10月2日(土) 2010 J1リーグ戦 第25節
山形 2 - 1 G大阪 (19:04/NDスタ/12,018人)
得点者:60' 平井将生(G大阪)、64' 下村東美(山形)、68' 宮崎光平(山形)
スカパー!再放送 Ch185 10/4(月)前08:00〜
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C大阪、川崎Fとライバルを倒し4連勝で3位まで順位を上げたG大阪と、5試合勝利なしで12位に停滞する山形の一戦。しかし、順位と最近の好不調はここでは逆の結果につながった。「山形の全員が連動して前へかかってくる力というものに耐えられなかった」(G大阪・西野朗監督)と、山形が2-1の逆転勝利。この試合前、山形・石川竜也は「しっかりチャレンジしたうえでの負けだったら次につながると思う」と話していたが、ここまでの敗戦が無駄ではなかったというだけでなく、結果が出ないなかでもじつは成長をあきらめていなかったことをも、この勝利は物語っている。
“下克上”の空気は前半からあった。山形の守備が機能する。前節までの4-2-3-1から4-3-3にシステムを変更し、1列上げた下村東美をくさびパスの出所である遠藤保仁にマンマークに近い形でぶつけた。さらにもう1人、増田誓志もシャドーの位置から積極的にG大阪のセンターバックを追い、G大阪の中央通路はかなりの部分シャットアウトされた。山形のバイタルに何度も入り込み起点をつくろうと試みた橋本英郎は「僕とフタ(二川)のところでミスが多かった」と反省するが、そのゾーンを守る山形・佐藤健太郎は「センターバックの2人から、フォワードのコースとか、逆側から中に入ってくるコーチングがあった」と、西河将吾、園田拓也と連動して守れたことで、G大阪の両サイドハーフが足元で受ける頃にはすでに難しい状況に追い込んでいたことも大きかった。
また、ルーカスと平井将生を含む前線の4人は、山形は4枚のディフェンダーとアンカー佐藤健が連動してマークを把握。縦パスが制限されたなかで起点をつくるのは困難で、裏へのボールも精度を欠き通らなかった。停滞感を破ろうと遠藤も居心地の悪い中盤の底から大きな動きを入れ始めるが、縦のくさびが通らないため、預けるのはサイドに限定され、前線に潜り込んでも下村から佐藤へとマークが受け渡され、リターンをもらった先でも窮屈なプレーを強いられた。左サイドから何度か得点を感じさせるプレーはあったものの、ドリブルからの安田理大のクロスは中央で跳ね返され、こぼれ球を拾った二川のミドルシュートもバーを直撃しただけに終わった。45分間のスコアは0-0。G大阪のシュートを3本に抑えた山形が上々の前半を送った。
それでも、西野監督はハーフタイムに「より2トップに対するポイント作りというところをもっと積極的にやれ」と送り出しただけで、基本的には「前半やったことを続けていこう」と継続することを指示する。それが実を結んだのは60分。山形のパスミスで得たカウンターで、中央右寄りの橋本にボールが渡ったとき、2トップが山形のセンターバックと数的同数になっているのを確認した遠藤がスルスルと前に上がり数的優位をつくる。橋本が斜めに入れたグラウンダーは遠藤をスルーしてファーサイドのルーカスへ。そこから少ないタッチ数で遠藤とワンツーを入れたことで、西河のマークを外し、カバーに園田が自分のマークを外して飛び込んできた瞬間に右寄りでフリーになった平井へ絶妙のパスが渡った。G大阪が貴重な先制点を挙げた。
G大阪の勝負強さ健在と誰もが思ったが、その後8分間で状況が一変する。山形は失点直後に前節でゴールを挙げている宮崎光平を投入。右サイドを持ち場としながらピッチ上を浮遊する宮崎は中央に下りてサイドチェンジを中継し、左サイドバックの石川を押し上げる。そのクロスに中央で飛び込んだのは、石川の1列前でプレーしている宮沢だった。突き出したヘディングはそのままファーサイドに流れていったが、そこには下村が待ち構えていた。「試合の序盤に、1回タツさん(石川)からファーサイドに来て安田選手と競ったんですけど、そのときに高いボールが来てヘディングで勝てるなというのがあった。そこでファーでちょっと待っとこうかなというのは頭にあったんです。でも、スルッと来たので、来たときはビックリしました(笑)」逆を取られた安田が態勢を整える前に振り切った右足は、移籍後初ゴールとなった。失点から4分後。前半はシュート数こそ少なかったものの、ボールをある程度運ぶことができ、後半もいい入りを実現していた山形にとって、貴重な同点弾となった。
増田が宮沢に当てて横移動のワンツーからシュートを放つなど、山形は攻撃の手を緩めなかった。68分、フリーで前を向いた石川の目には、G大阪の広いライン裏と2人の味方選手が映っていた。長谷川はオフサイドにかからないように、加地が上がったあとの左スペースへ走り始めていたが、石川は2人のセンターバックの間をズバッと狙っていった。一度下がって受ける動きを入れながら中央を割ったのは宮崎だった。G大阪の虚を突いたダイレクトプレーで完全に抜け出した宮崎は、飛び出したGK藤ヶ谷陽介の頭上をループシュートでかわし、無人のゴールに逆転となるボールが転がった。「やっと(点が)取れたというところの安心感からか、少し全体の連動性が欠けた瞬間を突かれた」と西野監督。あるいは、C大阪、川崎Fを倒したあとの下位との対戦という状況も、それを増幅させたのかもしれないが、結果としてG大阪は取り返しのつかない2失点を喫したことになる。
ビハインドとなったG大阪は76分に二川に代えて佐々木勇人を、81分にはルーカス、武井択也に代えてイ グノとドドを投入するが、「ディフェンスラインとフォワードラインしかなくなって、ヤット(遠藤)が1人になっていました。僕も中盤なので少し下がり気味にプレーしたが、つなぐのが2人だけになっていたのでなかなかテンポアップができなかった」(橋本)と効果的な攻撃にはつながらず、逆に大きく空いた中盤を、途中出場の田代有三などにカウンターの起点として使われるなど、打つ手はマイナスにはたらいた。ロスタイムにも長谷川悠がサイドネットを揺らし、宮崎がゴールを強襲するなど山形ペースのまま、試合は終了した。
G大阪は首位・名古屋との勝点差が11に開いた。西野監督は「もう一度、自分たちのいい時間帯といい内容というものを次に切り替えてやっていきたいと思います」と再奮起を誓ったが、残り9試合で厳しい状況に追い込まれた。山形は上位クラブとの4連戦となる10月の初戦を幸先よくスタートした。小林伸二監督は「勝点がなかなか伸びなかったので、30台に乗ってちょっとはほっとしています」と正直に告白したが、「勝たなくちゃいけないゲームを勝つというのが本当に難しい」と、最後は4戦勝利なしでフィニッシュし、結局は他力の形で残留が決まった昨年の厳しさはいまだ鮮明だ。この日殊勲の下村も「でも今日ガンバに勝てたからと言って次も勝てるかわからない。1試合1試合が勝負」と気を引き締めた。
以上
2010.10.03 Reported by 佐藤円
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