9月18日(土) 2010 J2リーグ戦 第26節
水戸 3 - 1 富山 (13:04/Ksスタ/1,844人)
得点者:2' 常盤聡(水戸)、8' 片山真人(水戸)、21' 苔口卓也(富山)、27' 片山真人(水戸)
スカパー!再放送 Ch183 9/21(火)後10:00〜
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「入り方がまずかった」と富山の苔口卓也は唇を噛んだ。中盤でのポゼッションを武器とする富山だが、この日は攻撃陣にスペースへ飛び出すタイプの選手が並んだ。そのため、序盤は裏に抜け出そうとする攻撃陣とパスをつなごうというディフェンス陣の意思が合わず、全体が間延びしてしまうことに。その空いたスペースで起点を作った水戸がペースを握る。そして2分に右サイド村田翔からのクロスを常盤聡が押し込んで先制すると、8分にはCKのこぼれ球を拾った村田からのクロスを大和田真史がヘディング。ゴールポストに跳ね返ったボールを片山真人が押し込んで追加点を挙げる。まだ富山が試合に入り込めていないうちに水戸が電光石火の攻撃で2点のリードを奪ってみせた。
だが、「2点を取ってから“水戸らしさ”が出てしまった」と村田は振り返った。この“らしさ”には、2つの顔がある。1つは粘り強く戦うことができること。相手に水戸の倍以上のシュートを放たれても耐え抜くことができるところに水戸の“らしさ”はある。そしてもう1つが、パスサッカーに切り替えようとしているが、なかなか切り替えられないこと。2点のリードを奪い、リスクを負わない戦いを選んだこともあるが、それ以上に村田は「なぜ、こんな慌ててしまうのか」と疑問に思ったという。富山のパスワークに翻弄され、水戸は「どうしたらいいのか分からない」(木山監督)状態に陥り、防戦一方に。ボールを奪ってもパスをつなぐことができず、ミスを連発してしまい、富山に主導権を握られる展開が続いた。2点をリードしている余裕はチームにはなかった。
その後、リズムをつかんだ富山に面白いようにボールを回され出す。そして21分に苔口にミドルシュートを決められ、1点差にされる。嫌な雰囲気が漂ったものの、27分には富山の守備陣の間で起きた連係ミスに救われることとなる。その隙を片山が突いて再び2点差に広げることとなった。82分間、富山がゲームを支配続けたが、水戸はこの日めぐってきた3度のチャンスをすべて決め切ったことが勝利につながった。今季ここまでリーグ最多の355本のシュートを打たれている水戸(2番目に多いのが286本の岡山)にとって、シュート数6本対14本という劣勢の展開ながらも勝利につなげるのが “らしさ”であるのだ。
ただ、今、水戸はその“らしさ”から抜け出そうとしているのも事実。この日はトライすることはできなかったが、結果を出しながら選手たちが自信を深めることでトライするチャンスは増えるはず。村田は言う。「常盤も慣れてきたし、俺も吹っ切れてできている。徐々にみんな“らしさ”が出せている。だから、もっと面白くなると思いますよ」。今の水戸は若手が徐々に自信をつけていき、やっと自分のプレーができ始めて来ている段階にある。まだまだ水戸は地ならしの時。今季の水戸は伸びしろの塊である。内容はともあれ、若いチームにとって勝点3を手にしたことは大きな収穫。1つ1つを糧にしてチームはさらに大きくなっていく。本当に面白くなるのは、これからだ。
一方、富山はなかなか調子が上向かない。攻撃面では魅惑のパスワークを見せるものの、あまりにも守備が脆すぎる。この日の3失点は「組織として破られたものではない」と楚輪博監督が言うように、個人に問題があったとしか言いようがない。チームとして攻撃に人数をかけるサッカーをしており、守備に関しても前線から連動した守備がベース。だからこそ、突破された時にゴール前が手薄になってしまう。そこで少ない人数でも守り切ることができるような個の守備力が求められることとなるのだ。技術や戦術よりも先に、たとえボールを取れなくても体を投げ出したり、相手より一歩前でボールを触ったりといった「絶対にゴールを決めさせない」という強い気持ちが必要だ。それがこの試合では明らかに足りなかった。もっともっと1人1人が危機感を持って守備をしないと同じような失態を繰り返すことだろう。富山のサッカーは見ていて楽しい。ただ、楽しいだけでは勝つことはできない。楽しいサッカーを勝利につなげるためにも、より一層の「厳しさ」が求められている。
以上
2010.09.19 Reported by 佐藤拓也
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