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【J2:第23節 鳥栖 vs 富山】レポート:目に見えない『10mの攻防』を制した富山が、最後まで自分たちの形を出しきって価値ある引き分けをつかむ(10.08.23)

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8月22日(日) 2010 J2リーグ戦 第23節
鳥栖 2 - 2 富山 (19:03/ベアスタ/5,105人)
得点者:4' 山瀬幸宏(鳥栖)、18' 早坂良太(鳥栖)、30' 木本敬介(富山)、45' 上園和明(富山)
スカパー!再放送 Ch183 8/23(月)後04:00〜
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たかが10mである。されど10mである。
この『10mをめぐる攻防』が、この試合のすべてといても過言ではない。それだけ、重要な意味を持つ10mだった。
この『10mをめぐる攻防』に敗れた鳥栖は、勝点を1つ積み上げて32としたが、逃した勝点2以上の何か大きな課題を残した。対する富山も勝点1を積み上げたが、この1の意味するものは、今後に大きなものを残したに違いない。

この『10mの攻防』が起きていたのは、両チームのFWの下に位置するところだった。鳥栖は、トップ下金民友からボランチまでの10mであり、富山は、両サイドMFからからボランチまでの10mである。この位置の10mは試合では大きな意味を持つ。試合の主導権を握るだけでなく、見ている人をひきつけ、結果以上にその後のチーム状況まで期待を持たせることができる。繰り返しとなるが、この『10mの攻防』に勝ったのは下位に位置する富山であり、敗れたのは上位に位置する鳥栖であった。

試合開始から20分間は、鳥栖がこの『10mの攻防』戦を制していた。ボランチに入ったMF黒木晃平が積極的に前に出ることで富山のボランチを押し込み、富山の狙う“高い位置からのプレス”を麻痺させていた。3トップ下に入ったMF山瀬幸宏と早坂良太がサイドとセンターを自由に動くことで、富山DF陣に狙いどころを絞らせなかったことも大きかった。
開始4分には、センターライン付近でボールを奪った山瀬幸宏が自ら持ち込み、今季初得点で鳥栖に先制点をもたらした。この勢いは止まらず、18分には中央で山瀬幸宏が落としたボールを朴庭秀、黒木晃平とつなぎ、早坂良太の今季3得点目で追加点を奪い優位に進めた。
昇格を狙い上位に位置するチームならば、この流れで一気に畳み掛けてしまうに違いない。しかし、これができない現在の鳥栖は、この2点のアドバンテージを作りながらも、試合を優位に進めることができなかった。言い換えると、優位に試合を進めていた中盤“10mの間”を守ることができなかった。

この流れを引き寄せたのは、富山の狙うサッカーである。2失点しながらも、MF朝日大輔は積極的に前に出ようと試みていた。この朝日大輔のチャレンジに答えたのがMF長山一也である。20分過ぎから、朝日大輔に合わせる長山一也のパスが次第に鳥栖ボランチの位置を下げ始めた。鳥栖DF裏に抜けようとFW木本敬介も果敢に動き出し、黒部光昭のヘディングの強さも加わって鳥栖DFも下がり始めた。
こうなると、攻撃の形を持っているチームは勢いがつく。30分には、木本敬介が右足を振り抜いて1点差に詰め寄り、45分にはMF上園和明が豪快に蹴り込んで追いついた。言い換えると、試合を優位に進めることができる中盤での“10mの間”を、前線の動きで奪い返したのである。

鳥栖が『10mの攻防』に敗れたのは、富山の健闘だけが理由ではない。鳥栖の中盤から前線までの守備の入り方にも大きな問題があった。富山の狙いは、『長短のパスをつないで相手ゴール前に迫る』であるが、このパスをいとも簡単に中央で通されてしまっては、2点の優位があれども簡単に勝つことはできない。
鳥栖の守備の狙いは、『パスコースを限定し、サイドに追い込んで高い位置で奪い取る』ことだったが、ファーストディフェンダーのアプローチがあいまいでコースを限定できずにいた。豊田陽平といえども、1トップでこの任を全うするのは酷な話である。トップ下の連係(協力)が欠かせないが、この連係(協力)がなく鳥栖MFの守備が後手を踏んだのは否めない。
それに、ボールを奪ったあとにも問題が見えた。ボランチがサイドに開いて攻撃に移ることで、中盤でのリスクが大きくなることも関係していた。38分に攻撃的な黒木晃平に代えて中央に守備的な下地奨を置いたが、下地奨だけでは富山の中盤を抑えることはできない。ボールを奪ったあとのサイドの攻撃は、両サイドDFに任せてボランチは中央でのリスクマネジメントと攻守のバランスをとる必要があった。
結果的に鳥栖は2点のアドバンテージを攻守のバランスを欠いたことで失い、富山はビハインドを自分たちの形を貫いて跳ね返してしまった。
『10mの攻防』は、形を持ったチームと持たないチームの差で決着が付いた。三度繰り返すが、この攻防に勝ったのは下位の富山であり、敗れたのは上位の鳥栖である。勝点1を分け合ったが、得た勝点の内容には大きな差があった。
松本育夫監督(鳥栖)は「引き分けではなく、負けゲームといえる」と素直に内容の悪さを認めた。楚輪博監督(富山)は「素晴らしい引き分け」と内容を評価した。このコメントが、この試合の内容を物語っている。
たかが10mである。されど10mである。

サッカーでは、常にボールは動いている。あわせて人も動き、一瞬たりとも気を緩めることはできない。
どこにボールを動かせば、自分たちに優位になり、相手にとって嫌なのかを選手たちは動きながら判断している。
そこにミスも生まれるがすぐに補うこともできるから、サッカーはスリリングでおもしろい。
何もミスをするのは選手だけではない。監督もコーチも判断ミスを犯すことがあるし、レフェリーとて完璧にジャッジできるわけではない。見ている我々も、チームに対する強い思い入れで見誤ることが多い。
ミスだけを指摘しても成長は見られない。サッカーにかかわる全ての人が補いあい、成長するからこそ栄冠をつかむことができる。
サッカーは、ミスが起きることを前提としたチーム競技であることを忘れてはいけない。

以上


2010.08.23 Reported by サカクラゲン
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