎Fが先制点を奪う。右に振られたボールを、サイドを駆け上がって受けた森勇介が受けると、そのままスピードに乗り突進。それに対して応対した朴柱成が一旦は体を割り込ませて阻んだものの、ゴールラインを割りかけた所で油断したのか、再加速した森にボールを再び奪われる。突然のピンチにゴール前の体制が整っていなかった仙台守備陣を見て、森はグラウンダーでマイナスのセンタリングを入れると、ニアでフリーで受けたジュニーニョが間髪入れずに放ったシュートが決まる。
川崎Fにだって、高畠勉監督の最後の采配を勝利で飾りたいという意地がある。その思いが詰まったゴール、さらに埼玉スタジアムで神戸が先制したという報も聞こえてきて、仙台はさっきまでの攻勢が一転、残留争いにおいても若干嫌な状況が強まる中で、前半はなんとか0-1で終了。

だが後半、仙台は再び盛り返した。F東京が西京極で京都に1-0でリードを許しているとはいえ、何しろF東京だ。後半アディショナルタイムに2点を奪ってひっくり返す事くらいあり得る。さらに神戸が後半に入り、次々と得点を重ねていくという知らせも(ただ、この点は少しばかりミステリーなのだが、仙台のベンチ、手倉森監督は「ハーフタイムで神戸1点リード」までは聞いていたと語るが、一方で「菅井はなぜか知っていた」とも。さらに後半、千葉直樹が投入された際、ピッチにいた渡辺はその千葉から「神戸3点リード」と告げられたことを明かしている)。ともかく、これ以上の失点は少し危険を伴う状況に仙台はなっていた。

しかし、それでも仙台は勝利を狙い、攻めた。元々、チームの共通意識として勝利を目指すことは確認されていたし、失点への恐怖はあったが「僕とジローさんが(鎌田)がしっかりとバランスを取ることを考えた」(渡辺)というように、全く無鉄砲な反撃というわけではなく、川崎の攻撃をカウンターのみと見切った、実はそれなりに統制の取れた反撃だった。さらに「あれだけの声援の影響もあった」(梁)と選手が認めるほどのスタンドの迫力が、仙台の反撃を後押しした事も間違いない。
 後半、目安5分と表示されたアディショナルタイムは、完全に仙台の時間に。そしてゲームは、冒頭に触れた劇的な結末にたどり着いたわけである。

結果的に、仙台は勝利を手にすることこそできなかった。しかし、2年前にはもぎ取ることができなかった「あと1点」を奪って、最後に自力で未来を切り開いたことは間違いない。
終了のホイッスルとともに、スタンドでは歓声が爆発した。ここにいる誰もが、この1点の意味を認識していた。その意味でこの日は、スタジアム全体が、チームと気持ちを共にして戦ってきたといえる。

試合後の引退セレモニーで、千葉直樹は、自身のクラブ在籍15年間を振り返るスライドショーを用意していたが、その中に彼はあえて、ブランメル仙台時代の、ガラガラのスタンドが写る一枚を差し込んでいた。「こういう時代があったことを知って欲しかった」のだという。そして今、彼の現役最後の日。スタンドには、このクラブを愛するサポーターで埋まっていた。
千葉、そして平瀬智行の引退セレモニー(相手チームの二人の為に、横断幕、ゲーフラまで用意した川崎Fのサポーターを、心の底から讃えたい)には、多くの涙が。だがこうしたセレモニーも含め、試合後のユアスタには幸せな光景が広がる。

いつまでも終わってほしくない、素晴らしい時間の中で、仙台は2002シーズン以来となる、J1での残留を確定させた。

以上
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