10月3日（日） 2010 J2リーグ戦 第29節
草津 1 - 0 東京Ｖ　（16:04／正田スタ／4,701人）
得点者：25' 松下裕樹（草津）
スカパー！再放送 Ch182 10/4（月）後05:00〜
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草津の主将・松下裕樹が放った強烈な一撃が、上空を華麗に舞う戦闘機を撃墜した。草津は松下が決めた虎の子の１点を決死の守備で守り抜いて執念の勝利、昇格を狙う東京Ｖに痛恨の一撃を浴びせた。東京Ｖは最近４試合で８ゴールを挙げていた高木兄弟が不発、草津の守備ブロックを最後まで崩せず痛い星を落とした。

自称イケメン（笑）の草津松下裕樹と、正真正銘のイケメン・東京Ｖ高木俊幸。ともに黄色のスパイクを履く両チームのキーマン同士が前半からピッチを躍動した。開始１分、高木俊が左サイドからドリブルで切り込み鋭いシュート。そのスピードとダイナミックなプレーにスタンドからどよめきが上がる。だが、松下も負けていなかった。闘志溢れる守備で球際を制圧、チームにパワーを注ぎ込む。

松下と高木俊はともにＦＫを武器とするが、見せ場を作ったのは松下だった。前半25分、草津はゴール正面約25メートルでＦＫを得る。キッカー松下は、ボールをセットするとコースを見極めて右足を振り下ろす。ハンマーと化した右足から放たれた威力十分のシュートは、右隅のバーをかすめると相手ＧＫの腕を弾くようにしてゴールへと飛び込んだ。「コースも良かったが、それに加えてスピードが出ていた」（松下）。松下のＦＫで先制に成功した草津はゲームのリズムをつかみ１対０で前半を折り返す。

前半を難なく過ごした草津だったが、後半は東京Ｖのうまさを徹底的に見せ付けられることになる。河野広貴を投入し変化を加えた東京Ｖに対して、草津は防戦一方。東京Ｖのパスとドリブルを組み合わせたサッカーに押し込まれて、草津のラインはじりじりと下がっていく。「河野が入ってきてからは本当に強くて逆に燃えてきた」（櫻田和樹）。草津は、５月以来の出場となった尾本敬、御厨貴文のＣＢを中心に気迫の守備を決行、東京Ｖのアタックをペナルティエリア外で食い止めてゴールを割らせない。

草津は終盤にラフィーニャのキープ力と突破力を最大限に活かしてカウンターで応戦、ゲーム状況を理解した戦いぶりで東京Ｖに圧力を加える。追加点こそは奪えなかったものの、チーム全体が走り抜いた。そして２分間のロスタイムのあと勝利の瞬間を迎えた。副島博志監督は「東京Ｖは両ボランチ、両ＳＢの４つの起点があるのでそこを抑えた」と戦術を明かしたが、高田保則、後藤涼、杉本裕之らが守備戦術を忠実に実行。さらに東京Ｖにバイタル付近でセットプレーを与えないように指示が出ていたという。今日の結果は、選手の健闘とベンチワークの妙が生んだ価値ある勝利だった。

連勝が止まった東京Ｖは、福岡が敗れただけに上位との差をつめるチャンスを逸した形となった。だが高木兄弟らが台頭する攻撃陣は魅力に溢れ、今ゲームでも１点が奪えれば草津のダムを決壊させたことだろう。東京Ｖはこの敗戦を糧にして次節以降につなげることが求められる。試合後、サポーターたちは選手たちを熱いコールで迎えた。「サポーターにはいつも勇気をもらっているのでその声に応えたい」（柴崎晃誠）。東京Ｖはサポーターのサポートをバックに昇格レースの最終コーナーへと進む。

中断明けに快進撃をみせていた東京Ｖから勝点３を奪った草津は、シーズン終盤へ向けて大きな自信をつかんだ。この結果によって勝点を３２まで伸ばし順位を１４位へと上げた。「力をコンスタントに出せるのが本物のチーム。こういう戦いを継続できるかが次の課題だ。これから上位対戦が続くが、（上位を倒して）昇格争いを面白くしたい」と副島監督。この日、指揮官は試合前から選手を激しく鼓舞したという。その気迫が選手を燃え上がらせ、正田スタに熱い風を巻き起こした。残り９試合、選手たちは草津の風をＪ２へとぶち込む。

以上

2010.10.04 Reported by 伊藤寿学