10月11日（月） 第90回天皇杯3回戦
大宮 3 - 0 大分　（13:00／熊谷陸／2,493人）
得点者：25' ラファエル（大宮）、29' 李 浩（大宮）、84' ラファエル（大宮）
チケット情報 ｜天皇杯特集
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大宮が３−０で大分を零封し、J１の意地と違いを見せた。
立ち上がりこそ「自分たちの方が主導権を握っていた」と、高松大樹が振り返ったように、大分が自分たちのリズムで試合を運びつつあった。しかし、ビルドアップ時点でのパスミス、フィニッシュ直前のトラップミスなど、肝心なところでのミスで自分たちから流れを手放してしまった。
すると前半25分、大宮がファーストチャンスで先制点を挙げる。
左サイドからの鈴木規郎の低いクロス。藤本主税が混戦のペナルティエリア内で競り勝ち押し出したボールは、一旦は大分選手が跳ね返すが、これがゴール真正面のラファエルに。絶妙のフェイクを１つ入れて放ったシュートは、キレイに大分ゴールに決まった。
さらに、そのわずか４分後には、大分がCKの対処でミスしたボールが「たまたま自分のところに来て、普段通りに蹴りました」と李浩が押し込み、あっさりと大宮が加点した。
この、ミスによる2失点を、大分・皇甫官監督は「もったいない失点」と悔やみ、『敗因』とした。
また、日本代表経験もある高松は、「J１のチームは能力の高い選手が揃っているので、ミスしたら見逃してくれない。しっかりと得点につなげてくる。ワンチャンスを確実に決められるかがJ１とJ２の差です。小さいことかもしれませんがやっていかなければいけない大事な部分」と、今後J１で戦えるチームを作っていくために必要な部分を改めて痛感していた。

「失点は忘れよう」と鼓舞し、皇甫官監督は後半頭から、最終列から攻撃の起点ともなれる菊地直哉を投入し、2点差を追ったが、後半15分に退場者が出たことで大勢は決した。直後にはキム・ボギョンを入れて攻撃の活性化を図ったが、大きな効果は得られなかった。
結局、大宮が後半39分にもラファエルがCKから頭で決め、３−０の快勝を収めた。

それでも大宮のGK北野貴之は「J２のチーム相手でも、ミスが多く、できていないことがたくさんあった」と猛省する。鈴木淳監督も、ビルドアップでロングボールが多かったこと、相手に退場者が出たにもかかわらず、数的有利を活かしたボール回しで流れからの得点ができなかったことなどを反省点として挙げている。実際、3点は入れたものの、ペナルティエリア内やゴール付近深くまで進入して崩すシーンはほとんど見受けられなかった。また、カウンターなどからFWが完全にフリーで抜け出した決めるべき決定的場面が何度かあったにもかかわらず、逸機するなど、今後のリーグ戦へ向けて課題も残ったと言わざるを得ない。

ただ、当然収穫もあった。トーナメントだけに、勝利そのものももちろんだが、中でも特に大きかったのは、2種登録の宮崎泰右のトップデビューだろう。試合前、鈴木監督は「リーグ戦ではない天皇杯は、新しい選手を試す良いチャンス」と話していたが、2点リード、数的有利の状況も、さらに起用しやすい状況に働いたのかもしれない。「ボールを持ったら思い切って仕掛けていけ」と、指揮官から指示を受けた18歳は、与えられた左サイドで積極的にドリブル突破を見せるなど、持ち味を十分発揮した。「デビュー戦としてはまずまず」鈴木監督も、及第点を与えている。
こうした才能豊かな下部組織選手が育ってきていることは、大宮の未来にとって非常に明るい話題だったのではないだろうか。

一方、大分は、自分たちの時間帯をほとんど作ることができなかった。3トップは流動的に動いているが、それを活かすようなボールが前線へ入らない。FWの高松、河原和寿が中盤までボールを受けに下がるが、その後の連動、サポートが無く、チャンスにはつながらなかった。
そこで、河原、東慶悟らが打開を図ろうとミドルシュートを多く放っていったが、シュートは大きく枠を超えるものばかり。ミドルに限らず、何度か訪れた決定的なチャンスでも同じことが言えた。「枠に飛ばなければ相手に怖さも与えられない。もっと精度を上げないと」東は悔しそうに語った。

決して小さくはない『フィニッシュの精度の差』。特にその部分で、大宮がJ１のチームであることをしっかりと証明したのではないだろうか。

以上

2010.10.12 Reported by 上岡真里江