9月19日（日） 2010 J2リーグ戦 第26節
草津 2 - 1 岐阜　（19:03／正田スタ／2,816人）
得点者：44' 嶋田正吾（岐阜）、55' 熊林親吾（草津）、56' ラフィーニャ（草津）
スカパー！再放送 Ch183 9/21（火）前04:30〜
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後半10分、熊林親吾が放ったＦＫがゲームを一変させた。ＧＫの癖を読んだ絶妙なＦＫがゴールネットを揺らすと、草津の勢いが大きなうねりとなって岐阜へと襲い掛かる。同点ゴールからわずか１分後に逆転に成功すると、その後は、湧き出す源泉のように絶え間なく攻撃を繰り返す「湯畑フットボール」が炸裂。追加点こそはならなかったがバリエーション豊富なアタックを展開した。リーグ戦２連敗で一時の勢いが消えていた草津だが、再浮上のきっかけとなる大きな勝利をつかんだ。

草津は前半からポゼッションは支配していた。だが、中盤での失い方が悪く岐阜のショートカウンターを浴びる結果になってしまう。14分には岐阜のキーマン嶋田正吾、26分と42分には西川優太に決定的なシュートを打ち込まれ肝を冷やす。「奪われ方が悪く、後ろの準備ができないままカウンターを受け続けた」（御厨貴文）。守護神・常澤聡の再三に渡るビッグセーブで難を逃れていた草津だが前半終了間際の44分、押谷祐樹が放った強烈なミドルのこぼれ球を嶋田に詰められて痛恨の失点。１点ビハインドで後半へ向かう。

スタジアム全体が不思議な雰囲気に包まれたのは後半10分だった。草津は右サイド深くでファールを誘うと、熊林親吾が迫力の応援をＢＧＭにしてＦＫのボールをセット。ゴール前にクロスを入れるものと思われた。だが、熊林の右足から放たれたボールはゴールへと向かっていく。クロス対応で前へ動いていたＧＫ野田恭平の裏を突いた絶妙なＦＫは、ゴール右隅へと吸い込まれた。「ＧＫが前へ出るという情報があったのでゲーム中から確かめていた。一度しか使えないのでタイミングを計っていた」という熊林のクレバーなプレーが草津の導火線に火をつけた。

スタジアムごと燃え上がった草津は、その１分後にドリブルで中央を駆け上がった熊林がラフィーニャへラストパス。左足を豪快に振り抜いてゴールネットを揺らす。パスを出した熊林が「カット、ドリブル、パスまで自分の能力のすべてが詰まったパス」と自画自賛するプレーによって、草津がわずか１分間で逆転に成功。後半９分まで岐阜に傾きかけていたゲームの流れを力づくで奪い取ってみせた。

草津が後半に放ったシュートは、岐阜の１本に対して10本。岐阜ＣＢ吉本一謙が１発レッドで退場になったこともあり、草津はワンタッチパス、ドリブルを駆使した自在なサッカーを披露。相手を突き放す追加点こそは奪えなかったが、試合終了までの時間帯を完全に支配した。先発起用された山田晃平、途中出場したＵ19日本代表の菊池大介ら若手も恐れ知らずのプレーでゴールへと迫り、スタンドを沸かせた。副島博志監督は「結果ももちろんだが若い選手が新しい力をチームに吹き込んでくれた」と目を細めた。

逆転負けを喫した岐阜だが、前半は押谷祐樹、染矢一樹、嶋田という岐阜三銃士が草津の守備陣をあざ笑うかのようにキレあるプレーを魅せた。草津の御厨、有薗真吾の両ＣＢは速さのあるＤＦだが、彼らを何度も置き去りにする岐阜のスピードはリーグ屈指。特に押谷の重心の低いポストワークは衝撃的だった。現在10勝を挙げている岐阜だが、まだまだ発展途上。倉田安治監督は敗戦の悔しさをかみ締めつつも「この結果はチームがさらに成長するためには必要な経験だ」と前向きに捉えていた。

８月15日の富山戦以来約１ヵ月ぶりに勝利を挙げた草津だが、勝因は「三位一体」だった。苦境に追い込まれながらも自分たちのサッカーを遂行した選手たち、熊林の同点ＦＫを導いたスタッフのスカウティング、そして何かが起こる雰囲気を演出したスタンドのサポーター。同点ゴールから試合終了までの最高潮のスタジアムはまさに「ザスパ劇場」だった。この劇場がある限り、草津はさらに上へ行ける。

以上

2010.09.20 Reported by 伊藤寿学